教員の働き方、学びの支援、子育て財源… 参院選各党公約出そろう

 参議院選挙が6月22日公示、7月10日投開票で実施される。長引くコロナ禍とロシアによる先の見えないウクライナ侵攻による不安感、世界的な経済ダメージの中で行われる今回の選挙。国内では昨年の出生数が81万人と過去最少となり、急がれる少子化対策とともに、生まれた子供の誰もが格差なく育ち、等しく教育を受けられる権利を保障する環境の整備など課題解決が迫られている。今回の選挙戦を前に出そろった各政党の公約では、教育、子供・子育てなどに関して、さまざまな施策が盛り込まれた。各党の公約をテーマ別に整理した。

参院選は6月22日公示、7月10日投開票で実施される

 先の国会でも論戦のテーマとなった子供・子育て予算の財源については、与野党ともに増額すべきという方向では一致している。立憲民主は積極的な積み上げを行い、結果として対GDP比3%台を達成し、社会全体で子供の育ちを支えていくとし、維新の会も大規模な財源を確保することを目指し、予算枠を財務省の取りまとめから独立させてGDP の一定割合を必ず子供のために配分するなどと主張。国民民主は「教育国債」を創設して毎年5兆円発行し、教育・科学技術予算を年間10兆円規模に倍増させることを盛り込んでいる。これに対して、自民は岸田文雄首相が先の国会で主張したように、将来的な予算の倍増を目指すとしている。選挙戦でも大きな論争となりそうだ。

 高等教育の拡充に向けた、大学生・大学院生の奨学金の減免や制度改善に向けた取り組みも共通。自民は、多子世帯の中間所得層の修学支援を拡充し、「出世払い」制度 (日本版 HECS)を大学院へ先行導入するとともに、安定的な財源を確保して学部生への対象拡大を目指すとした。公明も家庭の経済的事情に関わらず、希望すれば誰もが大学等へ進学できるよう、給付型奨学金と授業料等減免(修学支援新制度)を特に負担軽減の必要がある多子世帯や理工農系の学生などをはじめとして、中間所得世帯まで拡充するとしている。

 立憲民主も国公立大学の授業料を無償化し、私立大学生や専門学校生に対しても国公立大学と同額程度の負担軽減を実施、奨学金制度の拡充で学生の生活費についても支援すると訴える。国民民主も大学や大学院等の高等教育の授業料を減免するとともに、返済不要の給付型奨学金を中所得世帯にも拡大、卒業生の奨学金債務も減免する。共産も大学・専門学校の学費を半額にし、将来的には無償、入学金は廃止、奨学金は欧米のように返済不要の給付制を中心にして拡充する。維新の会は、義務教育のほか、幼児教育、高校、大学など、教育の全過程について完全無償化を憲法上の原則として定めることとしている。

 高校までの教育関係費については、公明が小中学校における学用品費や修学旅行費の負担を軽減するため、低所得世帯に対して支給している就学援助の支給額を増額するとともに、中間所得世帯まで段階的に対象拡大。高校における授業料以外の教育費負担を軽減するため、低所得世帯に対して支給している高校生等奨学給付金の支給額を増額するとともに、中間所得世帯まで段階的に対象拡大を目指すとした。立憲民主も高校の授業料無償化については所得制限を撤廃、公立小中学校の給食を無償化。児童手当は、高校卒業年次まで月額1万5000円に延長・増額するとともに、所得制限を撤廃し、全ての子どもに支給する。児童扶養手当は子ども1人当たり月額1万円を加算し、ふたり親低所得世帯にも月額1万円を支給する。

 維新の会は小中学校給食を無償化し、食育を推進するとともに、家計への経済的負担および教職員への徴収・管理業務負担の軽減を図る。国民民主は義務教育を3歳からとし、高校までの教育を完全無償化する。学校給食や教材費、修学旅行費を無償化し、家庭の教育負担をゼロにして、塾代などの民間教育費を特定支出控除の対象とする「教育費控除」を創設。児童手当や奨学金など子育て・教育支援策から所得制限を撤廃させ、親の年収にかかわらず児童手当を18歳まで一律で月額1万5000円に拡充し、子供3人で計1000万円を支援する。共産も学校給食費や教材費など義務教育にかかる費用を無料にするほか、私立高校の無償化を拡充することとした。

