【GIGA2年目】「教員支援、あまりにも脆弱」妹尾氏に聞く

 教育新聞が今年3月に行ったウェブアンケートでは、全国の小中学校教諭・学校管理職344人のうち約6割が、1人1台端末が導入されたことによる業務の負担増を感じていることや、「授業準備」や「生徒指導」での負担を訴える声が多いことが分かった。こうした状況について、教育研究家で本紙オピニオン執筆者の妹尾昌俊氏は「教員たちが大変な中でがんばってしまうがために、支援体制が脆弱(ぜいじゃく)なままで放置されてしまっている」と指摘し、とりわけICT担当など、特定の教員に負担が集中している状況に警鐘を鳴らす。本格活用2年目となる今年は、学校現場の負担軽減を図った上で、「より自由で、クリエーティブな使い方」を目指していく必要があると語る。

特定の教員への負担集中、もっと配慮を

――教育新聞の調査では、学校現場の負担感が浮き彫りになりました。

 学校によって状況はさまざまですが、負担を訴える先生はたくさんいます。コロナ禍では通常の授業をしながら、登校できない子供のためにオンラインで配信しなければならないことがあり、それが大きな負担となっていました。単に授業を中継するだけでなく、休んでいる子のケアも必要で、一人の教員が何役もこなさなければならないこともあります。

 さらに学級閉鎖になって、全員にオンライン授業をしなければならない時には「回線が止まった」「ログインできない」「ウェブ会議に入れない」といった授業以前のトラブルへの対応を迫られることもありました。中高生ならまだしも、小学校、それも低学年の場合は保護者のサポートがなければ、いろいろと難しいことはあったと思います。

「授業をする教員を支える仕組みがあまりにも脆弱」と警鐘を鳴らす妹尾氏(Zoomで取材)

 これが民間企業であれば、授業をする人と、それをバックアップする人、またヘルプデスクが別々にいてもおかしくないのですが、学校の場合は、これらの業務を教員がほとんど一人で行っています。ICT担当教員はいても、その教員自身も学級担任や授業を持っていることも多く、授業をする教員を支える仕組みがあまりにも脆弱だという問題が、改めてよく分かったと思います。

 コロナ禍が長引く中で、学校現場にもオンライン授業の経験が蓄積されてきた部分はあるでしょう。ただ、教員たちが大変な中でがんばってしまうがために、支援体制が脆弱なままで放置されてしまっているのが現状です。教育行政が、学校現場の献身に甘えてしまっている部分が正直、あるように思います。今の体制で十分なのかを検証し、必要な予算を確保していかないと、ICT自体が嫌になってしまう教員もいるのではないでしょうか。

――負担が増えた背景には、授業準備だけでなく生徒指導もあるようです。

負担の増えた業務(教育新聞アンケート)

 「生徒指導」が具体的に何を指すのか、ちゃんと見ていく必要もありそうですが、広い意味で見ればやはり、本来は家庭が担うことまで学校が世話している、またはそうせざるを得ない実態があるように感じます。「変なサイトを見ている」「動画を見過ぎてしまう」といった保護者からのクレームもあると聞いています。いくら学校の端末を使っていると言っても、学校の管理外での出来事は、家庭の責任であるはずです。

 家庭の領域まで学校が面倒を見るのは、日本の公教育の良いところでもあり、悪いところでもあります。学校と家庭の役割分担があいまいな中で、端末整備が進められてしまったことで、学校の負担感が大きくなっている側面はあります。とりわけ端末を使ったいじめや嫌がらせが起こっていないかについては、家庭も学校も目を光らせる必要があり、神経をすり減らしている教員も少なくありません。

――ICT担当など、特定の教員に負担が集中していることがうかがえます。

 私がこの3月末から4月初めに実施したアンケートでも、「特定の人に負担が集中している」という声が多くありました。学校によって違いますが、ICT担当に負担が集中しているケースもあれば、校内でパソコンが得意だと思われている教員が頼りにされていることもあるようです。その人が異動してしまうと仕事が回らなくなるし、過重労働で倒れてしまっては大変です。学校管理職や教育委員会は、こうした負担の集中に配慮する必要があります。

