教員不足「悪化している可能性」 妹尾氏・末冨氏らが調査

 末冨芳日本大学教授や学校業務改善アドバイザーの妹尾昌俊氏らが立ち上げたプロジェクト「#教員不足をなくそう緊急アクション」は6月6日、教職員や副校長・教頭らを対象に、今年度スタート時点の教員不足の実態を探ったアンケート調査の結果をまとめた。副校長・教頭を対象とした調査では、今年度の始業式時点で小学校21.0%、中学校25.4%で「教員不足は起きている」と回答。文科省が昨年度初めに行った調査よりも教員不足の事態が悪化している可能性があることが示唆された。小中学校とも約65%の副校長・教頭が「講師の質を選んでいられる状況ではない」と回答しており、調査では「教員不足の被害や悪影響は子供たちに及んでいる」と結論付けている。教員不足の解消策として、非正規教員の問題に取り組む必要を強調した。

教員不足の発生状況(教頭調査)

 調査は今年4月26日から5月22日にかけて、SNSや全国公立学校教頭会会員へのメールで呼び掛け、教職員1052件、副校長・教頭1070件、保護者85件の回答を得た。

 まず、副校長・教頭を対象に、「教員不足は起きているか」との質問を「昨年度通じて一度でも」「今年度4月の始業式」「今年度の4月28日」の3つの時点でそれぞれ聞いたところ、今年度の始業式時点では小学校21.0%、中学校25.4%で教員不足が起きていると回答。今年度の4月28日時点では小学校21.9%、中学校24.4%で始業式時点と大きな差はなかった=グラフ参照。これについて妹尾氏は記者会見の席上、「始業式時点の教員不足はその後もあまり改善できない」と指摘した。また、昨年度は小学校36.2%、中学校38.5%で教員不足が起きたと回答しており、産休や育休の取得などで年度途中から教員不足が深刻化していく状況が改めて確認された。

 今回の調査では、文科省が昨年度に初めて全国規模で実施した実態調査の結果と比べると、教員不足となっている学校の割合が大幅に上がっている。文科省調査では、昨年度の始業日時点で教員不足が発生していた学校の割合は小学校4.9%、中学校7.0%だった。

 この違いについて、妹尾氏は「今回の調査は任意で行っているので、教員不足で困っている人ほど回答しやすく、教員不足の実態が過大に出ている可能性は高い。都道府県のばらつきもある。一方、文科省の調査は、正規教員が不足していても、例えば非常勤講師が授業をカバーすれば、その学校では教員不足は起きていないとされる場合もあり、学校現場の実感よりも教員不足が少なめに出てきていると考えている」と説明。今回の調査結果はより学校現場の実感に近く、今年度は昨年度よりも教員不足が悪化している可能性があるとの見方を示した。

 教員不足によって学級担任がいなかったり頻繁に変わったりすることが児童生徒に与える影響について、副校長・教頭の実感を聞いたところ、「児童生徒が不安に思う」との答えが「大いにそう思う」「ややそう思う」の合計で、小学校98.8%、中学校95.1%。「学級になじめない子や不登校傾向の子が増える」との答えが小学校88.8%、中学校84.5%。教科等の専門性が高くない教員や学級経営力が高くない教員が授業を担当することで「授業の質が落ちる」と答えた副校長・教頭は小学校91.8%、中学校94.9%に上った。また、講師の質についての実感を聞いたところ、「講師の質を選んでいられる状況ではない」との答えが小学校64.0%、中学校65.6%を占めた。

 こうした教員不足が児童生徒に与える影響について、調査結果では「本来、きめ細かな指導・支援などに充てられていた教員が担任を代行している。少人数学級や特別支援・ケアにしわ寄せがあり、不登校傾向のある子供へのケアなども後退している」「校長、教頭、教務主任らが担任を代行している。忙しい先生に子供は悩みを打ち明けるのか」「中高では、専門外の先生に教わることに。授業が一時ストップするケースもある」「65%の教頭が講師の質を選んでいられない、と回答。だれでも教員になれる時代なのか」と、問題点を指摘した。

 妹尾氏は「教員不足が子供たちに与える影響は、想定していたよりもかなり広がっている可能性がある。教員不足は、かつては一部の学校であっただけだが、今では本当にどこの学校でも起こりうる話になっている。子供たちはかなり我慢しているのではないか。教員に相談しにくいとか、不登校気味の子供への影響とか、あるいは専門外の教員に教わらざるを得ないとか。子供たちの声をもっと丁寧にくみ取っていかないといけない問題だと思う」と述べた。

教員不足への取り組みを説明する末冨芳氏(右)、妹尾昌俊氏(中央)ら

 末冨氏は、教員不足が起きる原因について、「教員需要の増加に対して、教員免許保有者の供給が追い付かず、教員のなり手も足りず、需給バランスが崩れていることが大きな問題。これまでは臨時的任用教員を雇用の調整弁にしてきたが、小学校を中心に臨時的任用教員も年度初めの4月時点でゼロになっている」と説明。

 その対策について「各政党の国会議員や、文科省、自治体とも真摯(しんし)な意見交換をしてきた。義務標準法で定める教員定数について、正規教員をしっかり確保しないといけない。臨時的任用教員を頼みにするのではもたないことがはっきりしてきた。(正規教員の定数を複数の臨時的任用教員や非常勤講師で分けあう)『定数崩し』には、できれば上限を設定してほしい。臨時的任用教員を雇用の調整弁にするなら、待遇改善や正規採用につながる道を用意する必要がある」と、非正規教員の問題に取り組むことが重要との見方を強調した。

 さらに、教員の任命権者である自治体に課題があるとして「教育委員会が正規教員を確保しようとしても、知事や市区町村長、財務担当を含めた首長部局、地方議会などの応援がないと改善できない問題だと見えてきた。財務省や総務省にも応援してもらい、各地の教育長や教育委員会が教員不足の解消に動きやすい環境を作っていきたい」と、今後の取り組みを説明。特別支援学級の増加への対応、部活動の地域移行を含めた学校の働き方改革などを合わせて進めていく必要があるとの見方を示した。

あなたへのお薦め

 
特集