「給特法は伝家の宝刀」 柴山元文科相ら、働き方改革を議論

 “伝家の宝刀”である給特法をいつ抜くか――。4月から給特法の抜本的な改善を求めてネット署名を行っている「給特法のこれからを考える有志の会」は6月15日夜、オンラインでシンポジウムを開き、元文科相の柴山昌彦衆院議員(自民)をはじめ、公明党、立憲民主党の国会議員が給特法改正や教員の働き方改革について討論した。柴山議員は給特法を「伝家の宝刀あるいは懐刀」と例え、教員の働き方改革の促進や勤務実態調査の結果を踏まえ、他の公務員の労働に関する法制度との関連性なども考慮しつつ、「いつ抜くのかというところで、私はこれが必ずテーブルに載るタイミングはあるのだろうと思っている」と強調した。

自民、公明、立憲民主の各党の国会議員が登壇したシンポジウム(YouTubeで取材)

 有志の会が4月末にネット署名サイトの「change.org」上で開始した署名活動は6月15日時点で4万筆を超える賛同が寄せられ、タレントの田村淳さんが賛同人に加わるなど、教育界以外からも注目が集まっている。文科省では今年度中に教員の勤務実態調査を実施し、その結果を踏まえ国会で給特法の見直しに向けた議論が行われる見通しであることから、シンポジウムでは参院選を前に、これらの問題に対する各党のスタンスを問うことを目的に開催された。自民党からは柴山議員、公明党からは中野洋昌衆院議員、立憲民主党からは水岡俊一参院議員がそれぞれ出席し、有志の会メンバーとディスカッションを行った。

 当時、文科相として中教審の学校の働き方改革の答申を受け取った立場でもある柴山議員は、2019年12月の給特法改正で教員の勤務時間の上限を定める指針が法的に位置付けられたことや、時間外勤務が月45時間以下の教員の割合が増加していることなどを踏まえ、「改革の成果は一歩一歩ではあるが出ていると思う。給特法というのは、他の地方公務員との関係もあるので、これを改正する前に、まずは徹底した働き方改革など、教員でなければできない仕事に業務を特化させる。それと『自主残業』の仕組みを改めて、いわゆる超勤4項目の整理の仕方を見直すというようなこと、あるいは外部人材の登用や、他の学校でやっているような、例えば留守番電話の導入、スクールサポートスタッフの導入、そういうことを着実にこれからも進めていくということだと思う」と強調。自民党の参院選の公約では給特法そのものには直接触れていないものの、校務の情報化や教育のデジタル化、人々のウェルビーイングの増加、部活動の地域移行などで、教員の負担を軽減していく方針だと説明した。

 公明党で文部科学部会副部会長を務める中野議員は、これまで同党が取り組んできた少人数学級の推進や教職員定数の改善などを踏まえ、「財源をどうするかという非常に大きな問題もあるので、党としてはしっかりそういう方向を目指していきたいというのを訴えている」と紹介。「実際に残業を減らしていくためには、教員の働き方改革で、実際にやる業務を減らしていかないことには、減らせ減らせと言っても減っていかないという現実がある。与党でしっかりとやってきたのがチーム学校の推進で、学校の先生以外のいろいろなサポートスタッフを充実させていって、先生は教育に集中できるようにという方向でぜひ進めたいと思っている」とも述べ、参院選のマニフェストでは給特法も含めて教員の処遇の在り方についてしっかり検討を進めると明記していることに触れた。

 教員経験もある水岡議員は、教員不足の問題について言及。「私が考えるには、これから教職に就こうと考えている方が(子どもとして)学校にいたときに、その学校現場で前に立っていた先生方がどんな顔をしていたのだろうかということだ。子どもたちの目の前で生き生きとして輝いている先生方がたくさんいたら、『学校の先生っていいな』『学校の先生になりたいな』と、たくさんの子どもが思ったと思う。ところがこの間の流れを見ていると、私の教員時代を含めてかなり緊張の毎日、もう仕事づくめの日常の中で、子どもたちの前で優しい顔をして楽しい授業ができていたのかというと、不安な部分がある。そういった、子どもたちに『先生になりたい』という思いを起こさせにくかったことが、今の教員不足にすごくつながっているんじゃないかと思う」と指摘した。その上で、立憲民主党の参院選の公約では、給特法の廃止を含めて教職員の処遇改善を行うとともに、部活動の地域社会への移行など抜本的な見直しを行い、教職員の長時間労働を是正すると書かれている点をアピールした。

