最優秀賞に石川氏と大池教諭 次世代教育で表彰式

最優秀賞に石川氏と大池教諭 次世代教育で表彰式
子ども同士で学び合うプログラミング教室について発表する石川氏
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 次世代に向けた子どもの教育活動を推進する個人・団体を表彰する「Next Education Award」のファイナルが5月1日、お茶の水エデュケーションプラザ(東京都千代田区)で行われた。最優秀賞には「プログラミング学習を通じた子どもの居場所づくりと学び合いのデザイン」を発表した(一社)Kids Code Clubの石川麻衣子氏と、「Society5.0の時代を生き抜く力を養う『ジレンマ克服型商品開発実習』」を発表した岡山県立倉敷鷲羽高校の大池淳一教諭が選ばれた。 

 同アワードは活育教育財団が設立したもので、今回が初めて。約100の実践応募があり、1次審査、2次審査を経て選ばれた10人のファイナリストが、最終プレゼンテーションを行った。審査員は合田哲雄・内閣府科学技術・イノベーション推進事務局審議官、村上憲郎・元グーグル米国本社副社長、栗田佳代子・東京大学大学院教育学研究科教授、中室牧子・慶應義塾大学総合政策学部教授、日野田直彦・武蔵野大学中学校高等学校・武蔵野大学附属千代田高等学院学園長らが務めた。

 最優秀賞を受賞した石川氏は、近年、プログラミング教室が増えているが、料金が高く、学びたくても学べない子もいるのではないかと考え、オンラインで参加費無料の「放課後プログラミングクラブ」を運営している。最終プレゼンでは、自身も貧困家庭出身で、独学でプログラミングを学んできたことを振り返り、「学ぶことは生きる原動力になる」と力を込めた。

 同クラブのキーワードは「学び合い」だ。スタッフの大人が教えるのではなく、参加する子ども同士で学び合う。石川氏は「スキルのある大人に教えてもらうと、コストもかかる。子どもたちに任せて、子ども同士で学び合った方が、どんどん面白いことが起きていく」と説明。

 不登校や発達障害の子どもたちも参加しており、中には話すことが苦手な子もいる。その場合はチャットなど、その子が好きなコミュニケーション方法で関わって、自分の居場所を見つけていく。「参加している子どもたちは『いろんな人のアイデアが聞けるのが楽しい』と言う。学び合いで、好きなことを好きなだけ学べる世界になっていってほしい」と、取り組みの意義をアピールした。

 受賞について、石川氏は「今、昔の自分のように苦しい思いをしている子たちもいる。そういう子どもたちのロールモデルになれるよう、次の世代につなげていきたい」と喜びをコメント。「3年後には10000人が活動するオンライン上の街にしていきたい」と、今後の展望を語った

 同じく最優秀賞を受賞した大池教諭は、同校のビジネス科で取り組んでいる「ジレンマ克服型商品開発実習」について最終プレゼンテーションを行った。

地域活性化を担うプロジェクトを次々と実施している大池教諭
地域活性化を担うプロジェクトを次々と実施している大池教諭

 これまで高校の商業系学科を中心に実施されている商品開発実習は、学校と企業が1対1で行うものが基本だった。創造的な発想力や行動力を養成する教育として評価されてきたが、大池教諭はこれをさらに発展させ、異なる価値観を有する2社以上の事業者と生徒が協働することで、Society5.0の時代で求められる板挟みや想定外に向き合う力を育成することを目指した。

 例えば、ブルーベリー農家と牧場をつないで商品開発に取り組んだ際は、牧場側としてはブルーベリーの単価が高いことが商品開発へのネックになっていた。しかし、ブルーベリー農園側は、安定した収入を確保するために、単価を下げることができない。そこで、生徒たちはまず「そもそもブルーベリーの単価はなぜ高いのか」について調査し、そこから解決策を探していった。

 大池教諭は「2社以上の事業者を組み合わせ、それぞれが抱える課題を解決していく中で、生徒にとっては想定外のことが起きたり、板挟みの状況になったりする。しかし、そうした状況を解決していくことが、まさにこれから必要とされる力ではないか」と述べた。

 大池教諭は現在、鳴門教育大学大学院で学んでおり、「商業系学科は多くの実践がされてきているものの、学術論文がかなり少なく、知られていない。私自身も、これまでやってきた実践を論文にまとめ、科学的根拠をもって語れるようにしていきたい」と今後について述べた。

 特別賞には、▽家庭科で持続可能な社会に向けた授業実践を行ってきた長野県飯田市立飯田西中学校の牧野優子講師▽札幌市立高校の生徒を対象に食農教育「アニマドーレ」を実践してきた市立札幌開成中等教育学校の黒井憲教諭▽自分らしく生きるための力を育む対話型オンライン教室「アリストテレスの窓」を運営する石森和麿氏の3人が選ばれた。

 このほか、ファイナリストには、大阪府高槻市立北日吉台小学校の乾倫子指導教諭、Kodomo Edu International Schoolの上田佳美氏、福岡雙葉高校の長村裕総合探究推進委員長、東京都東大和市立第二中学校の高田裕行研究主任、新渡戸文化学園の山内佑輔プロジェクトデザイナーが選ばれた。

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