共通テスト1月14・15日、不正防止策も 大学入試実施要項を通知

 来春の大学入試の基本方針を示す2023年度の大学入学者選抜実施要項がまとまり、文科省は6月3日、都道府県の教育長や各大学などに通知した。大学入学共通テストの本試験は来年1月14、15日に、追試験はコロナ禍の影響を考慮して今年と同じく2週間後の同28、29日に行う。追試験の会場数や設置場所については、出願期間となる今年秋までに決める。また、今年の共通テストでは、受験生が試験中に設問の画像をスマートフォンで外部に送信して不正に回答を得たことが発覚したため、こうした不正行為は警察に被害届を出して捜査対象となる可能性があることを受験生に事前周知したり、試験室内の巡視を実施したりするなど、大学側が取り組むべき不正防止策を盛り込んだ。

 入試方法については「各大学の判断により、多様な入試方法を工夫することが望ましい」として、一般選抜のほかに、総合型選抜(旧AO入試)、学校推薦型選抜(旧推薦入試)、専門学科・総合学科卒業生選抜、帰国生徒選抜・社会人選抜がこれまで記載されてきたが、今回、新たに「多様な背景を持った者を対象とする選抜」が加わった。

 具体的には、家庭環境、居住地域、国籍、性別などによって進学機会を得にくい入学志願者や、「リケジョ」と呼ばれる理工系分野の女子学生など大学入学者の多様性を確保するために必要と考えられる入学志願者を対象に、「入学志願者の努力のプロセス、意欲、目的意識等を重視し、評価・判定する入試方法」と説明している。こうした選抜を行う大学には、趣旨や方法について合理的な説明を行い、入学志願者の資質や能力を適切に評価するように求めている。

 試験期日については、共通テストの本試験が来年1月14、15日、追試験が同28、29日。追試験の日程は、受験生が新型コロナウイルス感染症を発症したケースなどを想定して、今春と同じく本試験の2週間後とした。追試験の会場は、今春の場合、全国47都道府県に48会場を設置したが、受験生の人数にばらつきが大きかったため、来年の追試験の会場数や設置場所については共通テストの出願(昨年の出願期間は9月27日から10月7日)が始まる今年秋までに決めて公表する。

 総合型選抜は入学願書受付を9月1日以降とし、判定結果を11月1日以降に発表する。学校推薦型選抜は入学願書受付を11月1日以降とし、判定結果を12月1日以降で一般選抜の試験期日の10日前まで(共通テストを活用する場合は前日までのなるべく早い期日)に発表する。

 大学入学者選抜のために高校が作成する調査書についても、新たな内容が加わった。新型コロナウイルス感染症の影響などで生徒がオンラインを活用した授業に参加した場合、高校の指導要録には特例の授業に参加したとして記録されることがあるが、そうした特例の授業への参加日数が調査書に記載されていた場合、この記載の有無によって入学志願者が不利になることがないよう、大学側に求めている。

 また、新型コロナウイルス対策のため、大学側が選抜方法を変更する場合、7月31日までに決定して受験生に周知することを求めた。大学側に対し、8月1日以降は個別試験を実施する教科や科目の変更、個別試験の中止など「受験者に不利益を与える変更は行わないものとする」と明記している。

 今年の共通テストでは、受験していた女子大学生が試験中に設問の画像をスマートフォンで外部に送信して不正に解答を得たことが発覚。女子大学生が偽計業務妨害容疑で書類送検される事態になった。

 こうした不正行為に対する防止策として、今回の実施要項には①不正行為に当たる行為と罰則を事前に周知する。警察に被害届を提出する場合があることを周知することも考えられる②試験会場に持ち込みや使用を禁止しているものを発見した場合の取り扱いを募集要項などで明示する。スマートフォンなど通信機器の試験会場への持ち込みを認める場合には、試験開始前に電源を切らせ、かばんに収納させるなどの説明を行う③監督者が巡視を円滑に行えるよう、受験者の座席配置など工夫する。試験時間中は試験室内の巡視を適切に行う--といった内容を新たに盛り込んだ。

 スマートフォンを使った不正行為の再発防止を巡っては、高校関係者と大学関係者が参加する審議で、試験会場での電波遮断や、受験生に対して受験資格の剝奪などペナルティーを課すことも検討されたが、結局、実施要項には盛り込まれなかった。その理由について、文科省では「電波遮断にはコストがかかる。受験生へのペナルティーについては試験結果が無効になるので、それ以上の罰則は教育上の配慮から見送られた」(高等教育局大学振興課大学入試室)と説明している。

2023年度の大学入学者選抜実施要項の主なポイント

大学入学共通テストの実施期日

本試験 2023年1月14日・15日
追試験 2023年1月28日・29日

総合型選抜の日程

願書受付 2022年9月1日以降
判定結果 2022年11月1日以降

学校推薦型選抜の日程

願書受付 2022年11月1日以降
判定結果 2022年12月1日以降で一般選抜の試験期日の10日前まで
 (共通テストを活用する場合は前日までのなるべく早い期日)

個別試験の実施教科・科目と入試方法の決定・発表

 各大学は、個別試験の実施教科・科目、入試方法(小論文の出題や面接の実施など)は2022年7月31日までに発表する。8月1日以降は受験者に不利益を与える変更は行わない。

【新たに盛り込まれた事項】

多様な背景を持った者を対象とする選抜

 家庭環境、居住地域、国籍、性別等の要因により進学機会の確保に困難があると認められる者、その他各大学において入学者の多様性を確保する観点から対象になると考える者(例えば、理工系分野における女子など)を対象として、入学志願者の努力のプロセス、意欲、目的意識などを重視し、評価・判定する入試方法。

障害等のある入学志願者への配慮についての追記

 合理的配慮の内容を決定する際には、障害のある入学志願者一人一人の個別のニーズを踏まえた建設的対話を行うこととし、事前相談の時期や方法について十分配慮しつつ、相談窓口や支援担当部署等を設置するなど事前相談体制の構築・充実に努める。

受験生の不正行為を防止するための取り組み
  1. 不正行為に該当する行為および罰則について、事前に整理をし、その内容を募集要項等において周知すること。この他、各大学の判断により、例えば、不正行為については、警察に被害届を提出する場合があることを周知することも考えられること。
  2. 受験者の所持品について、入試方法や受験者数など、大学の実情に応じて、試験場に持ち込めないもの、試験時間中に使用できないものまたは身に付けることができないもの、大学が持ち込みや使用を禁止しているものを試験時間中に発見した場合の取り扱い(不正行為として扱われる等)を募集要項等で明示しておくこと。また、試験時間中に使用することを認めていない通信機器の試験場への持ち込みを認める場合には、試験開始前に電源を切らせるとともに、大学の実情に応じて、例えば、かばんに収納させること等についても説明を行うこと。
  3. 監督者が巡視を円滑に行うことができるよう、受験者の座席の配置など試験室の設定の工夫を行うとともに、試験時間中は、静謐(せいひつ)な環境保持に十分に留意しながら、試験室内の巡視を適切に行うこと。その際、巡視時に注意を要する観点(例えば、手の位置、受験生の目線等)を踏まえ、監督者等に周知しておくこと。また、大学の実情に応じて必要な監督者や巡視を補助する人員を確保すること。
新型コロナウイルス感染症の影響と調査書の扱い

 それぞれの高等学校等や所在する地域の状況によって、調査書の記載方法が必ずしも統一されていないこと等が予想されることから、授業日数、出席停止・忌引き等の日数、オンラインを活用した特例の授業の参加日数等の記載の有無によって、特定の入学志願者を不利益に取り扱うことがないようにする。

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