高校英語「コミュニケーション能力、高まっていない」 文科相会見

 英語教育実施状況調査の結果、小学校、中学校、高校と学校段階が上がるにつれ、英語4技能による授業での言語活動が低調になっていたことについて、末松信介文科相は5月24日の閣議後会見で、「コミュニケーション能力がなかなか高まっていないことが、よく分かる数字」と述べ、課題があるとの認識を示した。中高生の英語力について自治体間の差が目立つことには「かなり開きがあることに、懸念を持っている」と述べ、自治体の取り組みを支援する考えを示した。大学入学者選抜で英語4技能が評価されないことが高校での授業に影響を与えているとの高大接続改革の考え方については、「(各大学に)委ねる部分が多い。文科省としては個別選抜で総合的な英語力の評価に関する優れた取り組みを普及させていくために、好事例を提供したい。改革意欲のある大学の後押しができるように、基盤的な経費などの活用も含め、インセンティブの付与についても検討を進めている」と述べ、大学入学者選抜における各大学の取り組みに期待を示した。

児童生徒の英語による言語活動の状況

 5月18日に公表された文科省の2021年度英語教育実施状況調査によると、学習指導要領が求めている英語のコミュニケーション能力を育成する言語活動について、授業の半分以上で行っていると回答した学級数の割合は、小学校92.0%、中学校71.3%、高校50.3%と学校段階が上がるほど小さくなっていることが分かった=グラフ参照。コロナ禍の影響で前回よりも中学校で7.7ポイント、高校で3.8ポイント低下した。

 この結果について、末松文科相は「学校段階が上がるにつれて、児童生徒の英語による言語活動が低調になっている。授業中の半分以上の時間で言語活動を行っている学級の割合は、高校では、がたっと下がって50.3%になってしまう。(英語による)コミュニケーション能力を高めなければいけないけれども、なかなか高まっていない、ということがよく分かる数字だと思う」と指摘。特に高校段階で英語によるコミュニケーション能力の育成に課題があるとの見方を示した。

 学校段階が上がるとともに、英語の言語活動が低調になってくる背景について、学校関係者や英語教育の有識者にヒアリングを行った内容を紹介した。まず「新型コロナによる臨時休校などで授業時数が減少する中、教科書を終わらせることに授業時間を費やしたこと」と指摘。次に「(学校段階が上がり)学習内容や言語の難易度が上がると、生徒にとって英語で授業を受けることが大変難しくなってくる。その分、(教員にとっては)英語で授業を進めることが非常に難易度が高くなってしまう」と述べ、結果として英語で授業を行う言語活動が減ってしまう背景を説明した。その上で、「特に高校の普通科では、正しい語彙(ごい)や文法、構文などの正確な習得に力点が置かれている」と述べ、大学入試で正確な知識が求められていることとの関係を示唆した。

 一方、今回の調査の結果では、国際的な語学力基準「CEFR」のA1レベル(英検3級)相当以上の英語力を持つ中学3年生の割合は47.0%、A2レベル(英検準2級)相当以上の高校3年生は46.1%だった。第3期教育振興基本計画に盛り込まれている政府目標の50%を達成した自治体は、中学3年生が20都県・政令市、高校3年生が8都県で、自治体間の差が一段と鮮明になっている。

英語の授業での言語活動について見解を述べる末松文科相

 こうした結果について、末松文科相は「今回の調査からは、授業中に生徒が英語を使って活動する言語活動の時間の長さ、教師の英語力といった要因が、生徒の英語力の向上と関連していることが分かってきた」と指摘。自治体間の差が目立つことについては、「自治体別の結果をみると、中学校や高校でも言語活動をしっかり行っている教育委員会も、多数見受けられた。(自治体間に)かなり開きがあることには、懸念を持っている。好事例を全国に展開していくなど、各自治体における取り組みをしっかりと支援していきたい」と、改善に取り組む考えを示した。

 高校の英語の授業で言語活動が低調になっている要因として、大学入学者選抜でコミュニケーション能力よりも知識が重視されている背景があるとした高大接続改革の考え方について聞かれると、末松文科相は、大学入学共通テストにおける英語民間試験の活用と記述式問題の見送りを受け、昨年7月8日に取りまとめられた「大学入試のあり方に関する検討会議」の提言に言及し、「提言では、『読む』『書く』『聞く』『話す』の英語4技能に関して、総合的な英語力の評価については、各大学の個別選抜で推進することが重要とされている。(各大学に)委ねる部分が多い」と指摘。

 その上で、文科省の対応について「提言内容を踏まえ、各大学の個別選抜における総合的な英語力の評価に関する優れた取り組みを幅広く普及させていくために、好事例を認定、公表する準備を進めている。改革意欲のある大学を後押しできるように、基盤的な経費などの活用も含め、インセンティブの付与の方法についても検討を進めている。引き続き、高大接続改革を進めていきたい」と説明し、「一つの反省の上に立って、前進をしているので、ご理解いただきたい」と述べた。

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