 教員の働き方改革も公約に取り入れられた。公明が教員業務支援員、部活動指導員、ICT支援員など支援スタッフの活用によるチーム学校の取り組みを進めるとし、教員の勤務時間の削減に向けて、業務の精選、部活動の地域単位の活動への移行、学校納入金の公会計化などを推進するとしたほか、時間外勤務手当を支給しない代わりに教職調整額を支給するとしている「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法(給特法)」を含め、教員の処遇の在り方等について検討を進めるとした。

 立憲民主も教職員定数の充実や、スタッフ職の増員、非常勤教職員の環境改善を推進し、教員が子供としっかりと向き合う時間を確保するとともに、教員不足に対応するとしたほか、給特法の廃止を含めて教職員の処遇改善を行うとともに、部活動については地域社会への移行など抜本的な見直しを行い、教職員の長時間労働を是正する。

参院選に向けて各党の公約が出そろった

 維新の会も校務分掌や部活動の見直し、校務の情報化の推進などを通じて教員の負担軽減を図り、教育に専念できる体制を整える。給特法については廃止し、教員に対し労働基準法を全面的に適用する法整備を進め、教員の長時間労働の解消を進める。共産も教員の長時間労働を解決するため、授業数に見合った教員の定数増、残業代支給制度の確立、部活動顧問の強制禁止などを進めるとしている。

 また、こども基本法でうたわれた子供の人権尊重のための第三者機関の設置も争点になりそうだ。この問題については法案審議の過程で野党から設置に向けて再三要求があったにも関わらず、原案通りとなった経緯がある。立憲民主、共産のほか、従来設置を主張していた公明党も今回の公約に盛り込んでいることが注目される。

各党が発表した教育、子供・子育て関係の公約(抜粋)

自民党

 人への投資を促進し、学び直しを通じたキャリアアップや、大学と企業の共同講座を支援するとともに、兼業・副業・起業を促進。わが国の成長に貢献する高度専門人材の育成に向け、大学・高等専門学校等の再編促進や機能強化を進めるための基金の設置、「GIGAスクール構想」に基づく、教育分野のデジタル化を強力に進める。

 コロナ禍で少子化が加速している深刻な事態を踏まえ、大胆な児童手当や育休給付の拡充、保育等子育て支援、放課後児童クラブの拡充など総合的な少子化対策について、安定的な財源を確保し抜本的な強化を図る。

 「こども家庭庁」設置を踏まえ、将来的には予算の倍増を目指しつつ、子供や子育て世代の視点に立った「こども政策」を強力に推進し、全ての子供の健やかな成長を社会全体で支える「こどもまんなか」社会を実現する。

 高等教育における、多子世帯等の中間所得層の修学支援を拡充し「出世払い」制度 (日本版 HECS)を大学院へ先行導入するとともに、安定的な財源を確保し学部生等への対象拡大を目指す。いじめ加害児童生徒に対する新たな懲戒処分制度の創設などを通じて、いじめ対策を一層充実させる。

 小中高生の自殺が過去最多の水準にあり、コロナ禍で女性の自殺が増加していることを踏まえ、自殺総合対策を強化し、「誰も自殺に追い込まれることのない社会」を目指す

公明党

 「こども家庭庁」の創設や「こども基本法」の制定で、子どもを権利の主体として位置付け、子どもの幸せを最優先する社会を目指すとともに、子どもの声を代弁し、子ども政策に関して独立した立場で調査、勧告等を行う機関「こどもコミッショナー」の設置を目指す。

 幼児教育無償化の対象を段階的に拡大するとともに、待機児童対策や保育の質の向上に取り組む。無償化の実施に併せて重要となる幼児教育の質向上を図るため、幼稚園教諭・保育士等の処遇改善、宿舎借り上げ支援をはじめとする人材確保の取り組み、配置基準の見直しを進める。

 希望する誰もが学べる社会を作るため無利子・有利子奨学金に関わらず、すでに卒業し返還中の人も含め、ライフイベントに応じて柔軟に返還ができる制度へ拡充する。減額返還の年収要件を緩和し、返還の長期化により増加する利子は国が負担するなど、奨学金の返済の負担軽減を推進。家庭の経済的事情に関わらず、希望すれば誰もが大学等へ進学できるよう、給付型奨学金と授業料等減免(修学支援新制度)を特に負担軽減の必要がある多子世帯や理工農系の学生などをはじめとして、中間所得世帯まで拡充する。

