特別免許状で「情報Ⅰ」の教員確保 規制改革推進会議が答申

 首相の諮問機関である政府の規制改革推進会議は5月27日、「人への投資」と「経済成長」を実現する規制改革の推進を掲げた答申を取りまとめた。重点分野として①医療・介護・感染症対策②スタートアップ・イノベーション③「人」への投資④地域産業活性化⑤デジタル基盤--の5つを挙げ、取り組むべき規制改革の具体的な内容として約330項目を示している。学校教育の関連では、今年度から高校でスタートした教科「情報Ⅰ」の教員確保を念頭に、教員の特別免許状制度による外部人材の活用を強く促した。特別免許状の授与を推進するため、教員の任命権者である都道府県に対し、学校種や教科ごとに授与の数値目標を含む採用計画の公表を促したほか、文科省には外部人材を活用する上で学校現場が困難に感じている点を洗い出し、制度利用の促進に必要な措置をとるよう求めた。

記者会見する政府規制改革推進会議の夏野剛議長(右)

 答申はA4判で120ページを越える分厚い内容。記者会見した夏野剛議長(近畿大情報学研究所長)は「コロナ禍でデジタル化の遅れなどが露呈し、それが各省庁の危機意識にもつながって、いろいろな項目の改革が進んだ」と、例年に比べ規制改革の成果が上がったと評価した。政府は答申を基に実施計画を策定し、来年度予算編成の指針となる「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太の方針)と合わせて、6月上旬に閣議決定する。

 答申では、330項目にわたる規制改革について、「分野横断的な取り組み」と「5つの重点分野」という、2つの軸で説明している。

 分野横断的な取り組みは、学歴などの資格要件の見直し、自治体ごとにばらつきのあるローカルルールの見直し、規制改革関連制度を巡る関係省庁の連携強化--の3つに大別される。資格要件の見直しでは、建設業や水道・下水道分野、プログラム医療機器(SaMD)開発の製造管理や品質管理の責任者などで、資格要件となる実務経験年数が学歴によって異なることを問題視して見直しを求めている。ローカルルールの見直しでは、介護分野の手続き書類やデジタルによる一元的提出、農地転用許可制度の運用などが自治体によって異なることなどを挙げ、手続き様式の標準化を促した。関係省庁の連携強化では、関係府省が参加する連絡会議を設置して、好事例の横展開や情報共有に取り組むことを盛り込んだ。

 5つの重点分野では、まず、医療・介護・感染症対策を挙げた。オンライン診療により、在宅で受診から医薬品の受け取りまで可能にしたり、医師の処方箋がなくても新型コロナウイルスの抗原検査キットを薬局で購入できるようにしたりすることを求めている。

学校現場の外部人材活用について、規制改革推進会議の答申に盛り込まれた主な項目

 教育分野の規制改革は、「人」への投資の一環として盛り込まれた。学校教育の関連では、知識や経験の豊富な社会人に授与する特別免許状を積極的に授与し、外部人材を学校現場で活用する必要性を強調。外部人材の積極活用に関連する規制改革だけで14項目を列挙している。

 具体的には、学校教育に関心を持つ社会人が特別免許状を授与される予見可能性を高めるとして、教員の任命権者である都道府県に対し、学校種ごとに授与の数値目標を含む採用計画の公表を促した。また、幅広い教科で特別免許状が発行されるように、教科ごとの特別免許状教員の採用実績の公表や計画的な教員採用も求めている。

 また、学校現場にICTの十分な知識を持って情報教育を行える教員を増やすため、教育公務員特例法(教特法)は「教育に関する職」以外との兼職兼業を禁止しているわけではなく、営利企業との兼業を含め、 任命権者である都道府県の判断によって、民間企業に勤務しながら特別免許状の授与によって教員を兼務することが可能となると指摘。パートタイムの会計年度任用職員として任用する場合には、兼職兼業の許可が必要ないことにも触れた。こうした教員の兼職兼業に関する規定を広く周知して、学校現場に優秀なICT人材の確保を促進するよう求めている。

