「こども家庭庁」設置法案、参院内閣委で可決 15日成立へ

 参院内閣委員会は6月14日、子供施策の司令塔となる政府提出の「こども家庭庁」設置法案を、自民・公明と国民民主の賛成多数で可決した。岸田内閣の重要政策の一つで、子供に関係する施策をこども家庭庁に一元化することで、子供子育て支援を強力に推進する体制を整えることが目的。また、子供の人権を保障するため与党が提出していたこども基本法案も、与野党の賛成多数で可決された。両法案にはそれぞれ施策の着実な実施を求める附帯決議が採択された。両法案とも15日の参院本会議で可決、成立する見込み。

 こども家庭庁は法案が成立すると内閣府の外局として、2023年4月に設置される。これまで内閣府や厚労省などに分かれていた子供施策を一つにまとめ、縦割り行政を排することになる。ただし幼稚園や義務教育などの教育分野は文科省の所管として残され、幼保の一元化は見送られた。

参院内閣委で答弁する岸田首相(参議院インターネット審議中継より)

 採決を前に岸田文雄首相出席のもと審議が行われた。柴田巧議員(日本維新の会)から子供関連予算の財源について問われた岸田首相は「こども家庭庁発足後に改めて子供施策において何が必要なのかをしっかりと体系的に取りまとめた上で、企業を含めて社会全体で予算をどうしていくのか議論する。その積み上げによって予算倍増を目指していく」とこれまでの衆参での審議と同様の答弁を繰り返した。

 また今月7日に閣議決定した「骨太の方針2022」において子供関連予算について明記しなかったことを指摘されると、「こども家庭庁で必要な子供施策を体系的に整理して、来年の骨太の方針には倍増への道筋について明確に示していきたいと考えている」と述べた。

 質疑の後に採決が行われ、こども家庭庁設置法案は自民・公明、国民民主の賛成多数で可決された。同法案に対しては10項目の附帯決議が採択された。子供の教育に関してこども家庭庁と文科省との緊密な連携の確保を図ること、いじめや不登校への対応、児童虐待防止対策などの子供施策は複数の府省庁が関わることから、こども家庭庁は子供施策の司令塔として積極的に関与し、子供の最善の利益の実現を図ること、こども家庭審議会はメンバーの選定および運営の公平性、透明性を確保して実効性のある施策の実現に取り組むことなどを求めている。

 一方のこども基本法案は、全ての子供について、「個人として尊重され、基本的人権が保障されるとともに、差別的取扱いを受けることがないようにする」「適切に養育され、生活を保障される」「年齢および発達の程度に応じ、自己に直接関係する全ての事項に関して意見を表明する機会、多様な社会的活動に参画する機会が確保される」「意見の尊重、最善の利益が優先して考慮される」などと規定されている。

 同法案は採決の結果、自民、公明、立憲民主、国民民主、日本維新の会などの賛成多数で可決。採択された15項目の附帯決議では、いじめ、不登校、自殺、虐待など子供を取り巻く状況が深刻化していることを踏まえ、関係機関と連携した包括的な支援による全ての子供の生存と安全、教育を受ける権利の保障、オンライン教育やフリースクールにおける学習活動など、多様な学びの在り方を含めた教育を受ける機会の確保に万全を期すこと、予算・人員を十分に確保し、全ての子供の成長の支援に万全を期すこと、教育を受ける機会が等しく与えられるよう義務教育のほか幼児教育、高等学校教育、大学教育など、教育の全課程について必要な負担軽減と教育体制の充実に取り組むことなどを求めている。

こども家庭庁設置法案及びこども家庭庁設置法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案に対する附帯決議の内容

政府は、本法の施行にあたり、次の事項について適切な措置を講ずるべきである。

  1. 子供施策の実施にあたっては、関係府省庁、地方公共団体等の連携及び人材の育成確保に万全を期すこと。特に子供の教育に関しては、子供施策に関する総合調整機能を担うこども家庭庁と、教育行政を司る文部科学省との緊密な連携の確保を図ること。
  2. 生活困窮家庭の子供の学習、生活支援、いじめや不登校への対応、児童虐待防止対策等の子供施策はこども家庭庁を設置後においても複数の府省庁が関わることから、こども家庭庁は子供施策の司令塔として、企画立案、施行、評価及び改善の各段階を通じて、積極的に関与し、子供の最善の利益実現を図ること、その際、必要に応じて、関係府省庁との共同プロジェクトを展開するなど、組織の枠組みにとらわれない施策の実施に努めること、また、こども家庭庁がその役割を十分に果たせるよう、しっかりとした人員体制の構築を図ること。
  3. こども家庭庁の所掌事務を掌理する内閣府特命担当大臣は、内閣府設置法第12条の規定による、関係行政機関の長に対する勧告等の権限を適切に行使すること。
  4. こども家庭審議会は、メンバーの選定及び運営の公平性、透明性を確保するとともに、子供を取り巻く諸課題に迅速に対処するために必要な課題の把握、検証を不断に行い、関係府省庁、地方公共団体、教育機関その他の関係機関などに対する実効性のある施策の実現に取り組むこと。
  5. 子供施策の検討にあたっては、子供や若者の意見を把握するために、特定の手段によることなく多様な手法を検討活用するとともに、子供や若者が意見を表明しやすい環境整備に向けて地方公共団体、教育機関その他の関係機関などと緊密に連携すること、また子供の意見形成を促進するために、子供の年齢および発達の程度を考慮し、子供が理解しやすく、かつアクセスしやすい多様な方法で十分な情報提供を行うこと。
  6. 子供の年齢及び発達の程度に応じ、子供の意見を尊重し、その最善の利益を優先して考慮するための方針を早期に具体化し、その実施にあたっては関係府省庁に対し、その趣旨を徹底するとともに実効性の確保に向けて恒常的な連携を図ること。
  7. 政府は、子供に関するデータや統計について国際比較の観点も含めさらなる充実を図ること。
  8. 我が国の家庭関係社会支出が諸外国と比べて低水準となっているとの指摘を踏まえ、子供政策については子供の視点に立って必要な政策を取りまとめた上でその充実を図り、十分な予算確保のための方策及びそのための安定財源の確保の検討に早期に着手すること。
  9. こども家庭庁設置法の施行後5年を目途として行われる検討にあたっては、文部科学省が所掌する事務のうち、初等中等教育等に関する事務及び同法第4条第1項に規定する事務を含む子供施策の総合的な推進を図るための行政組織の連携など、その在り方について検討し、その結果に基づき必要な措置を講ずること。
  10. 9の検討を行うにあたっては、特に子供の権利の擁護に関する施策の実施の状況についても十分に勘案すること。

