「学校は唯一の癒やしの場」 元ヤングケアラー招き出前授業

 一昨年、全国で初めて「ケアラー支援条例」を制定した埼玉県の深谷市立南中学校(柴崎勇二校長、全校生徒数479人)で7月11日、元ヤングケアラーなどを招いた出前教室「ヤングケアラーサポートクラス」が行われた。1、2年生の生徒314人を前に、元ヤングケアラーの男性が「学校はケアを忘れられる唯一の癒やしの場」と当時の経験を語り、「自分が楽しいと思える瞬間や関係があることが、ヤングケアラーの支えになる」と、生徒に居心地のいい学校づくりの重要性を訴えた。

 18歳未満で病気や障害のある家族のケアを行うヤングケアラーについては、昨年厚労省と文科省が連携して行った初の実態調査で、中学生の5.7%。およそ17人に1人に上ることがわかっている。内容は食事の準備や洗濯、祖父母の介護など、多岐にわたり、ヤングケアラーのうち約1割は1日に7時間以上ケアに費やすなど、学業や交友関係への影響が懸念されている。

ヤングケアラーについて理解を深めた出前授業(右は日本ケアラー連盟堀越栄子代表理事)

 「ヤングケアラーサポートクラス」はヤングケアラーに対する理解を深め、学校での相談支援を充実させようと、埼玉県教育委員会が主催。一般社団法人日本ケアラー連盟に委託し、昨年度から行われている。

 同連盟の堀越栄子代表理事は、「ヤングケアラーは見過ごされやすい」と指摘。理由として、▽家族のことは家族でしないといけないと思っている▽障害や病気の家族を隠す▽子どもがケアしていると大人が思っていない▽ケアしている子どもの悩みを聞いてくれる場がない――。などを挙げ、「助けてと子どもたちが言える環境を大人たちが作ることが大事」と訴えた。

 その後、病気の親の世話をしていた元ヤングケアラーの男性が生徒に経験談を語った。男性は「親のことが気に掛かり、心が休まらず安眠できなかった。携帯電話やパソコンをいじったり、勉強したりする時間もないし、すごいストレス」と苦労を話し、「友達と笑ってご飯を食べたり、先生に怒られたり、普通でいられる学校はケアから離れられる唯一の癒しの場所だった」と述べた。また「障害や病気のある人をばかにしないのはもちろん、家族をケアしている中学生がいることを知ってほしい」と訴えた。

 同校1年の新井優太さんは「実際に体験した人じゃないと分からない話。すごく貴重だった」と話した。同じく1年の草川愛奈さんも「知識が増えて良かった。友達に相談してもらえる人になりたい」と実りある時間だった。柴崎校長は「生徒と教師の双方がヤングケアラーについて正しく理解することで、生徒がSOSを発信しやすい環境づくりにつながる」とした。

 埼玉県は全てのケアラーが健康で文化的な生活を営むことができる社会を実現することを目的に「ケアラー支援条例」を20年3月に全国で初めて制定。ヤングケアラーに対する支援体制や啓発などの基本事項を定めた。「ヤングケアラーサポートクラス」は来年1月まで、埼玉県内14の小中高で実施される予定。

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