 さらに、今年度から高校でスタートした教科「情報Ⅰ」の教員を確保するため、特別免許状制度によって外部人材の活用を進めることを重視。文科省に対し、「社会に開かれた初等中等教育を実現し、もって教育の質を高めることを目的」として、「特に情報科について、特別非常勤講師やチーム・ティーチングをはじめとする外部人材の活用状況を調査する」ことを求め、「非常勤講師を含む外部人材活用を推進する上で、学校現場が困難に感じている点を把握」して制度利用の促進に必要な措置を実施するよう促した。

 特別免許状による外部人材の活用を強く求めた狙いについて、夏野議長は「民間の人は必ずしも経済インセンティブだけで教育に参入したいと考えるわけではない。教員の資格はないけれどもコンピューターを教えたいとか、お金とは関係ない動機で教育に携わりたいという人がたくさんいる。それが大学で教職を取っていないために、学校現場になかなか立ちにくいということが、現実として今ある。そこから規制を緩和していく。将来的には教員免許そのものも、当然ながら議論していくべきだと思うが、取りあえずは民間活用の仕組みがすでにあるので、それをスケールアップし、障害を取り除いていきたい」と説明した。

 特別免許状は、教員免許状を持たずに、知識や経験豊富な社会人が教員として学校教育に関わる仕組みで、1988年に導入された。文科省によると、教員の普通免許状が年間約20万件授与される中、特別免許状の授与は年間200件程度にとどまっている。同省は昨年5月、審査基準や手続きの緩和を行ったが、目立った変化はみられていない。末松信介文科相は4月28日、全国の都道府県・政令市の教育長を集め、教員確保への取り組みを要請した際、特別免許状による社会人の登用を最初に取り上げ、「一部の都道府県教育委員会では、授与基準が整備されていないとか、また公表されていないなど、積極的な活用が行われていない。結果的に多様な経験を有する社会人の活用が進んでいるとは言い難い状況になっている」と厳しい見方を示し、各教委に特別免許状の積極活用を促している。

政府の規制改革推進会議がまとめた答申の概要

Ⅰ 分野横断的な新たな取り組み

〇資格要件の見直し (学歴等)

 学歴に応じて実務経験年数に差異を設けることの合理性に関する検討・見直し

  • 建設業における技術者
  • 水道・下水道分野の技術者
  • プログラム医療機器 (SaMD) 開発に係る製造管理および品質管理等を行う責任者

〇ローカルルールの見直し

 手続き様式の標準化、法令解釈や運用の適正化・精緻化など必要な措置を講ずる

  • 介護分野の手続き負担軽減(手続き書類の共通化、デジタルによる一元的提出)
  • 農地転用許可制度における運用のばらつき解消
  • 地方公共団体と事業者間の手続きの標準化・デジタル化

〇規制改革関連制度の連携

 規制改革関係府省庁連絡会議の設置などで連携を強化。規制改革の実効性を高める。

  • 好事例の横展開・情報共有
  • 国民・事業者にとってわかりやすく使いやすい要望受付窓口の整備
Ⅱ 5つの重点分野

①医療・介護・感染症対策

  • 在宅での受診・健康管理(医療DXの基盤整備など)
  • 医療・介護職の専門能力の最大発揮
  • 先端的な医薬品・医療機器の開発促進

②スタートアップ・イノベーション

  • スタートアップに関する規制・制度見直し
  • デジタル時代の電波・放送制度
  • ラストワンマイル配送手段の多様化および担い手拡大

③「人」への投資

  • デジタルを前提とした、イノベーションを育む学びの実現
     ・特別免許状制度などによる外部人材の活用(特に「情報」の教員確保)
     ・学修者本位で質の高い教育の実現に向けた大学設置基準の見直し
  • 養育費確保に向けた取り組み
  • 柔軟な働き方の実現

④地域産業活性化

  • 民泊推進に向けた取り組み
  • 改正漁業法の制度運用 (資源管理)
  • 農地の違反転用の課題

⑤ デジタル基盤

  • 5G等の普及拡大
  • 刑事手続きのデジタル化
  • 行政手続きデジタル化

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