教員研修の指針・ガイドライン最終案 「記録」負担に配慮を強調

 来年4月からスタートする新たな教員研修の運用を定めたガイドラインについて、文科省は6月30日、新たに跋(ばつ)文を加えた最終案をまとめ、教員研修の指針案とともにパブリックコメントの募集を開始した。追記された「終わりに」では、研修履歴の記録方法を「できる限り教員個人に負担のかからないような効率的な記録方法とすること」や、この仕組みに実効性を持たせるために「学校における働き方改革を強力に進めていく必要があること」を強調。新しい教員研修の仕組みについて、「教員が自らの強みや得意分野の再認識と自信につながり、学び続け、成長する教員の『次なる学びのエンジン』としていくことが期待される」とメッセージを込め、各教育委員会と学校現場に積極的な取り組みを求めた。

 指針は、教育公務員特例法(教特法)22条に基づき、校長と教員の資質向上に関する基本的な事項をまとめた。そうした資質向上を実現するために導入されるのが新たな教員研修制度で、その具体的な運用を明示するのがガイドラインという位置付けとなっている。正式名称は、指針が「公立の小学校等の校長及び教員としての資質の向上に関する指標の策定に関する指針」、ガイドラインが「研修履歴を活用した対話に基づく受講奨励に関するガイドライン」となる。

 指針では、校長について、基本的な役割を「学校経営方針の提示」「組織づくり」「学校外とのコミュニケーション」の3つに整理。求められる資質能力として、これまでも求められてきた教育者としての資質やマネジメント能力に加えて、データや情報を分析して共有する「アセスメント能力」や学校内外の関係者と連携して学校の教育力を最大化する「ファシリテーション能力」を新たに加えた。

 教員の資質能力については、常に学び続ける姿勢や良好な人間関係の構築など「教職に必要な素養」、学習者中心の授業を創造する「学習指導」、子供一人一人の良さや可能性を伸ばす「生徒指導」に加え、新たに「特別な配慮や支援を必要とする子供への対応」と「ICTや情報・教育データの利活用」を盛り込み、5つの柱に再整理した。

 こうした資質向上を実現するために、校長や教員には「誇りを持って主体的に研修に打ち込むこと」が求められると説明。研修記録を活用しながら、校長などの管理職が務める指導助言者と教員が対話を重ね、「必要な学びを俯瞰的かつ客観的に理解することが重要である」と強調した。同時に、研修成果の確認方法を明確に設定することを求めており、具体的に「考えられる」方法として、「テストの実施やレポート・実践報告書の作成」や「学んだ理論や得られた課題意識、他者との対話を手掛かりにした自らの実践内容の省察」などと例示している。

 ガイドラインの最終案で追加された「終わりに」は、新しい教員研修制度の狙いや留意点を改めて5項目に整理した内容で、実際に研修制度を運用する学校現場や各教委に向けたメッセージという性格を持っている。
 
 第1には、「新たな教員の学びの姿」で大切なのは、「一人一人の教員が、自らの専門職性を高めていく営みであると自覚しながら、誇りを持って主体的に研修に打ち込むこと」だと指摘。教員の学ぶ姿がそのまま「児童生徒の学びのロールモデルとなる」と鼓舞している。

 2つ目の項目では、新たな研修制度の中核となる研修履歴の記録が、多忙な毎日を送っている多くの教員にとって、新たな負担にならないように配慮することを求めた。「研修履歴を記録・管理すること自体を目的化しない意識を十分に持ち、新たな学びに向かうための『手段』として研修履歴を活用することが重要」とした上で、「研修レポートなど教員個人から報告を求めるものは、真に必要なものに厳選し、簡素化を図る。研修履歴の記録の方法も、できる限り教員個人に負担のかからないような効率的な記録方法とすることも重要」と明記した。

