【個別最適な学びに挑む】学生による放課後の学習支援 模試とも連携

 一人一人の子どもの状況に合わせた学びをどのように提供していくか。これからの時代に対応した学校改革を進める上で、この課題は避けて通れない。千葉県松戸市にある光英VERITAS中学校・高等学校では、大学生を「学習メンター」として派遣するトモノカイとタッグを組み、放課後に生徒の自習を支援するシステム「VERITAS After School」が軌道に乗り、生徒が受けた模試のデータなどと連携させた放課後の学習指導に本格的に乗り出す。同校の大野正文副校長はこれまでの取り組みについて、「学習習慣の定着につながり、勉強量も以前より増えている」と手応えを感じている。さらなる個別最適な学びを目指すトモノカイと同校の挑戦を取材した。

一歩先を行く先輩による斜めの関係からの学習支援

 夕暮れにもかかわらず、活気に満ちたにぎやかな声が漏れ聞こえてくる大教室に足を踏み入れると、9割以上の机が生徒たちで埋まっていた。友達同士で肩を並べて授業で出されたと思しき課題に取り組んでいる生徒もいれば、タブレットの学習アプリに挑戦している生徒もいる。その隣の教室は一転して静まり返り、勉強に集中したい生徒が数人、ノートを広げていた。

大学生の学習メンターから指導を受ける生徒

 そんな中に交じって、数人の私服の大学生の姿も見える。この日は9人の大学生が「学習メンター」として来校。教育学部の学生だけでなく、法学部や工学部など、大学も含めて多彩なメンバーが、生徒からの質問に答えたり、話し相手になったりしている。

 メンターの一人で、「VERITAS After School」がスタートしたときからずっと関わってきた坂本幸輝さんは「生徒とは、一歩先を行く先輩という感じで、斜めの関係を意識しながら、学習の疑問点や進路の不安などに耳を傾けて、信頼関係を築きながら、学習面のアドバイスや自分の体験を伝えるようにしている。生徒と1対1で向き合えて、自分の経験が役立つのが魅力だ」と、メンターとしてのやりがいを語る。生徒によっては、教科の学習内容というよりも勉強の仕方そのものが分からないといったケースもあり、メンターがじっくり話を聞きながら、いろいろなやり方を一緒に試行錯誤していき、自分に合ったやり方に行きついて学力が一気に伸びるといったこともあるそうだ。

 もともと東京大学の家庭教師サークルが母体で、大学生らによる高校などでの放課後学習支援事業に取り組んできたトモノカイが、同校の「VERITAS After School」にメンターを派遣するようになったのは2年前。共学化して校名も変更し、新たな学校として生まれ変わる直前のことだった。

 「VERITAS After School」は月曜日から土曜日まで毎日実施され、中学1年生から高校3年生まで、誰でもいつでも利用できる。平均すると、1日当たり200人くらいの生徒が常に利用しており、これは同校の生徒の3分の1に相当する。平日は午後7時までやっているが、午後5時を過ぎてから教室に訪れる生徒も多い。彼らは主に、部活動が終わった後に参加する生徒だ。

 自習を終えて教室を後にする生徒に声を掛けてみた。

 「大学生なら、先生に質問するよりも気軽に分からないことを聞けるし、仲良くなった大学生と話ができると、すごくモチベーションも上がる」と教えてくれたのは、今度受検する英語の検定試験対策を行っていた高校3年生の女子生徒。入学して間もない中学1年生ながら、ほぼ毎日利用しているという男子生徒は「友達に誘われて参加するようになり、今は学校の宿題や課題を中心にやっている。教室はすごくいい雰囲気で、大学生にも緊張せずに声を掛けられる」と、その居心地の良さに満足している様子だった。

定量的なデータと定性的なデータの組み合わせによるアセスメント

 「みんなで集まって勉強する場をつくることで、学習習慣の定着につながる。学習時間や勉強量も以前より増え、進学実績も上がっている」

 同校の大野副校長は、「VERITAS After School」の成果をそのように語る。これまでは学校推薦型選抜で大学に進学する生徒が多い傾向にあったのが、志望する難関大学に一般入試で挑戦しようとする生徒も増えているそうだ。「難関大学の学生が目の前にいることで、決して雲の上の存在ではないと分かる。ちゃんと勉強すれば自分だって行けるんだと、明確な目標が見えるようになる」と大野副校長。

 さらに、1000人近い大学生がメンターとして登録しているトモノカイでは、要望に応じて、同校の生徒が志望している大学にいる学生メンターとオンラインなどで相談に乗ったり、大学の様子を聞けたりするサポートも個別に行っている。このことも、生徒の進路へのモチベーションを高めることに一役買っているようだ。

 一方、大野副校長は「出席の記録は取っているが、もうちょっと細かく学校の指導と放課後の学習が連携できるといい」と課題も挙げる。

ICカードをかざすと出席データが登録されるシステム

 「VERITAS After School」に参加する生徒は、教室の入口にある端末に専用のICカードをかざすことで、出席データを残すようにしている。また、学習メンターは毎回、どの生徒にどんな指導をしたかや、その生徒がどんな課題を抱えているかなどを入力するようにしており、それらは同校の教員とも共有されるようになっている。それだけでも貴重な個人の学習データではあるが、さらにさまざまなデータを連携させていくことで、より一人一人に合った理想的な個別最適な学びを目指しているのだ。

 こうしたニーズに応えるため、トモノカイでは今年度、多くの高校現場で使われている教育プラットフォームの「Classi」と、進研模試を実施しているベネッセコーポレーションと連携して、新たなプロジェクトに乗り出した。

 具体的には、学校で定期的にベネッセの模試などを生徒が受けるようにし、学習課題や学力レベルをデータ化。それをClassiが分析して、教員やメンター、生徒本人に対して、効果的な学習方法や教材などをアセスメントデータとして提示する。さらに、メンターはこれらのデータを参照しながら、個々の生徒の特性に合わせた学習アプローチを作成し、生徒を支援していくという仕組みだ。

 同社の内山貴晴執行役員は「模試などの定量的なデータと大学生メンターによる定性的なデータを組み合わせて、学校側と定期的に振り返りを行えるようになっていけば、個々の生徒への指導だけでなく、『特定の学年の課題にどう対応するか』や『どのタイミングでどんな指導に力を入れるべきか』といった対策もできるようになる。そんなふうに、学校現場との橋渡しの役割を果たせれば」と力を込める。

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