女性の理系活躍社会へ「男女の違いに基づく先入観排除を」 文科相

 政府の教育未来創造会議が将来の日本を支える人材の養成に向けての方策を盛り込んだ「第一次提言」を受けて、末松信介文科相は5月24日、大学の構造転換と理系女子学生の活躍促進に関するメッセージを発表した。同日の閣議後の会見で、末松文科相は「これからの大学は大きく構造転換を図る必要がある。特に女性が理系で活躍できる社会を構築するためには、大学関係者のみならず、子供たちや保護者や教職員、そして企業に広く理解と協力いただくことが不可欠だ」と述べた。

閣議後会見でメッセージを発表する末松文科相

 5月10日にまとめられた教育未来創造会議の「第一次提言」では、人材育成を取り巻く課題として、少子化の進行、デジタル人材の不足、高等学校段階の理系離れなどが挙げられた。その上で、大学の機能強化が必要として、具体的に進学者のニーズを踏まえた成長分野への大学の再編促進・産官学連携強化、学部・大学院を通じた文理横断教育の推進、理工系や農学系の分野をはじめとした女性の活躍推進、グローバル人材の育成・活躍推進、デジタル技術を駆使したハイブリッド型教育への転換などが提案された。中でも重視されたのが各国と比べて少ない理系人材の養成で、特に女性が活躍できる環境作りが強調されている。

 メッセージの中で末松文科相は「初等中等教育段階で高い資質・能力が育成されながらも、大学でその資質・能力をさらに伸長させるための環境が十分に整えられていない」と指摘した。これは、高等学校段階での理系離れや、社会全体に男女の違いに基づく先入観があるほか、目まぐるしい社会の変化に必ずしも追い付いていない大学の構造など、さまざまな要因が複雑に絡み合っていると分析。

 このため、子供たちの未来、わが国の未来を切り開くためには、大学を起点にして大胆に構造転換を図ることが必要であるとして、「理系の学修を行うための大学の受け皿を抜本的に拡充すること」「とりわけ女性が理系の分野で大きく活躍できる社会を構築すること」について、大学の関係者、今後大学での学びを志す子供たち、保護者、教職員、企業関係者の理解を求めた。

 このうち小中高等学校の教職員に対しては、「初等中等教育の目指すところは、全ての子供たちの可能性を最大限引き出すことで、大学には文理横断的な入学者選抜に転換するよう強く促していく」とした上で、「高等学校においても早期から文系・理系に分ける『文理分断』教育から脱却し、文系・理系の枠を超えた学びにより、生徒の可能性の芽を大きく育むことをお願いしたい」と従来の文理別教育を改めるよう要請。

 さらに、学校における男女の違いに基づく先入観の排除を求め、「もちろん小中高等学校だけで解決できる問題ではなく、社会全体で力をそろえて固定観念の排除を進めていくので、先生方の力を貸してほしい」と男女区別なく指導するよう求めた。

 末松文科相はメッセージの結びにも、「意欲ある理系学生、女子学生などが広く社会で活躍できるようにするため、産官学が総出でそのような学生を応援するという機運を醸成するためにイニシアチブを発揮していく。中学生・高校生には、文系か理系かの二者択一に陥らないよう、さまざまな学習をすることができる機会を用意する。そのため、大学や産業界も含めて広く社会に助力してもらい、社会総がかりで子供たちの学びや経験の場を創出する」としている。

末松文科相メッセージ(抜粋)

これから大学を志す皆さん

5年後、10年後に向けて大学が大きく変わっていきます。現在35%にとどまっている自然科学分野を専攻する学生の割合を5割程度まで引き上げることを目指します。入試も変わり、文系・理系の区別なく広く深い学びが評価されるようになります。また、学生の皆さんが安心して学びに注力できるよう、経済的な支援を含めてきめ細かな支援を行います。特に女子生徒の皆さん。これからの時代、女性が能力を発揮して活躍できる分野は限りなく広がっています。理系は「男性の職場」といった固定観念はなくなっていきます。ぜひ、大学でも自分自身が興味を持てる分野、得意な分野を徹底的に追求し、自らの可能性を広げていってください。

保護者の皆様

学びは子供の可能性を広げる鍵です。「理学部や工学部の女子は就職できない」このようにお思いではないでしょうか。そのようなことはありません。特にIT系の人材は2030年に最大79万人も不足するという予測もあるなど、理工系学部を卒業した学生は、男性、女性を問わず産業界でも強く求められています。近年は、国立の女子大学でも工学部を新設するなど、大学も女性が理工学系の分野で活躍することを期待しています。「女子は文系」といった固定観念から離れ、子供たちの幅広い進路選択をお支えください。

小中高等学校の教職員の皆様

初等中等教育の目指すところは、全ての子供たちの可能性を最大限引き出すことです。大学には、文理横断的な入学者選抜に転換するよう強く促していきます。高等学校においても早期から文系・理系に分ける「文理分断」教育から脱却し、文系・理系の枠を超えた学びにより、生徒の可能性の芽を大きく育むことをお願いいたします。また、学校における男女の違いに基づく先入観を徹底的に排除しましょう。もちろん、小中高等学校だけで解決できる問題ではありません。社会全体で力をそろえて固定観念の排除を進めてまいりますので、学校における先生方のお力をお貸しください。

企業等の皆さま

大学での学び、成長を評価してください。学生が在学中から社会を知り、今、自分たちがどのような力を身に付けなければならないのか、何を学ばなければならないのかを理解するためにも、インターンシップをはじめとして学生が様々な経験・体験をできる場を御用意ください。また、男女の違いに基づく先入観の排除のため、女性が活躍できる場をしっかりとご用意いただき、特に理系出身の女性が社会で活躍している姿が見えるよう、子供たちがロールモデルに出会う機会をつくるための御協力をお願いします。そして、志高く羽ばたこうとする学生が勉学に専念できるよう、産官学が手を取り合い、そのような学生を支援するためにお力添えをお願いします。

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