 小中学校における学用品費や修学旅行費等の負担を軽減するため、低所得世帯に対して支給している就学援助の支給額を増額するとともに、中間所得世帯まで段階的に対象拡大。

 高校における授業料以外の教育費負担を軽減するため、低所得世帯に対して支給している高校生等奨学給付金の支給額を増額するとともに、中間所得世帯まで段階的に対象拡大を目指す。

 どの地域に住んでいても安心して子どもが医療を受けられるように、高校3年生までの無償化を目指して、子どもの医療費助成を拡大する。

 児童相談所や市区町村の体制強化、子ども食堂・子ども宅食等の民間団体による子どもの見守り体制の強化、児童福祉司等の専門性向上・処遇改善、裁判官等司法関係者との連携や研修の実施、司法の専門性の強化を前提とした一時保護の適正手続の確保、リスク評価をサポートするAI活用、子どもの権利擁護、入所施設徴収問題の解決、児童相談所等におけるICTの活用、児童相談所と市区町村における情報共有システムの活用促進に取り組む。

 個別最適な学びを通じて、一人一人の創造性を育むGIGAスクールの充実を推進する。感染症や自然災害時等の学びの継続や、不登校や病気療養の子どもたち、特別支援教育が必要な子どもたち、外国人児童生徒などの学びを確保し、誰一人取り残されることのない教育の実現に向けてオンライン授業の環境整備やICTの活用を推進する。

 学校の働き方改革を実現するため、教員業務支援員、部活動指導員、ICT支援員など支援スタッフの活用等によるチーム学校の取り組みを進める。教員の勤務時間の削減に向けて、業務の精選、部活動の地域単位の活動への移行、学校納入金の公会計化などを推進する。

 教職の魅力向上を図るため、教員の勤務実態調査の結果を踏まえ、時間外勤務手当を支給しない代わりに教職調整額を支給するとしている「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法(給特法)」を含め、教員の処遇の在り方等について検討を進める。

 教員による子どもへのわいせつ行為を根絶するため、「教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する法律」に基づいて、処分された教員のデータベース登録や被害に遭った子どもの相談・ケア体制整備など、必要な取り組みを進める。

立憲民主党

 国公立大学の授業料を無償化し、 私立大学生や専門学校生に対しても国公立大学と同額程度の負担軽減を実施。奨学金制度の拡充で学生の生活費等についても支援する。

 高校の授業料無償化については、所得制限を撤廃、公立小中学校の給食を無償化。児童手当は、高校卒業年次まで月額1万5000円に延長・増額するとともに、所得制限を撤廃し、全ての子どもに支給する。児童扶養手当は子ども1人当たり月額1万円を加算し、ふたり親低所得世帯にも月額1万円を支給する。

 子ども・子育て関連予算については積極的な積み上げを行い、結果として対GDP比3%台 (現状の倍増)を達成し、社会全体で子どもの育ちを支えていく。

 いじめや虐待など子どもを巡る問題が起きた場合に、子どもの権利を最優先に擁護し、客観的な第三者として調査権限と提言機能を備えた「子どもコミッショナー」を設置する。不登校、引きこもり、いじめ、虐待の問題への取り組みを強化する。

 市町村立の小規模高校の設立や、フリースクールへの支援拡充、夜間中学の設置促進、オンライン学習等の積極的辺学校との連化を推進。ヤングケアラーを早期に発見し、本人および家庭に対して教育や医療など横断的な支援を実現する法律を整備する。

 教職員定数の充実や、スタッフ職の増員、非常勤教職員の環境改善を推進し、教員が子どもとしっかりと向き合う時間を確保するとともに、教員不足に対応する。

 給特法の廃止を含めて教職員の処遇改善を行うとともに、部活動については地域社会への移行など抜本的な見直しを行い、 教職員の長時間労働を是正する。

日本維新の会

 家庭の経済状況にかかわらず、等しく質の高い教育を受けることができるよう、義務教育のほか、幼児教育、高校、大学など、教育の全過程について完全無償化を憲法上の原則として定め、給食の無償化と大学改革を併せて進めながら国に関連法の立法と恒久的な予算措置を義務付ける。

