部活動の地域移行「地方には受け皿ない」 教員や議員ら議論

 全国一律ではなく、地域の実情に合わせて進めるべきではないか━━。来年度からの3年間を改革集中期間として、休日の運動部活動の地域移行が全国で進められる。こうした動きを受け、高知県土佐町議の鈴木大裕氏が呼び掛け人となり、教員や地方議員、地域スポーツクラブ関係者、保護者などが参加する「高知県の教職員の働き方改革と学校部活動の地域移行を考える会」が発足し、6月25日に3回目の会合がハイブリッド形式で開催された。地方における部活動の地域移行に関する課題として、「地方は受け皿が少ない」「家庭間や地域間格差が生まれるのではないか」「主に休日に行われる大会運営はどうするのかを考えるべき」といった意見が出された。

 公立中学校における休日の運動部活動の地域移行に関する検討会議は6月6日に提言をまとめ、来年度から3年間を改革集中期間として休日の運動部活動の地域移行が全国で進められることになった。また、同様に文化部活動の地域移行に関しても議論が進められている。

 この日の会合では部活動の地域移行は可能なのか、現状の課題について意見が交わされた。ソフトテニス部の顧問をしているという高知市内の中学校教員は「ソフトテニスは部活動でやっている子は多いものの、一般的にはメジャーなスポーツではないため、外部指導員を確保するのはかなり難しい。競技そのものが消える可能性もあるのではないか」と懸念を示した。

 また、これまで数校でハンドボール部の指導をしてきたという元外部指導員は「学校以外の場所を確保するとなると、どの子にとってもそこが近いとは限らない。そうなると、子どもたちには放課後に行く時間も、手段もない。そんなことが地方において全てクリアになるとは思えない」と話し、「部活動は教員と子どもたちとの触れ合いであり、情熱のキャッチボール。教員の働き方改革は、仕事を減らすのではなく、教員の数を増やすことで実現するべきではないか」と投げ掛けた。

 高知県中体連関係者で高知市の中学校教員は「先日の中体連の会議においても、生徒が主語になっていない改革は成功しないと意見してきた。地方では、休日の部活動を地域移行するとなると、受け皿が非常に少ない。全国一律ではなく、地域の実態に合わせてやらせてほしい」と訴えるとともに、「全ての子どもたちが『この競技をやってみたい』という時に、それをかなえられるような環境をつくらなければいけない」と強調した。

意見をまとめる高知県土佐町の鈴木大裕議員

 土佐町議の鈴木氏は、部活動を地域移行することでさまざまな格差が生じると問題提起。「まず、家庭の格差。お金を出せる家庭と出せない家庭がある。そして地域格差。地域に受け皿がないところは、学校がやらざるを得なくなる。教員がやりたくないと言った時には、その部活動は廃部になるだろう。それは保護者と教員間の分断につながりかねない」と話した。また、「部活動の地域移行と言えば聞こえはいいが、私は学校部活動の民営化だと思っている」と警鐘を鳴らした。

 「部活動には子どもの居場所という側面もある」といった意見も複数人から上がった。部活動があるから学校に行くという生徒も、部活動に救われたという生徒も多く、鈴木氏は「部活動がなくなれば、今以上に不登校が増えたり、生徒指導案件も増えたりするのではないか」と懸念を示した。

 こうした意見に対して、ある教員は「部活動をしたい子も、そうじゃない子もいる。教員にも、部活動の顧問をしたくて教員になった人もいれば、そうじゃない人もいる。特に小規模校だと、教員は部活動の顧問をしたくなくても、断ることができない。それなのに、現状では教員の評価において、部活動の指導が重要視されていることも問題ではないか」と意見を述べた。

 さらには、生徒にトラブルがあった時の対処や、主に休日に行われる大会についてもさまざまな意見が出された。「子どもたちにトラブルがあった時に、外部指導者だけでは対処しきれないのではないか。そうなると、結局、教員が行って対処することになる」といった懸念や、「各大会の運営はこれまで教員が担ってきた。それを外部指導者がやるとなると、どのくらい費用がかかるのか、試算しないと大変なことになる」「土日の大会の準備は金曜日にすることが多い。準備だけ教員がして、大会は外部指導者がするなんてことは無理だろう。結局、教員の仕事が増えるだけでは」といった疑問も出された。

 また、この日は千葉県内の中学校で吹奏楽部の顧問を務める教員らも参加。文化部の地域移行についても議論が進められている中、「吹奏楽部は楽器をどうするのか、場所をどうするのかなど、課題は山積だ。場所は学校を使うとなっても、だれが学校の鍵を開け閉めするのか」と疑問を投げ掛けた。これまで熱心に吹奏楽部の指導をしてきた教員は「部活動は学校の指導の延長上。部活動が地域移行すれば、子どもと関わる場が減ってしまう。学校生活も薄っぺらいものになってしまうのではないか」と話した。

 同会の次回会合は7月17日にオンラインで行われ、8月18日には学校部活動の地域移行を考える全国の会を高知県土佐町で開催予定。全国の議会に向けての意見書や、政府に対する提言をまとめるとしている。

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