「道徳」授業改善の取り組み進展 「特別の教科」化以降

 2018年度以降に「特別の教科」化された道徳教育の取り組みに関する調査結果を、文科省が4月27日に公表した。それによれば、多くの学校で授業や評価の改善に向けた取り組みが行われていることが分かり、「道徳教育に対する教師の意識が高まった」「授業時間数を十分に確保して指導することができるようになった」などの前向きな変化が9割以上の学校で報告された。一方で「教科書に頼る傾向が見受けられる」など、さらなる指導力向上が必要だとする声もあり、背景としてコロナ禍で研修や授業公開の機会が減少したことが指摘された。

 小中学校での道徳教育の充実のための取り組みとしては「学校の教育目標の実現に向けて、道徳教育の重点目標を踏まえた具体的な指導を行った」が67.7%、「全教師が協力して道徳教育を展開できる体制を整えた」が65.4%、「各教科等や体験活動において、道徳科の内容項目との関連を意識して指導を行った」が64.7%だった。一方で、家庭や地域社会との連携強化や、道徳教育の取り組みに関する情報発信は3割程度にとどまった。

道徳教育の充実のために学校として行った取り組み(複数回答)(出所:文科省「令和3年度道徳教育実施状況調査」)

 道徳教育を推進する上での課題は、「学校の道徳教育の重点や推進すべき方向について、教師間での共通理解や連携を図るための機会の確保」が最多で57.1%。次いで「家庭や地域社会との連携・協力」で47.6%だった。

 授業を実施する上の課題は「話し合いや議論などを通じて、考えを深めるための指導」(61.9%)がトップ。次いで「物事を多面的・多角的に考えるための指導」(54.6%)や、「教材の吟味や授業構想のための時間の確保」(52.6%)が挙がった。道徳科の評価では97.4%の学校が「ワークシートなどを用いた学習履歴の活用」、72.3%の学校が「児童生徒の自己評価や相互評価の活用による評価の工夫」をしていた。

道徳科の授業を実施する上での課題(複数回答)(出所:文科省「令和3年度道徳教育実施状況調査」)

 道徳の「特別の教科」化を受けた変化については、「道徳教育に対する教師の意識が高まった」と回答した小中学校が97.0%、「授業時間数を十分に確保して指導することができるようになった」が92.5%、「学校として育てようとする児童生徒像をより意識して指導するようになった」が90.8%など、大半の学校で肯定的な回答があった。ただ「家庭や地域社会からの理解がより得られやすくなった」は53.8%にとどまった。

 他にも「道徳に興味を持つ児童生徒、道徳で学んだことを生活に生かそうとする児童生徒が増えた」「学級担任以外の教師の意識が高まり、学校全体で連携した実践が増えた」「教材の扱い方や指導方法について、日頃から教師間の話し合いが活発に行われるようになった」といった意見が寄せられた。一方で「教科書や教科書発行者の指導書に頼る傾向が見受けられるようになった」「道徳科の評価という学級担任の業務が増えた」という課題もあった。

 教育委員会への調査では、ほぼ全ての都道府県・指定都市教委が、教師向けの研修会などを開催していると回答。60.8%の教委が「教師の指導力」を課題として挙げており、都道府県・指定都市教委の約半数は、「学校管理職のマネジメント」を挙げた。

 こうした結果を受け、文科省は「『特別の教科』化が目指した道徳教育の量的確保の面で確実に定着」と評価する一方、「コロナ禍での対面研修や優れた授業実践を見る機会の減少、教材研究に関わる時間の確保などが制約要因となり、道徳教育の要としての道徳科の授業改善、指導力の維持・向上、そのための研修機会などの充実は喫緊の課題」と指摘。オンラインでの研修動画、指導用資料・教材、優れた授業実践の共有などを進めるとした。

 2015年の学習指導要領の一部改正では、従来の「道徳の時間」が「特別の教科 道徳」と新たに位置付けられ、「子供たち一人一人が、答えが一つではない道徳的な課題を自分自身の問題として捉え向き合う『考え、議論する道徳』への転換」が図られた。18年度から小学校、19年度から中学校で全面実施されている。

 今回の調査に回答したのは、義務教育学校や中等教育学校前期課程を含む公立小中学校(小学校1197校、中学校1144校)と、全都道府県・市区町村の教育委員会で、調査時期は昨年10月から12月まで。

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