子供政策一元化「こども家庭庁」設置法案 衆院内閣委で可決

 衆院内閣委員会は5月13日、政府提出の子供政策の司令塔となる「こども家庭庁」設置法案を自民、公明、国民民主の賛成多数で可決した。岸田内閣の重要政策の一つで、所管の異なる子供政策をこども家庭庁に一元化することで、子供支援を推進する体制を整えることが目的。可決にあたっては教育を所管する文科省との連携を図ることや、安定財源の確保を求める5項目の附帯決議が採択された。また、子供の人権を保障するため与党が提出していたこども基本法案も賛成多数で可決された。同法案にも子供施策の着実な実施を求める12項目の附帯決議が採択された。

 こども家庭庁は内閣府の外局として、来年4月に設置される。これまで内閣府や厚労省などに分かれていた子供施策を一つにまとめ、縦割り行政を排することを目的としている。ただし幼稚園や義務教育などの教育分野は文科省の所管として残された。

答弁する岸田首相(衆議院インターネット審議中継より)

 採決を前に岸田文雄首相出席のもと審議が行われた。今国会でも子供施策に対する予算について将来的な倍増を明言している岸田首相は「こども家庭庁が認められたら、改めて子供政策を中長期的にしっかり整理し、予算についても整理した上で、社会全体で財源の負担をどう考えていくのか一つ一つ積み上げ、大きな方向性を実現するべく努力を続けていきたい」と述べた。

 さらに教育分野をこども家庭庁に移管しなかったことについては「社会が複雑化する中で結果としてさまざまな課題も文科省、厚労省のみならず、法務省、国交省などにまたがっている。それぞれが専門性をしっかりと伸ばす中で、統一的にコントロールしていく司令塔となる組織が必要なのではないかという議論の中で、こども家庭庁という組織を提案した」と話した。泉健太議員(立民)の質問に答えた。

 質疑の後に採決が行われ、こども家庭庁設置法案は自民、公明、国民民主の賛成多数で可決された。同法案に対しては、自民、公明、国民民主が共同提出した附帯決議が採択された。附帯決議は5項目からなり、子供の教育に関しては、こども家庭庁と文科省との緊密な連携の確保を図ること、子供や若者が意見を表明しやすい環境整備に向けて地方公共団体、教育機関その他の関係機関などと緊密に連携すること、子供の年齢および発達の程度に応じ、子供の意見を尊重し、その最善の利益を優先して考慮するための方針を早期に具体化することや、子供政策に関する予算の確実な確保、安定財源の確保の検討に早期に着手することを求めた。

 一方のこども基本法案は、1994年に批准した国連の「子どもの権利条約」の理念にのっとり、子どもの権利の擁護が大きく図られている。基本的人権が保障され、差別的取り扱いを受けることがないようにするとともに、意見を表明する機会の確保なども盛り込まれた。審議の過程では、子供政策を行政から独立した立場で調査する第三者機関「子供コミッショナー」の設置について議論されたが結局、原案通り見送られた。

 同法案は、採決の結果、賛成多数で可決。第三者機関の設置を盛り込んだ立民提出の「子ども総合基本法案」、教育子ども福祉省創設を唱えた維新提出の「子ども育成基本法案」は否決された。

 こども基本法案については、自民、公明、立民、維新、国民民主などの共同提案による附帯決議が採択された。12項目からなる附帯決議では、▽子供を取り巻く状況が深刻化していることを踏まえ、全ての子供の生存と安全、教育を受ける権利の保証に万全を期すこと▽教育を受ける機会が等しく与えられるよう、教育の全課程について必要な負担軽減策を取り込むこと▽希望する者が安心して子供を生み、育てることができる社会の実現を図るため、支援が切れ目なく行われるよう十分配慮すること▽生まれ育った環境によって子供の成長が左右されることのないよう、子供の貧困率の軽減に取り組むこと――などが求められた。

こども家庭庁設置法案及びこども家庭庁設置法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案に対する附帯決議の内容

