ローマ字は訓令式かヘボン式か 国語課題小委で検討へ

 今後10年ほどの国語・日本語の検討事項を整理している文化庁の文化審議会国語分科会国語課題小委員会は6月17日、第51回会合をオンラインで開き、常用漢字表とローマ字のつづり方を取り上げ、検討の必要性を協議した。特にローマ字のつづり方について、学校教育で行われている訓令式と社会に浸透しているヘボン式について、早急に検討すべき課題であるとの認識で委員の見解が一致し、来年度までに方針を出すことを決めた。

ローマ字のつづりの問題を早急に検討することを決めた国語課題小委員会(YouTubeから取材)

 国語課題小委員会が3月に示した「国語に関するコミュニケーション上の課題」では、ローマ字のつづり方や外来語の表記、常用漢字表、情報化社会における言語コミュニケーション、国際社会における日本語など、国語を巡る今日的な課題を示し、これらの事項の中から一つを選び、来年度までに報告を取りまとめるとしている。

 そのキックオフとなったこの日の会合では、常用漢字表とローマ字のつづり方について、さらに検討を重ねた。このうち、ローマ字のつづり方を巡っては、例えば「し」を「si」と表記する訓令式と、「shi」と表記するヘボン式の2種類が主に使われているが、学校教育では、1954年に国語をアルファベットで書き表すことを目的にした内閣告示に従い、第1表に示された訓令式のローマ字つづりを中心に学習し、ヘボン式は副次的に扱っている。しかし、社会生活の中ではヘボン式が用いられることが多く、小学生で学び始める外国語のつづりや情報機器でローマ字入力をする機会が増えていることなどから、これらの使い分けで混乱が生じているといった指摘も出ていた。

 出席した委員間での意見交換では、言語学者の滝浦真人放送大学教授が「世の中ではヘボン式が多く使われているが、学術的な論文を書くときにもローマ字表記をどうするかは困っている。ガイドラインを作っている大学もあり、その場合は訓令式に工夫を加えることが多い。ヘボン式は英語を母語とする人には分かりやすいが、それ以外の人には分かりにくい。訓令式をベースに考えていってもいいと思う」と口火を切った。

 これに対し、社会言語学などが専門の西條美紀東京工業大学環境・社会理工学院融合理工学系教授は「国語施策は社会に混乱をもたらさないことが第一義的で、長い時間をかけて議論している。滝浦委員の言うように、言語学的にどう表すのが妥当かということもあるが、社会ですでに流布しているわけだから、どのようにするかは慎重に考えないといけない。学校では訓令式とヘボン式を両方教えていることもあれば、先生によって教え方が違う可能性もある。どのような生活場面でヘボン式と訓令式が多いかをサンプリング調査して、統計的に表すことがまず必要だ」と、実態調査を踏まえて検討する必要性を指摘した。

 また、川瀬眞由美テレビ朝日アスク取締役は「地名も人名もすでに混乱が起きている。何種類もあり不便につながっているので、日本語の音をどうアルファベットで表記するのかは、ある程度意見を集約して関係省庁や部局に提言してもいいのではないか」と提案した。

 これらの意見を踏まえ、ローマ字のつづり方について、今期の国語課題小委員会で早急に検討すべき課題として取り上げることを主査の沖森卓也二松学舎大学特別招聘教授・立教大学名誉教授が提案し、了承された。今後、国語小委員会でローマ字のつづり方について関係者へのヒアリングや調査などを実施し、来年度中には何らかの成果物をまとめる見通し。

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