日本的ウェルビーイングは「協調重視」 中教審部会

 次期教育振興基本計画の策定に向けて議論している中教審部会は7月12日、第4回会合を開き、諮問事項において重要な目標とされている「一人一人の多様な幸せであるとともに、社会全体の幸せでもあるウェルビーイング(Well-being)」をどう実現していくかについて議論を行った。会合では、内田由紀子委員(京都大学こころの未来研究センター教授・副センター長)が、日本特有の文化的価値に基づいてウェルビーイングの定義を考えることの重要性を指摘。次期計画の目標を考える上では「自分だけでなく、身近な周りの人も楽しい気持ちでいると思う」といった「協調的」な幸福感を考慮することが必要だと語った。

オンラインで行われた中教審部会(文科省YouTubeで取材)

 内田教授は、ウェルビーイングの意味はそれぞれの国・集団・地域での文化的価値につながるもので、国や地域の文化によって異なること、多様なウェルビーイングの求め方を認めることが重要だと指摘。その例として内田教授は、北米などでは個人の自由と選択、自己価値の実現と自尊心、競争などが翻って社会を豊かにするという信念(獲得的幸福感)が見られるのに対し、日本では他者とのバランスや人並み志向、回り回って自分にも幸せがやってくるという信念(協調的幸福感)があると説明した。

 そのため日本では、獲得的幸福感を測る「私の人生は、とても素晴らしい状態だ」「だいたいにおいて、私の人生は理想に近いものである」といった尺度より、協調的幸福感を測る「自分だけでなく、身近な周りの人も楽しい気持ちでいると思う」「大切な人を幸せにしていると思う」「平凡だが安定した日々を過ごしている」などの尺度がなじみやすい可能性を示唆。教育においても自己実現やスキルといった側面だけでなく、多様なつながりと協働、社会貢献力、利他性などの協調的な幸福感につながる側面も重視することが必要だとした。

 その上で、子供のウェルビーイングを構成する要素には「現在・将来・周囲のウェルビーイング」(学校生活が楽しい、大切な人を幸せにしたり楽しませたりしていると思う、自分は将来幸せに暮らしていると思う、など)の他、「自己実現と自己受容」(自分には良いところがあると思う、など)、「多様なつながりと協働・向社会性(相談できる大人がいる、先生のことが好きだ、クラスの居心地が良い、など)」、「安心・安全な環境」(通学路は安全であり、安心して学校に通える、校舎や設備が快適・清潔であり、満足しているなど)を挙げた。

 さらには子供だけでなく、教職員や関係する地域の人々などのウェルビーイングを実現することも含め、包括的に考えることが重要だと指摘。「学校の仕事が楽しい」などの主観的幸福感のほか、「教育に意欲を感じる」「子供の成長を実感する」「職場の居心地がいい」「生徒、保護者、地域との信頼関係がある」「卒業生とのつながりがある」などを、教員のウェルビーイングの構成要素として挙げた。

 内田教授は最後に、教育振興基本計画での指標を検討していく上で「ウェルビーイングの意味するところは学校や地域によって異なることから、外向きのランキングや評価ではなく、学校や地域ごとに考えること、思い込みを是正して子供や学校現場の声を聞くこと」などが重要だと結論付けた。

 これに対し、松浦良充委員(慶應義塾常任理事)は「協調的な幸福感をより重視していくことには賛成だが、教育という点では『ビーイング(在り方)』よりも『良い状態にどう持っていくか』というプロセスが重視される。例えば、不登校(で苦しんでいる状態)を、ウェルビーイングに持っていくためのプロセスをどう実現するかといった点こそ、知恵を絞っていかないといけない」とコメント。

 岩本悠委員(一般財団法人地域・教育魅力化プラットフォーム代表理事、島根県教育魅力化特命官)は「子供たちの幸せのためにも、一人一人の先生が幸せになってよいのだというメッセージが必要。教職員は自分自身を大切にすることがおざなりになって、貢献を強いられてきたということが日本の学校文化ではあった。子供も大人も、自分自身を大切にすることと他者への貢献の両方が重要なポイントだ」と話した。

 渡邉光一郎部会長(第一生命ホールディングス株式会社取締役会長、一般社団法人日本経済団体連合会副会長)は「今日の議論は、基本計画の方向性そのものを示すものだ」と評価。同部会は来月の第5回会合で、社会教育や地域とのつながり、教育と産業界の連携をテーマに、議論を継続する予定としている。

0 コメント
インラインフィードバック
すべてのコメントを見る

あなたへのお薦め

 
特集