 校務分掌や部活動の見直し、校務の情報化の推進などを通じて教員の負担軽減を図り、教育に専念できる体制を整える。時間外勤務手当を支給しない代わりに教職調整額を支給するとしている給特法については廃止し、教員に対し労働基準法を全面的に適用する法整備を進め、教員の長時間労働の解消を進める。

 デジタル教科書については完全無償化するとともに、個人情報に配慮しながらデジタル教科書を使用した生徒のビッグデータを活用し、最新テクノロジーを駆使した効率的・効果的な学習支援を行う。

 保育士や教員から子どもへのわいせつ事件が後を絶たない事態を重く受け止め、免許を再交付しないことを可能とする立法に続き、過去の性犯罪経歴の照会や無罪証明書の発行ができる「日本版 DBS」を創設する。

 学校給食法が定める給食の教育目的に鑑み、教育無償化の観点から小中学校給食を無償化し、食育を推進するとともに、家計への経済的負担および教職員への徴収・管理業務負担の軽減を図る。

 幼児教育保育が「幼稚園・保育所・認定こども園」に分断され、それぞれ異なる省庁が所管している現状を改め、幼保一元化を実現する。

 子どものために使われる大規模な財源を確保することを目指し、予算枠を財務省の取りまとめから独立させ、GDP の一定割合を必ず子どものために配分するなどと定めた上で、その財源を着実に活用できる在り方を検討する。

 所得税法を改正し、学資金だけでなく保育にかかる費用について原則非課税とし、地方自治体からの子育て費用の助成を促進し、直接給付を重視する方針への転換を図る。

 ヤングケアラーの実態調査・把握を行うとともに、学業や社交性の獲得において子どもたちに負の影響が出ないよう地方自治体における具体的な支援体制の整備を法制化する。

国民民主党

 0~2歳の幼児教育・保育無償化の所得制限を撤廃し、義務教育を3歳からとし、高校までの教育を完全無償化する。学校給食や教材費、修学旅行費を無償化し、家庭の教育負担をゼロにして、塾代等の民間教育費を特定支出控除の対象とする「教育費控除」を創設する。

 大学や大学院等の高等教育の授業料を減免するとともに、返済不要の給付型奨学金を中所得世帯にも拡大し、卒業生の奨学金債務も減免する。

 児童手当や奨学金など子育て・教育支援策から所得制限を撤廃させ、子どもを等しく支援するため、親の年収にかかわらず、 児童手当を18歳まで一律で月額1万5000円に拡充。 子ども3人で計1000万円を支援する。

 部活動の費用等も勘案し、児童手当のさらなる拡充やバウチャー制度(教育クーポン)を検討。

 教育や人づくりに対する支出は、将来の成長や税収増につながる投資的経費であり、財政法を改正して、これらの支出を公債発行対象経費とする「教育国債」を創設。毎年5兆円発行し、教育・科学技術予算を年間10兆円規模に倍増させる。

 障害、 ヤングケアラー、 不登校、引きこもり、外国ルーツ、性的マイノリティーなどの子どもが互いを理解し、共に学べる 「インクルーシブ教育」の環境を作る。

共産党

 大学・専門学校の学費を半額にし、将来的には無償、入学金は廃止、奨学金は欧米のように返済不要の給付制を中心にして拡充する。「義務教育の無償」をうたった憲法26条を踏まえ、国の制度として、学校給食費や教材費など義務教育にかかる費用を無料にする。

 0歳からの保育料の軽減、私立高校の無償化を拡充、子ども手当を社会全体で子どもを支える原則から全員に支給し、拡充する。国の制度として18歳まで医療費の窓口負担を無料。

 教員の異常な長時間労働を解決するため、授業数に見合った教員の定数増、残業代支給制度の確立、部活動顧問の強制禁止などを進める。公的保育所を増やすとともに、保育士の配置基準と給与を引き上げ、保育の質を向上させ、児童相談所、児童養護施設などの体制を拡充する。

 就学援助と児童扶養手当などの現金給付、手厚いサービス給付の双方を抜本的に拡充し、子どもの貧困問題の解決を目指す。過度な競争主義、管理主義の教育を改め、国連の勧告にもとづく改善を進める。政府から独立した子どもの権利救済機関(こどもコミッショナー)を設立する。子どもの権利条約の子どもと大人への普及・啓蒙を本格的に進める。

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