教育DX、MEXCBTを運用開始 21年度文部科学白書を公表

 東京オリンピック・パラリンピック競技大会と新型コロナウイルス感染症に対する文科省の取り組みを特集した、2021年度の文部科学白書が7月19日、公表された。東京大会のレガシーとして、教育関連で「心のバリアフリー教育」や「学校施設のバリアフリー化」などを挙げている。初等中等教育では、社会の変化が加速する中で子供たちの「生きる力」の育成を目指す学習指導要領の重要性を指摘。学校の働き方改革については「教師の長時間勤務の是正は待ったなし」と、危機意識を改めて強調した。学校のICT活用では、GIGAスクール構想の進展状況を紹介した上で、学校や家庭で学習やアセスメントがオンライン上でできる「文部科学省CBTシステム(MEXCBT:メクビット)」の活用が始まり、すでに全国で約1万校・約315万人が登録するなど、教育DXの進展を説明している。

2021年度文部科学白書の概要を説明する末松文科相

 同日の閣議で白書を配布した末松信介文科相は、それに続く記者会見で、「今回の白書では、特集として2つのテーマを取り上げた。新型コロナウイルス感染症の影響による史上初めての延期を経て、昨年開催された東京2020大会について、日本代表の活躍や大会のレガシーの継承・発展の取り組みを紹介。新型コロナウイルス感染症における文科省の取り組みでは、21年度に実施した支援や取り組みを紹介している。文科省としては本白書で取り上げている施策のさらなる充実を図っていきたい」と、概要を説明した。

 白書の巻頭を飾る特集では、まず東京オリンピック・パラリンピック競技大会を取り上げ、オリンピックで過去最多のメダルを獲得した日本代表選手団の活躍や国立競技場の竣工、大会期間中のサポート拠点などを紹介した。学校教育関連では、新型コロナウイルスの感染拡大によって競技会場が原則無観客となる中、学校連携観戦としてオリンピックで約4700人、パラリンピックで約1万5000人の児童生徒が競技会場で観戦したことが記載されている。

 東京大会の特筆すべき取り組みとしては、「共生社会の実現」を挙げた。学校教育関連では、「心のバリアフリー教育」として、学習指導要領に各教科で障害のある人との交流や共同学習の機会を設ける配慮を盛り込み、教育職員免許法の改正によって教職課程で「特別の支援を必要とする幼児、児童及び生徒に対する理解」を必修科目としたことを説明。バリアフリー法(高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律)の改正によって、一定規模以上の公立小中学校を新築する際にはバリアフリー基準適合義務の対象に加え、「学校施設のバリアフリー化」を目指す姿勢を示した。

 2つ目の特集では、新型コロナウイルス感染症に対する文科省の取り組みを紹介している。2020年2月、文科省の要請を受けて全国一斉に行われた臨時休校は「子供たちや各家庭において学校がどれだけ大きな存在であったのかということを改めて浮き彫りにする機会となり」、「学校は学習機会と学力を保障するという役割のみならず」、「福祉的な役割をも担っていることが再認識」されたと総括。やむを得ず登校できない児童生徒を含めた学びの保障に取り組み、全国の公立小中学校で児童生徒に1人1台端末環境を整備する「GIGAスクール構想」の前倒しに取り組んだことを紹介した。

 文教・科学技術施策の年次報告では、例年と同じく、主な内容を分野ごとに記述している。

 初等中等教育では、第1節として「学習指導要領の基本的な考え方」を挙げ、▽「社会に開かれた教育課程」の実現▽「何ができるようになるか」を明確化▽「主体的・対話的で深い学び」の視点からの授業改善--などと説明した。

 第2節には「学校における働き方改革の推進」を取り上げた。「教職員に対する多様な期待は、長時間勤務という形で表れており、教員勤務実態調査(16年度)の集計でも、看過できない教師の勤務実態が明らか」になったとした上で、「教育を支える教師の長時間勤務の是正は待ったなし」と指摘。「意欲と能力のある人材が教師を志さなくなり、わが国の学校教育の水準が低下することは、子供たちにとっても、わが国や社会にとってもあってはならない」と、危機感をあらわにした。こうした表現ぶりは、前年度の白書と同じ内容をそのまま踏襲している。

