子どもの権利と教員の働き方 児童福祉の現場からの報告

 教員志望の学生らで構成される団体「Teacher Aide」は7月2日、子どもの権利保障や福祉の視点から教員の働き方の問題を捉えるイベントをさいたま市内で開いた。埼玉県戸田市などで学童保育などを手掛ける「merry attic(メリーアティック)」でCOOを務める石原悠太さんが、全国初となる民間単独による子育て短期支援事業(ショートステイ)への挑戦から見えてきた、子どもを取り巻く福祉の課題を報告。教育法学が専門の埼玉大学の髙橋哲(さとし)准教授が、子どもの権利の保障という観点から、日本の教育政策について講義した。

児童福祉や子どもの権利の観点で教員の働き方を議論したイベント(中央が石原さん、左が髙橋准教授)

 メリーアティックでは昨年5月から、ある自治体で、さまざまな家庭の事情を踏まえて0~12歳の子どもを一時的に預かる子育て短期支援事業を始めた。石原さんによると、子育て短期事業を運営しているのは全国に800施設ほどあるが、児童養護施設が行っていることが多く、施設の定員に空きがないために利用できないといったことや、保護者の心理的なハードルが高いなどの課題があり、民間単独で子育て短期支援事業に乗り出したのは全国でも初のケースだという。

 石原さんは「ショートステイを利用しようとする保護者の多くは、本当に少しの間だけ、一泊でも一日でも子どもを預かってもらって、心や体を休めたいと思っている。レスパイトケアとして利用して、これからも子どもと幸せに暮らしたいと願う保護者ばかりだ」と強調。

 1年間で利用者は8倍に増え、月に延べ人数で100人を超える子どもを預かるなど、ニーズは高い一方で、所管する厚労省の補助金が単独運営を想定していないため、民間が参入しにくいことや、乳幼児から小学生まで、幅広い子どもを預かることから、多様な専門人材が必要なことなどを課題に挙げた。

 その上で石原さんは、預かった子どもについて学校と情報共有する際に、教員が多忙過ぎて子どもの変化に気付いていないこともあると指摘。「教員の労働環境の問題というのは、働いている教員だけの問題ではない。子どもの成長にも大いに関わっている。教員の労働環境の問題は未来への問題にもなっている」と、児童福祉の観点においても教員の働き方の改善は重要だと呼び掛けた。

 続いて、子どもの権利保障の面から日本の教員施策を分析した髙橋准教授は、国連の子どもの権利条約では、児童の養護・保護のための施設や設備、職員の数などを十分に確保する必要があると定められていることや、日本政府は子どもの権利委員会から、教員や保育士、児童養護施設の職員などの専門的ケア提供者が十分に保障されていないとして勧告を受けてきたことなどを紹介。

 「ところが、こういう勧告に対して日本政府は何をしてきたのか。子どもたちからこういう専門的ケア提供者を奪っていく政策を続けてきた。その背景にあるのが『聖域なき構造改革』と言われてきた公務員減らしにあり、これが教師の多忙化を加速させてきたと思っている」と述べ、さまざまな公務員の中で特に教員が一貫して減らされてきたことを国の統計などから裏付けるとともに、こうした状況が教員の長時間労働を深刻化させ、子どもの声を聞く余裕がない学校現場を生み出していると警鐘を鳴らした。

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