長時間労働で適応障害に 原告の高校教員が勝訴、大阪地裁

 長時間労働で適応障害を発症したとして、大阪府立高校の現役の教員が府に慰謝料などの損害賠償を求めていた裁判で、大阪地裁は6月28日、原告側の主張をほぼ全面的に認め、請求した約230万円の支払いを府に命じる判決を言い渡した。適応障害を発症する前に教員は再三にわたって当時の校長に業務負担の軽減を訴えていたが、適切な勤務管理を怠ったとして、校長の安全配慮義務違反と適応障害発症との因果関係を認めた。

 裁判で府を訴えたのは、現在も府立高校で教員として勤務し、世界史を教えている西本武史さんで、実名を公表した上で裁判に臨んでいた。

 西本さんは体調不良で休職することになる前の2017年夏ごろ、勤務校ではクラス担任に加え、ラグビー部の顧問やオーストラリアで行われる生徒の語学研修の引率などを担当していた。判決では、当時の西本さんの業務量は「質的にも加重な業務に従事していた」とし、語学研修の引率で出国する前の7月の時点で適応障害を発症していたと認定。発症直前1カ月の時間外労働は約112時間、発症前6カ月間の月平均は約98時間に上るなど、「原告の心身健康を害する程度の強度の心理的負荷があったと評価するのが相当」とした。

 適応障害を発症する直前には、校長に対して「心身ともにボロボロです」「体調が悪いです。いっぱいいっぱいです」などとメールや面談で繰り返し訴えていたが、校長は退勤時間が遅くなっている西本さんに対して体調を気遣ったり、仕事に優先順位を付けて分担したりするように声を掛ける程度であり、「注意義務を尽くしていたとは言えない」と指摘。西本さんの業務負担の解消に有効な配慮があったと評価することはできないとして、安全配慮義務違反を認めた。

 この判決を受けて吉村洋文大阪府知事は「判決内容などについてはまだ十分承知しておりませんが、本府にとって厳しいものと受け止めております。今後の対応については、判決内容を精査した上で教育委員会と検討してまいります」との談話を発表した。

 裁判の代理人を務めた労災事件が専門の松丸正弁護士は「公立学校の教員が実名を出して行政に対して損害賠償の裁判を起こしたのはレアケースだ。給特法によって、時間外の労働は教員の自主的・自発的なものであり、校長は管理責任を負わないのが学校現場の常識になっているということが問題の根底にある。そこに一石を投じたのではないか。自主的・自発的なものだから指揮命令下にないという理屈で、教員の心身の健康が損ねられている。給特法の矛盾や、教員が疲弊しないで働ける持続可能な学校の在り方を考える一つのきっかけになれば」と話す。

あなたへのお薦め

 
特集