 第3の項目では、研修成果の確認方法を明確に設定することを求め、「テストの実施」などを具体的に「考えられる」方法として挙げたことなどを踏まえ、「本ガイドラインで『考えられる』と表記した各種内容については、地域や学校の実情に応じて、いかにその効果を最大化させるかという点を常に意識する必要がある」と説明。それぞれの実情を踏まえた柔軟な制度設計を促した。

 4つ目は、新しい教員研修制度が実効あるものになっていくためには、人員の確保を含めた指導体制の充実や、教員が研修に必要な時間を確保する学校の働き方改革の推進が必要であることを強調。「特に教科指導に係る指導助言などを含む効果的な対話に基づく受講奨励のためには、指導主事や主幹教諭の配置充実も含め、国と地方が一丸となって、指導体制の充実を図る」「学校における働き方改革を強力に進めていく必要があることについても、十分に留意しなければならない」と説明している。

 最後には、新しい教員研修制度を「研修履歴を活用した対話に基づく受講奨励の仕組み」と説明し、この仕組みを「教員が自らの強みや得意分野の再認識と自信につながり、学び続け、成長する教員の『次なる学びのエンジン』としていくことが期待される」と、文科省が学校現場や各教委にメッセージを発するかたちで結んでいる。

 これに先立ち、指針とガイドラインの案を協議した6月27日の中教審合同会議では、複数の委員から「教員へのリスペクトを込め、ガイドラインの最後に『これが重要』というまとめが必要」(荒瀬克己教職員支援機構理事長)、「主体性や学びの自由度を重視したもので、管理を厳格化するものではないというメッセージをしっかり出してほしい」(貞廣斎子千葉大教育学部教授)といった指摘が続出。こうした意見に応えるため、渡邉光一郎会長(第一生命HD会長・日本経団連副会長)が跋文を追加する考えを示し、最終案の取りまとめの一任を受けていた。

新たな教員研修のガイドラインに追記された「終わりに」の主な内容

  • 「新たな教員の学びの姿」として求められているのは、一人一人の教員が、自らの専門職性を高めていく営みであると自覚しながら、誇りを持って主体的に研修に打ち込むこと。教員の個別最適な学び、協働的な学びの充実を通じた「主体的・対話的で深い学び」の実現は、児童生徒等の学びのロールモデルとなることにもつながる。
  • 研修履歴を活用した対話に基づく受講奨励の意義は、研修の管理を強化するものではなく、教員と学校管理職とが、研修履歴を活用して対話を繰り返す中で、教員が自らの研修ニーズと、自分の強みや弱み、今後伸ばすべき力や学校で果たすべき役割などを踏まえながら、必要な学びを主体的に行っていくことにある。
     このため、研修履歴を記録・管理すること自体を目的化しない意識を十分に持ち、新たな学びに向かうための「手段」として研修履歴を活用することが重要である。
     同じく記録自体を目的化しない観点から、研修レポートなど教員個人から報告を求めるものは、真に必要なものに厳選し、簡素化を図る。研修履歴の記録の方法も、できる限り教員個人に負担のかからないような効率的な記録方法とすることも重要である。
  • 特に研修履歴の記録に関し、本ガイドラインで「考えられる」と表記した各種内容については、指標や教員研修計画との関係性も考慮しつつ、地域や学校の実情に応じて、いかにその効果を最大化させるかという点を常に意識する必要がある。
  • この仕組みを実効あるものとすべく、特に教科指導に係る指導助言などを含む効果的な対話に基づく受講奨励のためには、研修推進体制の整備と同時に、指導主事や主幹教諭の配置充実も含め、国と地方が一丸となって、指導体制の充実を図るとともに、学校における働き方改革を強力に進めていく必要があることについても、十分に留意しなければならない。
  • 多様な専門性を有する質の高い教職員集団の構築に向け、多様な内容・スタイルの学びが重要視されていく中で、この研修履歴を活用した対話に基づく受講奨励の仕組みを、教員が自らの強みや得意分野の再認識と自信につながり、学び続け、成長する教員の「次なる学びのエンジン」としていくことが期待される。
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