君もトレイルブレイザーになろう DXを考える探究型授業

 ITによって人々の生活や社会を大きく変革させるDX(デジタルトランスフォーメーション)について学ぶ探究型の授業がこのほど、東京都目黒区にある自由ヶ丘学園高等学校(田中道久校長、生徒558人)で行われた。企業と連携して新しい授業を提案するNPO法人の企業教育研究会と、顧客管理アプリなどを手掛けるIT企業のセールスフォース・ジャパンが教材を開発。生徒らはITで課題を解決する「トレイルブレイザー部」の新入部員になりきって、与えられたミッションにグループで挑んだ。

「トレイルブレイザー部」に持ち込まれた課題を聞く生徒ら

 同社では、ビジネスパートナーも含めて、これまでにない新しいことや社会課題の解決に対してチャレンジする人たちを「トレイルブレイザー」と呼び、ビジネスにおけるキーパーソンとして重要視している。ここからコンセプトを得て開発された今回の授業は、架空の高校にある、ITで課題を解決する部活動「トレイルブレイザー部」に入部し、ミッションに取り組むというロールプレーイング形式で行われ、同高フロンティアコースの2年生の生徒が4時間にわたって体験した。

 1週目では、地元の道の駅でイベントを企画・運営している地域ボランティア部の部長が「トレイルブレイザー部」にやってきて、イベントの集客や情報共有などで課題が生じていると相談。生徒らはその動画を見た上で、道の駅や地域ボランティア部に関する資料を読み込み、課題をどう改善したらいいかをグループで検討した。生徒が各自で使用している端末では、付箋アプリ上に課題解決フレームワークが用意され、グループごとに解決に役立ちそうなデジタルツールが載っている「ITカード」の中から課題に対して効果的なものを選び、解決策を共有。グループごとに発表を行った。

 その上で、セールスフォース・ジャパンの社員から、今回提案された解決策はITを使っているものの、あくまで改善レベルにとどまっているものであり、これまでにない新しい価値をもたらすDXの段階には至っていないことが説明され、次回はさらに進んだ改革案を考えてもらうことを提示して、この日の授業は終了した。

 翌週に行われた後半の授業では、DXの意味を振り返った後、今度は道の駅の職員が「トレイルブレイザー部」を訪れ、10代~30代の人たちの利用を増やすための解決策を依頼。生徒は、先週と同じ方法を使いながらも、今度はこれまでの道の駅の在り方を覆すようなアイデアを練ることになった。

 各グループのプレゼンテーションでは、世界的に有名なコーヒーショップとタイアップして、その道の駅でしか買うことのできない地場産品を使った商品の提供や、ロボットを遠隔操作して家にいながら道の駅で買い物や体験を楽しめる仕組みなど、斬新な提案が相次いだ。

グループワークでセールスフォース・ジャパンの社員にアドバイスをもらう生徒ら

 授業を受けた生徒は「ビジネスを身近に感じたことがなかったが、社会の課題を根本から見直したり、自分のアイデアを大事にしたりすることが重要だと分かった。将来は起業してみたいと思っているが、DXになるような一味も二味も違ったビジネスで社会に貢献していきたい」と話した。また、別の生徒は「話し合いの場面が多く、いろいろな意見が聞けて考えが深まったし、自分たちの出したアイデアに対して、セールスフォース・ジャパンの人からさらによくなるアドバイスをもらえたのはうれしかった。みんなで考えを出し合って社会をよくしていくという、仕事やビジネスに対するイメージが変わった」と振り返っていた。

 講師としてDXの事例を生徒に紹介したり、助言をしたりしたセールスフォース・ジャパンの東山勇介さんは「高校生は柔軟な発想ができ、改善策だけでなく、誰も思い付かないような改革案を出すこともできる。『ビジネスで世界を本気で変えたい』と考えてもらえるきっかけになれば」と期待を寄せる。

 同高では、この授業の後に、実際に学校が抱えている課題について、生徒がITを使った解決策を考える活動を予定しているという。

 授業を開発した企業教育研究会の竹内正樹事務局長は「社会貢献活動にも熱心なセールスフォース・ジャパンと何か授業ができないかと一緒に話し合っていくうちに、同社が大事にしている『トレイルブレイザー』の存在と『総合的な探究の時間』の目的がうまくマッチすると気付いた。この授業はオンラインで提供することも想定されているので、ITで地域が抱えている課題の解決を考えたいといった地方の高校などにも広めていけたら」と力を込める。

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