ヒロック初等部が開校 自由進度学習で学ぶ子どもたち

 元小学校教諭の蓑手章吾氏と五木田洋平氏らによるオルタナティブ・スクール「HILLOCK(ヒロック)初等部」が4月、東京都世田谷区で開校した。蓑手氏が公立小教諭時代から実践してきた自由進度学習や、同スクールのすぐ近くにある都立砧公園でのアウトドア活動、探究学習などを通して、子どもたちが学びのオーナーシップを身に付けていくことを目指している。教育関係者からの注目が集まる同スクールの開校から約1カ月がたった5月19日、どのような活動が行われているのか取材した。

毎朝のサークルタイムで心理的安全性を高める

 ヒロック初等部は、スクールディレクター(校長)に元公立小教諭で自由進度学習を実践し、特別支援教育にも精通している蓑手章吾氏、カリキュラムディレクターに元私立小教諭で探究学習やICTを用いた学び合いなどを実践してきた五木田洋平氏が就任。開校1年目は、1年生9人、2年生5人、3年生4人の計18人が入学した。一条校ではないため、子どもたちは居住地の小学校などに学籍を置いて、同スクールで学んでいる。

 毎朝、まずはサークルタイムからスタートする。約30分、じっくり時間を取っており、一人一人が昨日の出来事や、今考えていることなどを話していく。五木田氏は「4月の最初は、サークル(円)にさえならなかった」と振り返る。しかし、開校から毎日続けていくことで、子どもたちが自己開示しやすくなったり、最初はうまくいかなかった友達関係にも変化が出てきたりしているという。スクール内の心理的安全性は確実に高まってきているようだ。

自由進度学習では自分の85%を目指す

 その後は、一人一人の興味関心やペースに応じて学ぶ自由進度学習の時間。同スクールでは、年齢や学年に関係なく、子どもたちは同じ空間で過ごしており、5月に入ってからは1人1台端末も活用して、さまざまな学びに挑戦している。

自由進度学習の時間で、自然と学び合う子どもたち

 自由進度学習において大事にしているのが、子ども自らがその日の「めあて」を立てること。そして、終わった時にその日の学びについて「振り返り」をすることだ。

 取材時は「パソコンを触り始めて5日目ぐらい」という子どもたちだが、サポートを受けながら授業支援ツール「スクールタクト」を使用し、その日に取り組みたいめあてを書き込んでいった。やることも、それにかける時間なども、それぞれだ。

 例えば、ある子はアプリを活用してタイピングの練習をしている。ある子は学習アプリ「モノグサ」を使って、問題を解いている。また別の子は、学習玩具を使いながら足し算を学んでいる。最初は一人で学んでいたが、途中、その子が困っている様子を見せると、隣で別のことをしていた子が「これはこうだよ。分かる?」と自然に教えていた姿が印象的だった。

 他にも、平仮名が分からない子が動画で絵本を見ながら平仮名を学ぼうとするなど、学び方についても本人の感覚を大事にしており、必要であれば蓑手氏や五木田氏がサポートしている。

 自由進度学習の終わりでは、蓑手氏が振り返りについて「自由進度学習では、自分にとっての85%を目指そう。それが自分のためになるよ。今日の取り組みは、簡単過ぎたかな? 難し過ぎたかな? 何かにチャレンジできたかな?」と呼び掛けた。子どもたちは「今日は簡単過ぎたかも」「チャレンジできた!」などと答えながら、振り返りをスクールタクトに記入していった。

 この「85%」という感覚について、五木田氏は「例えば、何問やるなどの問題数を指定するのではなく、自分にとっての85%を目指せるようになってほしい。まだまだ子どもたちもその感覚はつかめていないが、日々、自分でめあてを立て、振り返りをしていくことで、つかめていくのではないか」と期待を込める。

物を使いながら英語を学んでいく

 続いて英語クラスは、「ブロックを使って自分だけのコマをつくろう」というテーマで行われた。授業はオールイングリッシュだが、子どもたちもしっかりと受け答えをするなど、英語を理解しているようだ。しかし、蓑手氏によると「英語が分かる子は半分ぐらい」という。

英語クラスでは、ブロックなど物を使って学ぶことも大事にしている

 同スクールは「日本語軸バイリンガル」を目指しているが、蓑手氏は「この授業も『英語を学ぶ』というより、英語を話す人がいても抵抗感を感じないような多様性を身に付けてほしいと思ってやっている」と強調する。英語がまだ分からない子にとっても、この日のようにブロックなど、物を使いながら英語を学んでいくことで、理解が深まっていくと話す。

 子どもたちは思い思いにコマをつくりながら、「重さがあるほうが良く回る」と気付いたり、「どうすれば安定して長い時間回るのか」を考えたり、試行錯誤を重ねていた。「異学年で学ぶことで、自然と経験することが増えていくし、協働的な学びにもつながっている」と、五木田氏は手応えを感じている。

 同スクールでは、子どもに寄り添う観点から、教師を「先生」ではなく、ヒマラヤ登山ガイドのシェルパにちなんで「ラーニング・シェルパ」と呼んでいる。同スクール創設者でソダチバ・プロジェクト代表の堺谷(さかいたに)武志氏は、日々、変容していく子どもたちに目を細めながら、「子どもたちには、自分が自分の学びのシェルパになっていってほしい」と期待を語った。

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