「こども家庭庁」来年4月発足へ 財源や幼保一元化の課題残る

 岸田政権の主要政策の一つ、子供施策の司令塔となる「こども家庭庁」設置法とこども基本法が6月15日に開かれた参院本会議で可決、成立した。これで内閣府と厚労省の所管する子供関連部門が統合されて、一元的に子供子育て支援を担うこども家庭庁が来年4月に発足することになった。少子化、児童虐待、いじめ、貧困など子供全般にわたるさまざまな課題解決をはじめとして、「子供真ん中」社会の実現に大きな期待が寄せられているが、国会の審議で主要テーマとなった「幼保一元化」「財源」「子供コミッショナー」など課題は残された。出生数が約81万人(2021年)と過去最低を記録し、「国難」とされるなか、こども家庭庁がどのような船出を見せるのか注目される。

こども家庭庁設置法案が可決された参院本会議(参議院インターネット審議中継から)

 可決後、野田聖子こども政策担当相は「今回、子供真ん中という社会変革をしていくための司令塔、いわば器ができた。今後重要なのは、こども家庭庁発足に向けて、こども基本法に掲げられた基本理念を具体的な施策に落とし込み、こども政策推進会議やこども家庭審議会を活用して、政府を挙げて子供政策を強力に推進していくことだ。私自身も先頭に立ち、万全の準備を進めていきたい」と述べた。

 こども家庭庁は首相直轄で内閣府の外局に位置付けられる。内閣府の子ども・子育て本部や厚労省の子ども家庭局などが統合され、発足当初は外部人材を含めて300人規模となることが予定されている。専任の大臣を置き、子供に関する事項について各省庁に対する勧告権を持たせた。

 こども家庭庁は、子供や子育て当事者の視点に立った政策立案をはじめ、全ての子供の健やかな成長や誰一人取り残さない支援などを理念とし、▽成育部門▽支援部門▽企画立案・総合調整部門――の3部門で構成される予定。成育部門は、妊娠期から子育て期までの包括的な保育施策とともに、就学前の子供の育ちの保障や子供の居場所作りなど、支援部門は子供の貧困対策や一人親家庭の支援、障害児支援など、企画立案・総合調整部門は、子供施策全体の調整をはじめ地方やNPO団体などとの連携、情報発信や広報などを担当することとしている。

 文科省が所管する幼稚園や小中などの初等中等教育といった教育分野はこども家庭庁に移管されず、「幼保一元化」は見送られた。この点については「縦割りが残る」という指摘が国会の審議においてもされた。岸田文雄首相は衆院本会議(4月19日)で「教育など学びに関する行政については、児童福祉など育ちにかかる行政と相互に関連する側面があるものの、それぞれの目的を追求する中で専門性を高めつつ、相互にしっかり調整し、密接に連携する方が、政府全体としての政策の充実、質の向上になる」とその理由を述べているが、子供を巡る問題については教育に限らず対応の遅れが時に深刻な事態を引き起こすこともあり、文科省とこども家庭庁との連携の実が問われることになる。

 充実した子供施策には十分な予算配分が不可欠。岸田首相は今国会のはじめから「将来的な子供関連予算の倍増」を明言してきた。このことについて岸田首相は再三、衆参の審議において具体的な裏付けと実現時期の明示を求められ、「財源については社会全体でどのように負担していくのかという観点から、幅広く検討していくことが重要であり、子供施策に関する予算を体系的に取りまとめ、その上で将来的に予算の倍増を目指していきたい」と述べるにとどめ、具体的な実現への道筋を明らかにしなかった。しかし、6月14日の参院内閣委の答弁で、こども家庭庁発足後に必要な子供施策を体系的に整理した上で、「来年の骨太の方針には倍増への道筋について明確に示していきたいと考えている」と述べており、来年の同方針が注目される。

こども家庭庁設置法案成立後に会見する野田こども政策担当相

 また一連の審議で最も与野党で意見が割れたのが、行政から独立して子供施策を調査、勧告する第三者機関「子供コミッショナー」の設置問題だった。国連の「子どもの権利条約」を批准した多くの国では同趣旨の組織が設置されており、明文化された子どもの権利保障とセットとなっている。国内では一部の地方自治体において独自に設置されているところもあるが、国レベルではまだなく、結局法案に盛り込まれることがなかった。野田担当相は4月22日の衆院内閣委でこの問題に関連し、「こども家庭審議会などで子供や子育て当事者、有識者の意見も聞くことにより、公平性、透明性を確保しつつ、子供の最善の利益を実現できるよう取り組む」としたが、同審議会は行政から離れた第三者的な視点に欠けている。ただしこども家庭庁設置法、こども基本法ともに施行後5年をめどに施策の実施状況を検討するとしており、こども家庭庁発足後の第三者機関の設置については余地を残している。

 岸田首相は15日夜の会見で「昨年の出生数は過去最小の81万人となり、少子化対策は喫緊の課題だ。子供や子育て世代の視点に立った政策を強力に推進し、子供真ん中社会を実現しなければ日本の未来を描くことはできない。来年4月のこども家庭庁発足を待つことなく、直ちに設立準備室を立ち上げ、子供政策の充実に向けて取り組んでいく」と述べ、子供施策の推進を強調した。

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