通信制高校、指導体制の充実求める 有識者会議がまとめ素案

 通信制高校の在り方を検討する文科省の有識者会議の第9回会合が7月15日、オンラインで開かれ、今後取るべき対応策などをまとめた素案について議論した。素案では、不登校経験者など多様な生徒が通う現状を踏まえ、生徒一人一人に対して適切に対応できる指導体制を整備するため、教員配置の明確な基準を求めた。具体的には、委員の多くから「生徒80人に対して教諭等1人」とする意見があった一方で、「数字の法的な根拠を丁寧に示す必要がある」「80人は現状での数字。データを収集して見直す仕組みが必要」といった意見が出された。

 素案では、取るべき対応策として▽指導方法の在り方▽指導体制の在り方▽質保証の方策▽所轄庁の在り方――の4点を挙げた。このうち指導体制の在り方については、勤労青年を対象の中心としていた時代とは異なり、不登校経験者など多様な生徒が在籍している現状から、生徒に寄り添った、組織的な学習支援体制の整備を求めた。

 そのため、「実施校における通信制の課程に係る副校長、教頭、主幹教諭、指導教諭及び教諭の数は、5人以上とし、かつ、教育上支障がないものとする」とされている現行制度を見直し、クラス担任制のように、生徒一人一人の状況をしっかりと見て適切な対応を取ることができるように指導体制を整える必要があり、同時に、生徒数に応じた教員の人数に明確な基準を設定していく必要があるとした。

 具体的な教員1人当たりの生徒数については、「公立高等学校の適正配置及び教職員定数の標準等に関する法律(高校標準法)」を基に文科省が算定した現状の教員定数を基に、「生徒80人に対して教諭等1人以上が必要」という意見が多くの委員から出された。2021年度の学校基本調査によると、通信制高校の生徒数は21万8389人、教員数は5558人で、単純計算では生徒約40人につき教員1人がいることになるが、実際は「学校ごとのばらつきが大きく、教員1人で見る生徒が100人以上の学校もある」(文科省初等中等教育局)という。

オンラインで行われた第9回会合を進行する荒瀬座長

 委員からは「基準を設けることで、満たさない学校が違法状態に陥って、生徒が卒業できないという事態が起きないよう、激変緩和の方策を盛り込む必要がある」(青木栄一委員=東北大学教授)、「一人一人に寄り添うという意味では理想は40人(につき教諭等1人)。80人という数字をゴールにしてはいけない」(原口端委員=横浜修悠館高校校長)、「教諭等の『等』が示す職種の追記が必要」(日永龍彦委員=山梨大教授)といった意見が出された。荒瀬克己座長(独立行政法人教職員支援機構理事長)は「80人という数字が一人歩きしないように、法的な根拠を丁寧に記述する必要がある」とまとめた。

 素案では他にも、指導方法について思考力・判断力・表現力を育む観点から、添削指導(レポート)や試験では、択一式・短答式の問題に偏るのではなく、文章で解答する記述式を一定量取り入れるべきことを明記していくべきとした。また、添削指導・面接指導(スクーリング)において、個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実を通じた、主体的・対話的で深い学びを実現するためのモデル事業を国が行うべきとした。

 質保証の方策については、今年度より義務付けられている生徒数や教職者数、施設・設備などの教育環境といった情報公開が適切になされていない学校が見受けられることなどから、関係法令・ガイドラインで定める内容を実施できているか確認するための自己点検チェックシート(仮称)を国が整備するべきとした。

 さらに所轄庁については、都道府県以外にサテライト施設を設置する広域通信制高校での適切な指導体制の確立に向けて、都道府県間の連携協力体制を検討し、ガイドラインにも規定する必要があるとした。来月行われる次回会合は最終回となり、具体的な指導体制の基準を加筆した審議まとめ案が示される予定。

【「令和の日本型学校教育」の実現に向けた通信制高等学校の在り方に関する調査研究協力者会議 審議まとめ素案の概要】

通信制高校を巡る近年の状況
  • 多様な入学動機や学習歴を持つ生徒に対して教育機会を提供する機関となっており、時代の変化の中で通信制高校の学校数・生徒数が急増
  • 通信制高校における違法・不適切な学校運営や教育活動に対し、質保証を図るための諸改革が進展
取るべき対応策
  1. 指導方法の在り方
    1. 高校教育としてふさわしい質を確保する学習の設計
    2. 個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実を通じた主体的・対話的で深い学びを実現するための指導方法の見直
  2. 指導体制の在り方
    1. 教諭等の指導体制の確保と規模の規制の見直し
    2. 専門・支援スタッフの配置促進
  3. 質保証の方策(通信教育連携協力施設の在り方を含む)
    1. 関係法令等の徹底
    2. 広域通信制高校における通信教育連携協力施設の情報の整理・可視化
    3. 第三者評価の活用促進
  4. 所轄庁の在り方
    1. 所轄庁による指導力の向上
    2. 都道府県間の連携協力体制の構築
今後更なる検討を必要とする論点
  1. 不登校経験者など多様な生徒に対する組織的な学習支援体制の整備や、質保証・向上に向けた取組について、更に後押しするための各学校等への支援の在り方
  2. 広域通信制高校のサテライト施設における教育の質を一層確実に確保するための、設置認可、指導監督などに関する権限の在り方
  3.  高校及び在籍生徒の多様化や、一人一台端末・同時双方向型メディアの普及などの状況を踏まえた、高校全体の共通性の確保と多様性への対応、特に、全日制・定時制・通信制の区分や、これらの組み合わせの在り方

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