土日の勤務、小学校教員の43%が申告せず 内田氏が実態調査

 働き方改革を目指して小中学校で教員の時間管理が始まったところ、学内の勤務時間が減った以上に持ち帰り仕事が増え、書類上の勤務時間の書き換えを求められたことがある小中学校の教員は16.6%に上る--。こんな学校現場の実態が内田良・名古屋大学大学院教授らがまとめた教員アンケート調査で5月13日、明らかになった。学内の勤務時間数を正確に申告するかを聞いたところ、土日の場合には小学校教員の43.0%、中学校教員の27.6%が「正確に申告しない」と答えている。内田教授は「土日になると、学校に行って完全なただ働きをして帰っている教員が小学校では43%もいる。学校は、本当に時間管理というものがすっ飛んでしまっている職場」と指摘。文科省が働き方改革の政策作りのため今年度に行う教員勤務実態調査では、持ち帰り仕事をはじめ見えにくくなっている教員の勤務実態を洗い出すよう求めた。

 同調査は、学校現場の見えざる実態と意識を明らかにする目的で、全国の小学校と中学校の管理職を除いた20~50代の教員を対象に、昨年11月、ウェブ経由で実施した。有効回答者数は小学校466人、中学校458人で、計924人。

 まず、教員の仕事について魅力があるかを聞いたところ、「とてもそう思う」37.9%、「どちらかと言えばそう思う」48.7%で、合わせて全体の86.6%が「魅力がある」と答えた。次に、過去2年間に教員を辞めたいと思ったことがあるか聞いたところ、魅力があることを「とても思う」と答えた教員の52.9%、「どちらかと言えばそう思う」と答えた教員の71.2%が、それぞれ「辞めたいと思ったことがある」と答えた。

調査結果を説明する内田良・名古屋大学大学院教授

 この数字について、内田教授は「過去2年間と時期を限定したにもかかわらず、辞めたいと思ったことがある教員は全体の半分を超えている。教員のなり手不足で教師の魅力を発信しようという議論があるが、教師の魅力はもうみんな分かっている。問題は、教師の魅力を発信しても解決しない。長時間労働の問題こそ解決しなければいけない、というのは明らかだ」と解説した。

 続いて、平日の出退勤時間から在校時間数を計算し、それに平日の持ち帰り仕事の時間数や土日の学内勤務と持ち帰り仕事の時間数を足し、「学校の業務をやっている全ての時間」を調べた。その合計時間から、所定労働時間と実際に休憩時間を引いた数字を「総時間外業務」として算出した。

 結果として、1週間の総時間外業務は、0-19時間が全体の33.1%、20-39時間が52.5%、40-59時間が14.4%に達していた。時間外勤務が週20時間を越えると、厚労省が過労死ラインとしている月80時間の時間外勤務に重なってくるが、総時間外業務の定義に従うと、実に教員の3分の2が月80時間を越える時間外勤務を行っていることになる。

 内田教授は「教員の仕事は、休憩時間がほぼないこと、持ち帰って仕事していることに特徴がある。総時間外業務は定時以外で学校のためにやっている全ての時間を計算したもの。持ち帰りまで含めて、仕事の全体図を見ないと教員の働き方は語れないと実感している」と説明した。

表1=学内勤務時間数と持ち帰り仕事時間数の比較

 この結果を2016年に文科省が行った教員勤務実態調査と比較すると、興味深い結果がみえてくる。学内勤務時間は減ってきているが、一方で持ち帰り仕事の時間数が増えていることが浮かび上がってきた=表1。平日の場合、小学校では27分、中学校では30分、持ち帰り仕事の時間数が増えている。「理由は、学校で時間管理が始まったから。学校で残業しないように言われるから持ち帰り仕事が増えている。学内勤務時間は少し減っている感じが出ているが、実態としては、ますます教員の仕事が見えなくなっているのではないのかと危機感を抱く」と、内田教授は懸念する。

 この総時間外業務を通して、教員の長時間労働が児童生徒に与える影響もみえてきた。「いじめを早期発見できているか不安だ」という答えとの関係性をみると、総時間外業務が0-19時間は「不安である」との答えが66.2%だったのに対し、20-39時間では70.1%、40-59時間では81.9%と正の関係性があった。「準備不足のまま授業に臨んでしまっている」との答えとの関係性では、総時間外業務が0-19時間は「そう思う」との答えが52.9%だったのに対し、20-39時間では66.5%、40-59時間では70.1%に増えていった。

 内田教授は「いじめの発見では、長時間労働の教員ほど、不安だと答えている。忙し過ぎて子供の面倒が見られていないという側面が非常に強いと思われる。授業準備についても、同じ結果がでている。教員の長時間労働は、教員自身の体調はもちろん、子供にも影響が及んできている。本当に日本社会全体の問題だと理解しなければいけない」と、力を込めた。

グラフ1=過去2年間に書類上の勤務時間数を少なく書き換えるように求められたことがある

 さらに、過去2年間に、書類上の勤務時間を少なく書き換えるように求められたことがあるか、という質問も行った。この答えも総時間外業務が多い教員ほど、書き換え要求を受けた経験があることが鮮明になった。総時間外業務が0-19時間の場合、「ある」との答えは小学校で9.3%、中学校で8.1%だったが、20-39時間では小学校で16.2%、中学校で15.6%に増え、40-59時間の場合は小学校で32.7%、中学校で24.4%にも達している=グラフ1。小中学校を合わせると、全体の16.6%が「書き換えるように求められたことがある」と答えている。特に、40時間以上の教員に対しては、小学校で3人に1人、中学校で4人に1人という高い割合で、勤務時間数の書き換えを求められている実態が浮かび上がってきた。

グラフ2=勤務時間数を正確に申告する予定か

 また、上司から勤務時間数の書き換えを求められるだけでなく、教員本人の時間管理に対する認識が甘いことも分かった。学内の勤務について「正確に申告する予定か」を聞いたところ、小学校では平日に12.2%、土日には43.0%もの教員が、中学校では平日に14.0%、土日に27.6%が、「正確に申告しない」と答えた=グラフ2。特に小学校では、土日の勤務を「正確に申告する」と答えた教員は38.9%で、「正確に申告しない」の43.0%より少なかった。

 内田教授は「非常に興味深いことに、土日になると、教員は学校に行って、完全なただ働きをして帰ってくる。勤務時間を過少申告することに対して、上司にも教員本人にも罪の意識がない。なぜそうなったかと言えば、勤務の時間管理をしてこなかった長い歴史があるのだろうと理解している。総じて学校や教育委員会が把握している在校等時間は、勤務実態を反映しない不十分なものであると結論できる」と断じた。その上で、文科省が今年度に実施する教員勤務実態調査に触れ、「持ち帰り仕事の時間数が増えているなど、教員の働き方が見えにくくなっているところもあるので、しっかり調べてほしい。そこから見えてくることもあるのではないか」と述べた。

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