中等教育が鍵を握るジェンダー問題 学術会議がシンポ

 社会課題となっている日本のジェンダー平等をテーマに、日本学術会議は5月4日、中等教育におけるジェンダーの問題を考えるシンポジウムをオンラインで開いた。日本の学校教育のジェンダー平等の構造を分析した研究者による講演や、教員による実践発表などが行われ、進路選択への影響や学校の中の「隠れたカリキュラム」の存在が指摘された。

 日本学術会議は、人文・社会科学で構成される第一部、生命科学を中心とした第二部、理学・工学分野の第三部に分かれるが、いずれの部にも現在、ジェンダーを取り上げた分科会が設けられており、今回のシンポジウムは、それらの分科会と日本学術会議科学者委員会男女共同参画分科会が連携する初めての企画として開催。ジェンダー平等に向けた意識を高めていくための教育の重要性に着目した上で、特に思春期を迎えた子どもが進路選択を考える時期である中等教育段階に焦点を当てることにした。

日本の学校教育におけるジェンダーの問題の構造を解説する畠山理事(Zoomで取材)

 講演では、教育NPOのサルタックの畠山勝太理事と大阪大学の木村涼子教授が登壇。畠山理事は、女子教育は女性の社会進出を促すだけでなく、次世代の教育・健康水準が上昇するといった社会的な利益が大きく、1980年代から世界的にさまざまな取り組みが行われてきたが、日本ではそれが立ち遅れてしまったとの見方を示した。その上で、OECD(経済協力開発機構)のPISA(生徒の学習到達度調査)のデータなどから、日本は理工系の大学に在籍する女性の比率が同調査の参加国・地域の中で最下位にあるだけでなく、大学院への進学率も低いといった問題を挙げ、「日本の女子教育は低学歴、低学校歴、低STEMという三重苦を抱えている」と強調した。

 続いて木村教授は、日本の近代学校教育制度の成り立ちから、戦前は中等教育段階で男女によって学校教育の系統が分かれ、カリキュラムもそれぞれ別建てになっていたこと、戦後になって男女共学が原則となった一方で、高校の職業科は学科によって男子向け、女子向けの傾向が出たり、女子向けの高等教育機関としての性格を持った短期大学の制度が残り続けたりしたことなどを解説。

 「学校においてジェンダー秩序が再生産されていると考えている。『男女は同じ人間として、同じことをすべきだし、そうできる』という平等原理と『男女は異なる存在で、同じことはできない』という男女差異化原理の矛盾する2つのメッセージを、学校で子どもたちは受け取っているのではないか」と述べ、公的で明示されたカリキュラムとは別に、学校の文化や慣習、教師と子どもとのコミュニケーションなどの非明示的な「隠れたカリキュラム」として、ジェンダーによる差異が残り続けたことを指摘した。

 シンポジウムの後半では、中学校や高校の教員による実践発表なども行われ、地方の女子生徒の進路選択における教師や保護者のジェンダー観の影響に関するインタビュー調査や、「保健体育」でフォークダンスの「オクラホマミクサー」をする際に、男女別ではなく、「リードする側」と「リードされる側」で指導した授業、進路指導やホームルームなど、さまざまな日常的な場面でジェンダーバイアスに気付かせたり、自分らしさについて考えたりする取り組みが紹介された。

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