「経験で得た指導、適さない場合も」 不登校支援で報告書案

 文科省の「不登校に関する調査研究協力者会議」(座長:野田正人立命館大学大学院特任教授)は5月23日、第5回会合で報告書案を取りまとめた。不登校児童生徒本人や保護者への調査により、その背景や支援ニーズの多様さが浮き彫りになったことを踏まえ、報告書案では「経験などにより得られた特定の指導・支援方法が適切な場合もあれば、個々の児童生徒の状況によっては適さない場合もあることを、常に念頭に置くことが必要」と指摘。その上で支援ニーズの早期発見や、広域の不登校特例校、アウトリーチ型支援を一括して行う拠点の設置促進など、多様な教育機会の確保を盛り込んだ。報告書案は座長一任で了承され、修正などを経て今月をめどに公表される。

2つの調査結果から実態を分析
オンラインで行われた第5回会合の様子

 報告書案では不登校の要因について、文科省の2つの調査結果をもとに分析が行われた。学校を対象とした調査(「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査(2020年度)」)では「無気力、不安」「生活リズムの乱れ、遊び、非行」「いじめを除く友人関係を巡る問題」などが上位に並んだのに対し、20年度に初めて行われた児童生徒への調査(「不登校児童生徒の実態把握に関する調査」)では、「先生のこと」「身体の不調」「生活リズムの乱れ」「友達のこと」がそれぞれ約3割を占め、学校を対象とした調査との乖離(かいり)が目立った。

 2つの調査の回答方法は異なるものの、学校対象の調査と比べて、児童生徒対象の調査では「先生のこと」や「勉強が分からない」が報告された割合が高く、報告書案では「これらの点について学校が認識しているよりも多くの児童生徒が感じていることが明らかになった」と結論。また自由記述から「先生の指導が怖かった」「勉強に追い付けない」など、学校側の対応や学業不振などで不登校となった事例もあったことも指摘された。

 またいずれの調査でも、不登校の要因や背景、期間や受け止め方などが多様であり、支援ニーズも多岐にわたっているとして、「多様な児童生徒への対応に当たっては、経験などにより得られた特定の指導・支援方法が適切な場合もあれば、個々の児童生徒の状況によっては適さない場合もあることを、学校や教職員などは常に念頭に置くことが必要」と強調した。

 これを踏まえ、今後重点的に実施すべき施策の方向性として、①誰一人取り残さない学校づくり②不登校傾向のある児童生徒に関する支援ニーズの早期把握③不登校児童生徒の多様な教育機会の確保④不登校児童生徒の社会的自立を目指した中長期的支援――の4項目を盛り込んだ。

 ①誰一人取り残さない学校づくりでは、児童生徒本人が安心して周囲の大人や友人にSOSを出せるような、養護教諭やスクールカウンセラー(SC)などを活用した心の健康の保持にかかわる教育などが盛り込まれた。

 また②支援ニーズの早期把握では、全児童生徒を対象にしたスクリーニングの実施や、その結果を踏まえたアセスメントの実施、SCによる一部学年の全員面接、GIGAスクール構想で整備された1人1台端末を活用した早期発見などが提言された。

 ③多様な教育機会の確保では、都道府県などによる広域を対象とした不登校特例校や、夜間中学との連携などを通じた特色ある不登校特例校の設置推進や指導体制の充実、フリースクールなど民間団体との連携促進、遠隔地や相談につながりにくい児童生徒へのアウトリーチ型支援やICTを活用した学習・体験活動、相談支援などを一括して行う「不登校児童生徒支援センター」(仮称)の設置の推進などを挙げた。

 最後に④社会的自立を目指した中長期的支援では、教員養成段階における教員の教育相談スキルの向上、SCやスクールソーシャルワーカー(SSW)によるオンライン教育相談の充実、家庭教育支援の充実、多様な価値観を認め、児童生徒の目標の幅を広げるような支援の実施などが重要だとした。

委員からは財政支援を求める声も

 23日の会合ではこの報告書案に対し、委員から多くの意見が寄せられた。笛木啓介委員(東京都大田区立大森第三中学校長)は「財政的な支援がなければ、なかなかSCやSSWの配置も充実しないのではないか。学校としては何人が復帰したかではなく、『学校には来ていないが、リモートでつながることができた』など、様子を見ながら進歩していると分かることが重要だが、そういったことを財政当局にも理解してもらわなければ難しい」と指摘。

 白井智子委員(新公益連盟代表理事)は「不登校が問題行動ではないという意識は、少しずつ浸透してきたと思う。一方で今の学校や教育委員会は、当たり前のことを当たり前にできる状態にないということにも向き合う必要がある。先生はきめ細かい指導がしたくても、そもそも教員が足りない。不登校という枠を超えて、子供の支援・教育の環境を整えていくという働き掛けにつなげていくことが必要だと改めて感じている」と述べた。

 高校の関係者からは、「高校では、入試を経て入ってくるのだから登校できて当たり前だ、難しければ通信制に行けばいい、という考え方も根強い。高校の不登校の深刻さをもっと発信すべきだった」(沖山栄一委員、東京都立世田谷泉高校統括校長)、「義務教育でないからと後手に回りがちで、高校での不登校支援が欠落している。学校外の学びをもっと積極的に、夢と希望を持って選択していける空気が醸成され、保護者の心労が少しでも軽くなることを願っている」(齋藤眞人委員、立花高校理事長・校長)といった声が上がった。

 野田座長は「不登校の児童生徒は、本当に一人一人違う困難を抱えているのだということを改めて認識した。単に教師の思い込みで施策を打てば済むのではなく、子供と保護者との往復動作の中でしっかり聞き取り、教えてもらいながら、最善のものを作っていくということが大事なステージに来ているのだろう」と述べた。

 文科省の淵上孝大臣官房審議官は「今回取りまとめた報告書を踏まえて、それぞれの学校や地域における取り組みがさらに進められ、悩みや不安を抱える子供たちへの支援がさらに充実されるように、各種の情報発信や、来年度予算の概算要求に向けた取り組み、学校の働き方改革に全力で取り組んでいきたい」と応じた。

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