 学校と教育委員会の協力関係にも課題があります。端末の年度更新作業や故障の対応などで教育委員会の支援が乏しく、学校現場が苦労しているという話もあります。教育委員会も忙しいのでしょうが、それならば専門の人材を雇用するなり、事業者に外注するなりの予算が必要です。ここでも、現場の教員のがんばりに頼り過ぎてしまう悪い癖が表れています。

 それとは反対に、教育委員会による管理が強過ぎて、ICTの活用状況調査が毎月のように学校に飛んでくる地域、また、アプリを入れるのに細かい手続きを教育委員会が求めてくる地域もあります。現場でのICTの使い方は個々の子供によって違うし、授業の進め方によっても違うので、そこはやっぱり現場の教員を信頼して任せてもらいたいところです。教育委員会の管理や規制は最小限にとどめるべきでしょう。

 私は、学校と教育委員会はもっとコミュニケーションを取って、お互いの距離をもう少し縮める必要があると思っています。教育委員会には、学校の教員が「ここを手助けしてほしい」「学校を超えて共通で整備してほしい」と求める声に応えたり、教員たちの指導力をアップデートするような提案をしたりといった役割を積極的に担ってほしいと思います。

2年目は、よりクリエーティブな使い方を

――本格導入2年目への期待をお聞かせください。

 コロナ禍での学校運営も2年が過ぎました。そろそろ緊急の体制を脱して、特定の教員に依存し過ぎない支援の在り方を、教育委員会と学校が一緒になって考えていく必要があります。その上で、子供たちがもっと自由に、クリエーティブにICTを使えるような環境にしていくことが大切だと思っています。

 教員が逐一、指示を出して端末を使わせるスタイルと、児童生徒に自由に使わせるスタイルの2つがあるとすれば、まだまだ前者のスタイルも多いようです。それが一概に悪いとは言いませんし、一人一人が好き勝手に使ったら授業がうまくいかなくなる、といった心配もあるかもしれませんが、もっと緩やかに、児童生徒のことを信頼して任せてみるということも、あってよいのではないでしょうか。

2021年度に取り組み、効果を実感したこと(複数回答、教育新聞アンケート)

 教育新聞のアンケートでは、昨年度に効果を実感した端末の使い方として「発表・プレゼンテーション」が上位に挙がりました。ただ、今の小学生が社会人になるころには、プレゼンのツールもパワーポイントではなくなっているかもしれません。プレゼンのツールを使いこなすことよりも、ICTを使って子供の特性に応じた、いろいろな学び方ができることや、多くの情報につながって興味・関心を高められること、障害を乗り越えやすくなることなどを実感できる方が重要です。

 さらにコロナ禍で、学校行事や体験的な学習にはまだまだ制約がありますから、ウェブ会議などを通じていろいろな人とつながることもよい機会です。さまざまな専門家の話を聞いてみる、海外の人とやりとりをしてみるといったことも、オンラインなら取り組みやすいでしょう。相手にとっても、わざわざ学校に足を運ぶより「1時間だけオンラインでつないで話を聞かせてください」と言われた方が、予定の調整もしやすい、ということも多いのではないでしょうか。

――高校でも1人1台端末の整備が進んでいます。

 高校の状況は学校や地域によって大きく違うので一概には言えませんが、一部では旧態依然とした一斉授業にこだわっている高校もあるように感じます。小学校ではグループワークや調べ学習も多いですが、高校では「講義型」の授業を好むことも少なくないようです。高校生ならICTを使った自律した学びができ、探究の幅も広がるはずなので、これではもったいない気がします。

 確かに「大学入試があるから、悠長なことは言っていられない」「対面の方が生徒の表情を見やすい」という教員の意見もあることは分かります。ただ、高校で勉強が嫌いになってしまう生徒もたくさんいるのも事実です。生徒たちの声をしっかり聞いて、一人一人の個性や興味・関心に応じた学びにチャレンジしてほしいと思います。

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