研修報告「極めて簡素化」 更新制廃止法案、参院文科委で可決

 参議院文部科学委員会は5月10日、教員免許更新制を廃止し、新たに教員研修の記録作成を義務付ける法改正案を賛成多数で可決した。審議の中で末松信介文科相は、教員が行う研修内容の報告について「学校現場と話すと、ものすごい負担と言われる。子供たちの教育に差し支えては本末転倒なので、(報告は)極めて簡素化する」と答弁し、文科省が作成するガイドラインに反映させる考えを示した。可決にあたり、同委は、臨時的任用教員に対する研修機会の確保などを求めた8項目の附帯決議を議決した。

挙手によって教員免許更新制の廃止法案を可決した参議院文科委員会(参議院インターネット中継から)

 可決されたのは、教員免許更新制を今年7月に廃止する教育職員免許法の改正案と、来年4月から教員一人一人の研修記録の作成を教育委員会などの任命権者に義務付ける教育公務員特例法(教特法)の改正案。文科省は、今年夏をめどに教特法に基づく教員研修の指針を改訂し、特別な配慮と支援が必要な子供への対応、ICTデータ利活用などを教員が持つべき資質・能力の新たな柱として加えるほか、研修記録の作成を義務付けられる教委向けに記録すべき研修の内容や、教員の資質向上に向け校長などの管理職が行う指導助言の在り方などを例示したガイドラインを作成することを明らかにしている。

 この日の質疑で、末松文科相は、教員研修の記録作成に伴い、それぞれの教員が作成し、校長が教委などの任命権者に提出する研修の報告について、「学校現場の校長や教員と話をすると、『研修に行ったら、リポートを書かなければいけないじゃないか』という話があふれかえるほど出てくる。ものすごい負担と言われる。リポートを書くことが研修の目的ではない。書くために子供たちの教育に差し支えが出るほど時間がかかってしまうようでは本末転倒になる」と指摘。文科省が作成しているガイドラインを念頭に「極めて簡素化するように、と文科省の課長にも言っている。リポートの提出については、私は極めて簡素化すると申し上げておく」と答弁した。水岡俊一議員(立憲民主)に答えた。

 また、新しい研修制度では、教員に指導助言を行う校長など管理職の役割が重要になることを踏まえ、文科省の藤原章夫・総合教育政策局長は「指針やガイドラインにおいて校長の役割を明確化し、教育委員会が定める教員研修計画に校長の役割を踏まえた適切な指導助言等の方法を定めるようにする」と説明。校長の資質向上のために▽教育委員会において校長に特化した育成指標を策定し、それに基づき、教育長等が校長への指導助言を行う▽国による新任校長向けの講習動画の配信やオンラインフォーラムの開催▽全校長向けの研修動画を含む必要な情報等を集約した特設サイトの開設--など行う考えを示した。上野通子議員(自民)に答えた。

 こうした質疑に続き、参院文科委は、教育職員免許法と教特法の改正案について採決を行い、自民、公明、立憲民主、維新、国民民主の賛成多数で可決した。共産、れいわ新選組は反対した。

 続いて、同委は可決した改正案に対し、自民、公明、立憲民主、国民民主の4会派が提出した附帯決議を賛成多数で議決した。

 附帯決議は8項目におよび、先に衆院文科委が議決した附帯決議に加え、▽教員研修の記録作成や校長などが行う資質の向上に関する指導助言について、教員の主体的な姿勢の尊重、教員の学びの内容の多様性が重視・確保されるようにする▽研修記録に絡む個人情報を適切に管理する▽臨時的任用教員に対する研修の機会を確保する。会計年度任用職員についても、校内研修など職務としての研修が勤務時間内で確保されるようにする--ことなどを明記した。

教育公務員特例法および教育職員免許法の一部を改正する法律案に対し、参議院文部科学委員会で議決された附帯決議の内容

 政府および関係者は本法の施行に当たり、次の事項について、特段の配慮をすべきである。

(1)新たな教師の学びの姿は、時代の変化が大きくなる中にあって、教員が探究心を持ちつつ、自律的に学ぶこと、主体的に学びをマネジメントしていくことが前提であることを踏まえ、資質の向上のために行われる、任命権者による教員の研修等に関する記録の作成、並びに指導助言者が校長および教員に対して行う、資質の向上に関する指導助言等は、研修に関わる教員の主体的な姿勢の尊重と教員の学びの内容の多様性が重視・確保されるものとすることを周知徹底すること。
 とりわけ、校長および教員に対して行う、資質の向上に関する指導助言等については、教員の意欲、主体性と調和したものとすることが前提であることから、指導助言者は十分に当該教員等の意向をくみ取って実施すること。

(2)オンデマンド型の研修を含めた職務としての研修は正規の勤務時間内に実施され、教員自身の費用負担がないことが前提であることについて、文科省は周知徹底すること。

(3)本法による新たな研修制度が円滑に機能するよう、新制度への移行に向けた支援の充実を図るとともに、その周知に万全を期すこと。
 また、教育委員会等は、教員の資質の向上につながり、子供の実態に即して教員が必要とする研修を実施すること。

(4)文科省および各教委は、本法の施行によって、教員の多忙化をもたらすことがないよう十分留意するとともに、教員が研修に参加しやすくなるよう時間を確保するため、学校の働き方改革の推進に向けて実効性ある施策を講ずること。
 また、任命権者による教員の研修等に関する記録の作成に当たって、当該教員から研修の報告等を求める場合には、報告等を簡潔なものとするなど、負担増とならないように留意すること。

(5)任免権者による教員の研修等に関する記録の作成については、各学校で実施する校内研修、授業研究および教育公務員特例法第22条第二項に規定する本属長の承認を受けて勤務時間、勤務場所を離れて行う研修も、任命権者が必要と認めるものとしてその記載対象とするものとすること。
 また、当該記録については個人情報の保護に関する法律に則り、適切に管理されるよう、各教委に周知徹底すること。

(6)地方公務員法の規定により、現在行われている人事評価は、職務を遂行することにあたり発揮した能力および上げた業績をもとに実施されており、本法による研修等に関する記録の作成および資質の向上に関する指導助言等は、この人事評価制度と趣旨・目的が異なることを周知すること。

(7)文科省および各教委は臨時的任用教員に対する研修の機会が確保されるよう周知徹底すること。
 また、会計年度任用職員についても、校内研修など職務としての研修が勤務時間内で確保されるよう周知徹底すること。

(8)教師不足を解消するためにも、改正前の教育職員免許法の規定により、教員免許状を失効しているものが免許状授与権者に申し出て再度免許状が授与されることについて、広報等で十分に周知を図るとともに、都道府県教委に対して事務手続きの簡素化を図るように周知すること。
 また、休眠状態の教員免許状を有する者の取り扱いについて周知徹底すること。

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