 学校の働き方改革を実現するために、具体的な取り組みとして、▽休日のまとめ取りを可能にする1年単位の変形労働時間制を導入した改正給特法(公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法)の施行▽教員の勤務時間管理の徹底▽「教師でなければできないことに教師が集中できるよう」業務の適正化を図る▽管理職のマネジメント能力向上など学校の組織体制の見直し▽各教育委員会における働き方改革の進捗(しんちょく)状況の明確化など改革サイクルの確立--などを挙げている。

 このほか、理数教育の推進、グローバル人材の育成、いじめ・不登校への対応、教員免許更新制の廃止と新たな教員研修の導入など教職員の指導体制の整備、幼児教育の振興、障害のある子供一人一人のニーズに応じた特別支援教育の推進、幼児・児童・生徒に対する経済的支援の充実--などを各節で取り上げている。

 学校のICT活用については、国際的にみても日本の学校でのICT活用が遅れていたとの認識を示した上で、GIGAスクール構想の進展状況を説明。新型コロナウイルスの感染拡大を受けた計画の前倒しにより、昨年3月末時点で全国の公立小中学校で児童生徒に1人1台端末環境の整備がおおむね整い、21年度補正予算で指導者用端末の確保などを盛り込み、22年度予算では端末の活用でみえてきたボトルネックの解消や、ICT支援人材の育成と確保を行う「GIGAスクール運営支援センター」を各都道府県に整備する費用を計上していることを紹介した。

 教育データや先端技術の利活用など教育DXの取り組みについても、全体像を概括している。「個別最適な学び」と「協働的な学び」の実現に向け、教育データの効果的な利活用が重要と位置付け、有機者会議の中間まとめによる論点整理で、①教育データの定義②教育データの利活用の原則③教育データの利活用の目的(将来像の具体的なイメージ)④教育データの利活用の視点⑤学校現場にける利活用⑥ビッグデータの利活用⑦生涯を通じたデータ利活用⑧教育データの標準化--について基本的な考え方を示したことを説明。

 このうち、教育データの標準化は、個に応じたきめ細やかな学習支援や分析に必要で、「デジタル教科書・デジタル教材をはじめとする、さまざまなデジタルコンテンツの連携などが可能になる」とメリットを強調した。学習指導要領の各内容にコードを付ける「学習指導要領コード」や全国の学校に番号を付ける「学校コード」、児童生徒、教職員、学校の属性の基本情報にコードを付けた「教育データ標準」を順次公表。学習用ソフトウェア間の相互運用に必要な「学習eポータル標準モデル」も策定している。

 教育DXを推進するため、全国の学校で共通に活用できる基盤の整備も進めている。文科省版のCBT(コンピューター使用型調査、Computer Based Testing)システムとして、学校や家庭で学習やアセスメントをオンライン上でできる「文部科学省CBTシステム(MEXCBT:メクビット)」を20年度から整備。国が実施した全国学力・学習状況調査(全国学調)の問題や自治体の学力調査の問題などが掲載されており、昨年12月から希望する全国の小中学校や高校で活用が始まった。今年6月現在、約1万校で約315万人が登録して授業や家庭学習に活用している。
 
 学校が回答したアンケート調査の結果を自動集約できる「文部科学省WEB調査システム(EduSurvey)」も開発し、試験導入が始まっている。今後、対象となる調査を増やしていき、各学校の負担軽減や効率的な調査実施につながるとの期待を示した。

 文部科学白書は19年度版まで例年約450ページで構成されていたが、白書のコンパクト化が求められる中、20年度版はページ数を10%削減して約400ページに、今回の21年度版はさらに約370ページにまで削減した。さらに、紙媒体として作成する文科省配布分には特集だけを収録し、各分野の年次報告については簡素な紹介にとどめて、全文はインターネットで閲覧できるように改善している。21年度版は、読みやすさを求めるとして、特集のレイアウトを2段組に変更した。

 文部科学白書は、文科省のウェブサイトから閲覧できる。

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