「障害は車いすではなく社会が作る」 パラスポーツ体験授業

 2019年度から2年間、調布市教育委員会の研究推進校として、障害者理解についての教育の研究を進めてきた東京都調布市立飛田給小学校で7月7日、パラアスリートを招いた出前授業「あすチャレ!スクール」が開かれた。講師を務めた2000年のシドニーパラリンピック男子車いすバスケ日本代表キャプテンの根木慎志さん(57)は5年生76人を前に「車いすに乗っていることは障害ではない。障害を作るのは社会」と話し、多様性を受け入れ、理解する重要性を訴えた。

 「あすチャレ!スクール」は日本財団パラスポーツサポートセンターが主催し、16年度から開催されている。プログラムは「デモンストレーション」「体験」「講話」の三部構成。パラスポーツのかっこよさを体感し、関心を持つことで、障害に対するイメージを転換し、理解を効果的に深める狙いがある。

競技用車いすを体験する児童

 「デモンストレーション」では、衝撃を緩和するために前方に取り付けられた「バンパー」や転倒防止用の「リアキャスター」など、普通の車いすにはない競技用車いすの特徴を根木さんが説明した後、ドリブルやレイアップシュートを披露。華麗なシュートが決まると児童から歓声が上がった。その後、児童らは競技用車いすに乗ってリレーやバスケットボールの試合を体験。慣れない車いすの操作に四苦八苦しながらも、懸命に手を動かしていた。

 最後の講話では、根木さんが「障害という言葉が生きていく中で困ることとするならば、車いすに乗っているのは障害ではない。公共の場所なのにエレベーターがないとか、点字ブロックの上に荷物を置くとか、障害は社会が作っている」と述べ、「みんなが友達になって、困ったことをみんなで解決していけば、すてきな世の中になっていく」と訴えた。

 また小学5年生の時の経験談も語った。「最後まで苦手で嫌いだった跳び箱が、友達の応援のおかげで、できなかったけれど楽しくなった」と根木さん。高校3年生で交通事故に遭い、車いす生活を余儀なくされた後も当時の経験が生きているとし、「できないことは恥ずかしいことではない。できる、できないは関係なしに、一生懸命楽しむというのが人生にとって最高にいいことと思えた。みんなにもたくさんチャレンジしてほしい」と熱弁を振るった。

 出前教室終了後、同小5年の森翔星(しょうせい)くんは「頑張る人を応援できる人になりたい」と話した。横田博美さんは「諦めずに、どんなことでもチャレンジしたい」と感銘を受けていた。

 同小では16年度から障害者理解の教育に力を入れており、総合的な学習や体育の時間を活用し、パラアスリートだけでなく、地元に住む障害者や地域の社会福祉協議会なども講師として招き、継続的に授業を展開。4年生は週2時間ある総合的な学習の時間のテーマを「障害者理解」に定め、さまざまな障害について自分たちで調べたり、ユニバーサルデザインの視点を基に町づくりについて考えたりするなど、年間約70時間行っている。今年4月に赴任した山田貴之副校長は「他者への理解が驚くほど進んでいる。いろいろな子どもたちがいる中で、それぞれが自然な関わり方ができているように感じている。」と話す。

 東京パラリンピックを契機に、パラアスリートを招いた出前教室は各地で広がっているが、同小の取り組みには根木さんも「トップパラアスリートの講演や体験会だけでは、すごい人で終わってしまう。本当の意味で理解するために、身近にいる障害者との交流は不可欠」と関心を寄せる。2学期には4年生がボディーランゲージなど、音や声を出さずコミュニケーションを行う「ダイアログ・イン・サイレンス」、6年生が義足体験などを行う予定。山中ともえ校長は「障害者理解をきっかけに、子どもたちにはいろんな立場、考え方の人が仲良く暮らせる社会を作れる人に育ってほしい」と話した。

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