大阪府は控訴せず、吉村知事が表明 教員側勝訴の地裁判決受け

大阪府は控訴せず、吉村知事が表明 教員側勝訴の地裁判決受け
iStock.com/megaflopp
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 過重労働で適応障害になったとして、大阪府立高校の教員が府に損害賠償を求めた裁判で、一審の大阪地裁が原告の教員側の主張を認め、勝訴の判決を言い渡したのを受けて、大阪府の吉村洋文知事は6月29日、記者会見の場で控訴しない考えを表明した。吉村知事は「判決を素直に受け止めて、教育委員会としては裁判で争うというよりは教員の過重労働、過重負担をいかに軽減すべきかというところに注力をしてもらいたい」と述べ、知事自身としても、部活動の問題に早急に取り組んでいくことに意欲を示した。

 6月28日に出た判決では、原告の府立高校の教員が2017年夏ごろ、クラス担任、ラグビー部の顧問、オーストラリアでの生徒の語学研修の引率などの多岐にわたる業務を担当しており、語学研修の引率に行く前の段階で適応障害を発症していたと認定。校長の安全配慮義務違反を認め、適応障害発症との因果関係があるとし、府に対して約230万円の支払いを命じた。

 翌日の記者会見の終盤で吉村知事は「教員が適応障害となり、大阪府が敗訴したという判決について一言コメントさせていただきたい」と自ら切り出し、「僕自身は控訴すべきではないと思っているし、控訴はしない。今後は、この判決を素直に受け止めて、教育委員会としては裁判で争うというよりは教員の過重労働、過重負担をいかに軽減すべきかというところに注力をしてもらいたい」と、代理人弁護士や教育委員会とも相談の上で、府として控訴しない方針を決めたことを明らかにした。

 また、原告の教員に対しては「大阪府政における最終責任者は知事だと思っている。今回の原告の教員には申し訳ないという思いだ。謝罪をしたい。そう思う」と、府側の非を認め、教員の過重労働の問題はこの事案に限らず存在しているとの認識を示した。

 さらに吉村知事は、大阪市長時代に部活動の問題に取り組んだ経験を踏まえ、「特に僕は部活動だと思っているが、高校における部活動の在り方、ここについて、教育委員会としては正面から取り組んでもらいたいと思う。教員の皆さんが、しっかり教えることに注力できるような体制にするということは、教員の働き方だけではなくて、生徒にも関わってくることだと思っている」と話した。

 その上で、スポーツ庁で中学校における休日の部活動の地域移行の提言が出たことについて尋ねられると「われわれの管轄する府立高校をどうしていくべきなのかということになる。提言は中学校をベースに、そして土日をベースにしたものだと思うが、基本的な考え方や方向性は一緒だ」と強調。「国が動くとなれば具体的な方策と財源を付けてということになると思うが、中学から始まるのではないかと思っている。大阪府でやるとすれば高校になるから、大阪府の独自施策としてどこまで考えていくことができるのかということを、考えていかなければいけない。国の議論がどんどん進んで府立高校や平日にも範囲が広がるという選択肢を待つというのもあるとは思うが、やはりそこを待っているといつになるか分からないので、僕が知事である時点でやっていこうと判断した」と、任期中に取り組む考えを示した。

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