 政府は、本法の施行にあたっては次の事項に留意し、その運用等について遺漏なきを期すべきである。

  1. 子供施策の実施にあたっては、関係府省庁、地方公共団体などの連携を十分に確保すること。特に子供の教育に関しては、子供施策に関する総合調整機能を担うこども家庭庁と、教育行政を司る文部科学省との緊密な連携の確保を図ること。
  2. こども家庭審議会はメンバー及び運営の公平性、透明性に加え、子供を取り巻く諸課題に迅速に対処するために必要な課題の把握、検証を不断に行い、関係府省庁、地方公共団体、教育機関その他の関係機関などに対する実効性のある施策の実現に取り組むこと。
  3. 子供施策の検討にあたっては、子供や若者の意見を把握するために、特定の手段によることなく多様な手法を検討、活用するとともに、子供や若者が意見を表明しやすい環境整備に向けて地方公共団体、教育機関その他の関係機関などと緊密に連携すること、また、子供の意見形成を促進するため、子供の年齢および発達を考慮し、子供が理解しやすく、かつアクセスしやすい多様な方法で十分な情報提供を行うこと。
  4. 子供の年齢及び発達の程度に応じ、子供の意見を尊重し、その最善の利益を優先して考慮するための方針を早期に具体化し、その実施にあたっては、関係府省庁に対しその趣旨を徹底するとともに実効性の確保に向けて恒常的な連携を図ること。
  5. わが国の家族関係社会支出が諸外国と比べて低水準となっているとの指摘を踏まえ、政府は子供政策に関する予算の確実な確保とともに、さらなる予算確保のための中長期的な方策及びそのための安定財源の確保の検討に早期に着手すること。
こども基本法案に対する附帯決議の内容

 政府は、本法の施行にあたっては、次の事項に留意し、その運用等について遺漏なきを期すべきである。

  1. 子供施策の実施にあたっては、日本国憲法および児童の権利に関する条約の理念に則り、子供の最善の利益が図られ、その人権が保障され、および社会全体で子供の成長を支援する社会の実現を目指すこと、また社会全体で子供の成長を支援する社会の実現を担保するための方策について検討した上で必要な措置を講ずること。
  2. 子供施策の実施にあたってはいじめ、不登校、自殺、虐待等子供を取り巻く状況が深刻化していることを踏まえ、全ての子供の生存と安全、教育を受ける権利等の保証に万全を期すこと、また教育および子供の福祉に関わる施策により一層の連携確保を図ること。
  3. 子供施策を実施するための予算及び人員を十分に確保し、全ての子供の成長の支援に万全を期すこと、また教育を受ける機会が等しく与えられるよう、義務教育のほか、幼児教育、高等学校教育、大学教育など教育の全課程について必要な負担軽減策を取り込むこと。
  4. 子供施策の推進は、全ての子供について、子供の年齢および発達の程度に応じて子供の意見を聞く機会および子供が自ら意見を述べることができる機会を確保し、その意見を十分に尊重することを旨として行うこと。
  5. 子供施策の実施にあたっては、希望する者が安心して子供を生み、育てることができる社会の実現を図るため、結婚、妊娠、出産、育児及び子供の成長に関する支援が切れ目なく行われるよう十分配慮すること、またこれまでの支援が届きにくかった中学校卒業後または高等学校中退後に就学も就業もしていない子供や若者も支援の対象とすること。
  6. 長引くコロナ禍の影響等により子育て世帯の生活が厳しさを増していることを踏まえ、子育て世代への支援の拡充策について検討した上で、必要な措置を講じること。
  7. 保護者の経済的な状況など、生まれ育った環境によって子供の成長が左右されることのないよう子供の貧困率の軽減に取り組むこと。
  8. 保育士や幼稚園教諭をはじめ、子育て支援の現場で働く職員についてさらなる処遇改善について検討を行うこと。また、子育て支援の現場で働く職員数の不足等により必要な支援が停滞することがないよう新たな人材を確保するための方策を検討するとともに、職員の業務負担の軽減に努めること。
  9. 子供に関する支援に資する情報の共有を促進するための情報通信技術の活用その他の必要な措置について、個人情報の適正な取り扱いを確保するにあたっては、個人情報の保護に関する法律平成15年法律第57号の義務規定を遵守するだけではなく、その基本理念を踏まえ経済協力開発機構(OECD)閣僚理事会勧告も参考としつつ、子供および父母その他の保護者の私生活の自由に配慮するものとすること。
  10. 子供に関するデータや統計の活用にあたっては、政府全体として収集すべきデータを精査し、各府省庁が連携してデータを収集分析する環境を構築するとともに、収集したデータに基づいて各種施策の強化および改善策の検討を行い、その内容を必要に応じ国会に報告すること。
  11. 日本国内の子供並びに子供に関わる大人及び子供を養育中の保護者を含むあらゆる大人に対する児童の権利に関する条約の趣旨や内容等についての普及啓発にその認知度を把握しつつ取り組むこと。
  12. 基本理念に則った子供施策の一層の推進のために必要な方策については必要に応じ、本法の施行後5年を待つことなく速やかに検討を加え、その結果に基づき法制上の措置、その他の必要な措置を講じること。

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