こども基本法案に対する附帯決議の内容

政府は本法の施行にあたり、次の事項について適切な措置を講ずるべきである。

  1. 子供施策の実施にあたっては、日本国憲法及び児童の権利に関する条約の理念に則り、子供の最善の利益が図られ、その人権が保障され、及び社会全体で子供の成長を支援する社会の実現を目指すこと、また、社会全体で子供の成長を支援する社会の実現を担保するための方策について検討した上で、必要な措置を講ずること。
  2. 子供施策の実施にあたっては、いじめ、不登校、自殺、虐待等子供を取り巻く状況が深刻化していることを踏まえ、関係機関、団体等と連携した包括的な支援等によるすべての子供の生存と安全、教育を受ける権利等の保証、オンライン教育や、フリースクールにおける学習活動など多様な学びのあり方を含めた教育を受ける機会の確保に万全を期すこと、また、教育及び子供の福祉にかかる施策のより一層の連携確保を図ること。
  3. 子供施策を実施するための予算及び人員を十分に確保し、すべての子供の成長の支援に万全を期すこと、また教育を受ける機会が等しく与えられるよう、義務教育のほか、幼児教育、高等学校教育、大学教育など教育の全課程について必要な負担軽減及び教育体制の充実に取り組むこと。
  4. 子供施策の実施を中心に担うのは地方公共団体であることにかんがみ、地方公共団体におけるさらなる子供施策の拡充に向けて財政上の措置を含めた支援について検討を加え、その結果に基づき必要な措置を講ずるとともに、好事例の積極的な横展開に向けた情報共有、周知等に取り組むこと。
  5. 子供施策の推進は、すべての子供について子供の年齢及び発達の程度に応じて、子供の意見を聞く機会及び子供が自ら意見を述べることができる機会を確保し、その意見を十分に尊重することを旨として行うこと。
  6. 本法に定める子供施策の基本理念に則り施策を実施するものの視点のみならず子供が保護者や社会の支えを受けながら自立した個人として自己を確立していく主体であることを踏まえ、真に子供の視点に立った子供施策を実施すること。
  7. 子供施策の実施にあたっては、希望するものが安心して子供を生み育てることができる社会の実現を図るため、結婚、妊娠、出産、育児及び子供の成長に関する支援が切れ目なく行われるよう十分配慮すること、また、これまで支援が届きにくかった中学校卒業後または高等学校中退後に就学も就業もしていない子供や若者のほか、性的少数者の当事者である子供や若者、同性カップルに養育されている子供や若者等についても、誰一人取り残さず抜け落ちることのない支援の実施に努めること。
  8. 長引くコロナ禍の影響等により子育て世帯の生活が厳しさを増していることを踏まえ、子育て世帯への支援の拡充策について検討した上で必要な措置を講ずること。
  9. 児童手当制度については、子供子育て支援に関する施策の実施状況等を踏まえ、少子化の進展への対処に寄与する観点から、児童の数等に応じた児童手当の効果的な支給及びその財源のあり方、ならびに児童手当の支給要件のあり方について検討を加え、その結果に基づき必要な措置を講ずること。
  10. 保護者の経済的な状況など、生まれ育った環境によって子供の成長が左右されることのないよう、子供の貧困率の低減に取り組むこと。
  11. 保育士や幼稚園教諭をはじめ子育て支援の現場で働く職員のさらなる処遇改善について検討を行うこと、また、子育て支援の現場で働く職員数の不足等により必要な支援が停滞することがないよう新たな人材を確保するための方策を検討するとともに、職員の業務負担の軽減に努めること。
  12. 子供に関する支援に資する情報の共有を促進するための情報通信技術の活用その他の必要な措置について、個人情報の適正な取り扱いを確保するにあたっては、個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)の義務規定を遵守するだけでなく、その基本理念を踏まえ、経済協力開発機構(OECD)閣僚理事会勧告も参考としつつ、子供及び父母その他保護者の私生活の自由と基本的人権に配慮するものとすること。
  13. 子供に関するデータや統計の活用にあたっては、国際比較の観点も含め、政府全体として収集すべきデータを精査し、各府省庁が連携してデータを収集分析する環境を構築するとともに、収集したデータに基づいて、各種施策の評価及び改善策の検討を行い、その内容を必要に応じ国会に報告すること。
  14. 日本国内の子供並びに子供に関わる大人、および子供を養育中の保護者を含むあらゆる大人に対する児童の権利に関する条約の趣旨や内容等についての普及啓発にその認知度を把握しつつ取り組むこと。
  15. 基本理念に則った子供施策の一層の推進のために必要な方策については、必要に応じ、本法の施行後5年を待つことなく速やかに検討を加え、その結果に基づき、法制上の措置その他の必要な措置を講ずること。

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