正規教員は定数の92.9%、自治体間にばらつき 文科省調査

 国が標準と定めた教員定数に対し、2021年度に都道府県や政令市が実際に配置した教員の充足率は全国平均で101.8%となり、このうち正規教員が92.9%で、非正規教員の臨時的任用教員が7.3%、非常勤講師等が1.6%を占めていたことが5月16日、文科省の調査結果で分かった。充足率が最も高かったのは独自に小学校全学年の30人学級に取り組んでいる鳥取県で109.5%となり、最も低いのは長崎県だった。教員不足や正規教員と非正規教員の割合については、自治体ごとのばらつきが大きいことが改めて確認された。教員定数に占める正規教員の割合が最も大きいのは東京都で104.5%となり、正規教員だけで教員定数を上回っている。最も小さいのは沖縄県で、教員の5.8人に1人が非正規教員だった。非正規教員の割合については、教員不足の構造的な要因の一つとして上限設定を求める声もあるが、末松信介文科相は5月13日の閣議後会見で「目安を設けることの是非を含めて、効果的な方策を検討したい」と慎重な姿勢をみせている。

(教育新聞編集委員 佐野領)

正規教員の割合が大きいのは、東京都、福井県、北海道、仙台市、鳥取県…

 この調査結果は、義務標準法(公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律)に基づいて算定された教員定数の標準に対し、都道府県や政令市が実際に配置した教員数を調べ、正規教員、非正規教員の臨時的任用教員と非常勤講師等の割合を算出したもので、「公立小・中学校等の教員定数の標準に占める正規教員の割合」と題されている。昨年5月、文科省が小学校全学年での35人学級の導入に合わせ、正規教員の配置の計画的な改善を求めて全国知事会など地方団体と協議した際に20年度の数字が公表され、このほど21年度の数字がまとまった。グラフは文科省の調査結果を基に、教育新聞が教員定数に対する充足率が高い順に並べ替えて作成した。

 それによると、21年度に実際に配置された教員の充足率は全国平均が101.8%で、20年度に比べて0.1ポイント改善した。内訳は、正規教員92.9%(20年度比増減なし)、臨時的任用教員7.3%(同0.2ポイント減)、非常勤講師等1.6%(同0.3ポイント増)だった。

 都道府県別でみると、教員定数に対する充足率、正規教員と非正規教員の割合は、ともに自治体間のばらつきが大きい。

公立小・中学校等の教員定数の標準に占める正規教員の割合(2021年度)

 充足率が最も高いのは鳥取県で109.5%だった。同県は小学校全学年に30人学級の段階的な導入を独自に進めており、学校現場の教員定数は国の標準よりもほぼ1割多い計算になる。2番目は東京都で108.3%。正規教員だけで教員定数を上回る104.5%を配置しており、特別支援教育などを充実させている。仙台市105.2%、京都市104.8%、滋賀県104.7%、神戸市104.5%、神奈川県104.1%、川崎市104.0%と続いた。

 一方、充足率が教員定数の標準を下回ったのは、13自治体だった。最も低かった長崎県は98.3%。岐阜県、熊本県、徳島県、沖縄県、大分県、山口県、岩手県、鹿児島県、浜松市、相模原市、大阪府、宮城県が100%に満たなかった。都市部か地方部かに関わりなく、教員不足に苦しむ自治体の姿が浮かび上がってくる。

 正規教員の割合でみると、東京都が104.5%で最も大きかった。全国で唯一、教員定数の標準を正規教員だけで上回った。教員定数の95%以上に正規教員を充てている自治体をみると、福井県98.9%、北海道98.8%、仙台市98.3%、鳥取県98.2%、愛媛県97.2%、名古屋市97.0%、新潟県96.0%、富山県95.7%、横浜市95.4%、札幌市・川崎市・新潟市それぞれ95.3%、山梨県95.2%と続いた。

 正規教員の割合が最も小さい自治体は沖縄県で82.3%にとどまった。同県は、臨時的任用教員が17.0%、非常勤講師等が0.2%を占め、教員の5.8人に1人が非正規教員となっている。低い順にみると、奈良県85.9%、岡山市86.0%、堺市86.7%、宮崎県・長野県それぞれ88.0%、鹿児島県88.3%、大阪府88.4%、さいたま市88.7%、福岡県・埼玉県それぞれ89.2%と続いた。

 ただ、正規教員の割合が低い10自治体について、正規教員と非正規教員を合わせた充足率をみると、教員定数の標準を下回っているのは、沖縄県、鹿児島県、大阪府のみ。他の7自治体は正規教員が少ない分、非正規教員を増やして教員定数を確保している。

 非正規教員の臨時的任用教員が教員定数に占める割合をみてみると、16自治体が10%を超えていた。沖縄県17.0%に続き、奈良県14.8%、堺市13.1%、岡山市13.0%、さいたま市12.1%、宮崎県11.8%、鹿児島県11.2%、三重県・長野県それぞれ11.1%、広島市10.9%、大阪府10.8%、熊本市・京都府・埼玉県それぞれ10.4%、神戸市10.2%、大阪市10.1%だった。