 こうした各党のスタンスを踏まえ、有志の会の署名呼び掛け人である内田良名古屋大学教授は、教員へのアンケート調査で、書類上の時間外勤務の書き換えを求められたことがある教員や、勤務時間を正確に申告しない教員が一定割合確認できたと問題提起。「現状は勤務時間管理がただの数字でしかなく、簡単に書き換えてしまうし、指示をする上司も罪の意識がない。定時外の業務が労働であると法的に位置付けることを、絶対にやらなければいけないと思う」と投げ掛けた。

 それに対し、中野議員は「定時外で働かざるを得ないくらい、今の学校の先生にいろいろな事務負担であったり、やらないといけない業務であったり、相当なものがのしかかっているのが現場の実態。われわれ国会議員も皆さんから意見を聞かなければいけないし、そこの働き方改革をしっかり進めていくことを合わせてやっていかないと、制度だけの議論をしていても、なかなか実態が追い付いていかないと個人的に思っている。そういう意味では、働き方改革と処遇の制度の在り方は、合わせて議論をしていかなければいけない」と答えた。

 一方で水岡議員は、もし教員の超過勤務に対して正当な賃金を支払うと、現状で約9000億円が必要になるという文科省の試算に触れ、「逆に言うと、労働基準法や国際人権規約に照らしてみても、ちゃんと払わなければいけない賃金を払っていないという全く違法的なことになるので、それをまずは是正することを求めていく。その中で、『でもそうなるとお金がかかるよね』『お金がないから、いろいろな方法を考えなければね』と、本筋から外れた話をするのは大きな間違いであって、まずもって超過勤務は支払い対象にすることをやってから、物事の整理をしていくのがいいのではないかと考えている」と述べた。

 柴山議員は「上限時間の潜脱、すり抜けを行うために虚偽の実態報告をしているというところが、まさに極めて大きな問題だと思っている。勤務時間の正確な把握がまさに働き方改革を進めていく上でスタートラインなわけなので、まず、そもそもこういった改革ができているのか、できていないのかを前提として、例えばタイムカードやICTの活用で客観的に勤務時間の実態把握が必要だし、これを徹底しなければいけない」と指摘。教員が自宅などに業務を持ち帰ることも外形的な把握が困難になるので、教育委員会で実態把握をして縮減に取り組んでいくべきだとした。

 また、同じく有志の会の署名呼び掛け人である嶋﨑量弁護士から、今年度に文科省が実施する教員の勤務実態調査を踏まえ、前回の法改正の附帯決議にあるように、給特法の改正を議論する意向があるのかと尋ねられると、柴山議員は「まずは、こういったどうしようもない実態をしっかり改めていく。今はまだ指針という形だが、これをどのようにしてしっかりと長時間労働を現場で実効性のある形で削減していくかということをきちんとやった上で、懐刀というか伝家の宝刀である給特法をどうするかということを、必ず検討していかなければいけない。そういう意味では、伝家の宝刀あるいは懐刀をいつ抜くのかというところで、私はこれが必ずテーブルに載るタイミングはあるのだろうと思っている」と、将来的な給特法改正の必要性を明言。その一方で、他の公務員の労働に関する法体系や私立学校の働き方など、考慮しなければいけない要素もあると付け加えた。

 これに対して水岡議員は「やはりこれ(教員の働き方)は異常な状態。そして労基法に基づかないような不正常な状態のいろいろな事柄があるとすれば、どこからか正していくという議論が必要だ。それが教育の現場から正していけるのだとすれば、他の公務員の職場にもすごくいい影響になるんじゃないのか」と話し、与野党でのさらなる議論を呼び掛けた。

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