文科省、正規教員の計画的採用を重視 非正規の上限設定には慎重

 教員定数に占める正規教員と非正規教員のバランスについて、文科省では、中長期的な正規教員の採用を計画的に進めることを最も重視している。末松文科相は、4月28日に全国の都道府県・政令市の教育長を集めた会議で、教職員の定年が来年度末から2年に1歳ずつ段階的に65歳まで引き上げられることを踏まえ、「定年退職者が出ない年に極端に少なく、出る年は新規採用者が極端に多いというような状態は、教職を目指す人の不安にもつながる。そうならないように、定年引き上げ後の状況を見据えた採用計画を策定し、一層計画的な正規教員の採用・配置に努めていただきたい」と強調した。

 もう一つ、正規教員と非正規教員のバランスを考える一つの基準となるのが、学級担任に必要な正規教員を配置できているかという観点になる。文科省は1月31日、初めて実施した教員不足の実態調査を公表。それによると、昨年5月1日時点で、小学校の学級担任は、通常学級では正規教員が88.40%、非正規の臨時的任用教員が11.49%。それに対し、特別支援学級では、正規教員は76.17%で、臨時的任用教員は23.69%だった。中学校の学級担任は、通常学級では正規教員が90.72%、臨時的任用教員は9.27%だが、特別支援学級では正規教員は76.03%にとどまり、臨時的任用教員が23.95%を占める。特別支援学級では非正規教員が学級担任となる割合が通常学校の2倍以上も高く、ほぼ4人に1人が非正規教員となっている。

 新年度のスタート時点で、学級担任に必要な数の正規教員を配置できない現状について、末松文科相は5月10日の参院文科委員会で水岡俊一議員(立憲民主)の質問に「正規教員にきちんと担任を引き受けていただきたい」と答弁。年度当初から学級担任に非正規教員を配置する状況を改善すべきだとの認識を示した。

 こうした非正規教員の配置が正規教員の採用の抑制につながり、教員不足の構造的な要因の一つになっているとして、非正規教員の割合に上限を設定するよう求める動きもある。昨年5月17日、小学校全学年の35人学級化の実現に向け、文科省が全国知事会など地方団体と行った協議の席上、当時の萩生田光一文科相は、非正規教員の割合が高い自治体を念頭に「非正規教員は定数の何割程度までが望ましい、といったスタンダードを共有したい」と述べ、目安となる割合の設定を検討する考えを示した。末冨芳日本大学教授ら有識者が今年5月9日、教師不足への対処法をまとめた政策提言でも、非正規教員の割合に対する上限設定を取り組むべき施策の一つに挙げている。

 非正規教員の割合について、末松文科相は5月13日の閣議後会見で、「教育委員会ごとにみると、教員定数に占める臨時的任用教員の割合に、ばらつきは確かにある。文科省としては、特に臨時的任用教員の割合が大きい自治体について、それぞれの事情や今後の見直しなどの対応に関する状況を把握しながら、効果的な方策を検討してまいりたい」と述べ、非正規教員の割合が大きい自治体には、それぞれの事情に応じて個別に改善策を検討していく考えを示した。

 自治体によって非正規教員の割合が大きくなる背景については、「定年退職者の大量退職にあたり、教員の年齢構成を平準化させるため、全ての教員を正規採用するのではなく、一部を臨時的任用教員にすることにより、教員の年齢構成の平準化を進めること。また、特別支援学級が見込み以上に増加しており、予定している教員数では足りず、臨時的任用教員を任用せざるを得ない状況が生じていること。こういうことが挙げられている。各教育委員会の抱える課題や状況はさまざまだ」と説明した。

5月13日の記者会見で非正規教員への考え方を説明する末松文科相

 その上で、非正規教員の割合に目安や上限を設定することについて、末松文科相は「引き続きの検討課題。目安の拘束力とか、設定する数値の合理性とか、教員の任用に決定権を持つ各教育委員会への影響、その他の地方公務員とのバランスなど、さまざまな観点から検討する必要がある。文科省としては、各教委の事情を聞きながら、各学校において正規教員を基本とした教員組織が構成されるように、目安を設けることの是非を含めて、効果的な方策を検討してまいりたい」と応答。正規教員を基本とした教員組織の構築を目指す一方で、目安や上限には慎重な検討が必要との考えを明らかにした。

 同時に「正規と非正規の教員について、その学校にとってのバランスを検討していくことは正しい方向であると思うけれども、頑張っていただいている非正規の教員はたくさんいる」とも述べ、学校現場での非正規教員の役割にも配慮する必要があるとの見方を示した。

 非正規教員の割合への上限設定に慎重姿勢をとる理由について、文科省では「教育委員会にヒアリングを行うと、数年前まで団塊世代の教員が大量に定年退職となり、一気に減った教員の人数を補うために新規採用を大きく増やすと、今後も世代のバランスが悪くなってしまうので、一時的に非正規教員で定数を充足させているケースもある。少子化が進む中で、将来必要な教員数が減ることを見越して、当面の教員不足を非正規で補っておけば、中長期的には必要な正規教員を確保できると見込んでいる自治体もある。そうした中で仮に非正規教員の割合を数字で示そうとすれば、何%が適正なのかという根拠を説明する必要が出てくる。昨年5月の地方団体との協議も受け、いろいろ検討したが、教員の任用はそもそも都道府県などの教委の権限。その権限を飛び越えて、文科省がいますぐに上限や目安を設定することは難しい」(初等中等教育局財務課)と説明している。

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