埼玉県戸田市教委が進める教育総合DB 成田悠輔助教授らが助言

 エビデンスに基づく教育施策を進めている埼玉県戸田市教育委員会は7月20日、同市教委が独自に設けている教育政策シンクタンクの調査研究に関し、外部専門家からの指導・助言を受ける「教育政策シンクタンクアドバイザリーボード」の第2回会合をオンラインで開いた。会合ではデジタル庁の実証事業である「教育総合データベース」の進捗(しんちょく)状況や、学校現場でのデータ利活用について報告を受け、構成員の中室牧子慶應義塾大学教授や成田悠輔イェール大学助教授が、データの効果的な活用や個人情報の保護と活用のバランスなどの観点から意見を述べた。

教育データの利活用を促進する戸田市の施策について意見を述べるアドバイザリーボードの構成員ら(同市教委提供)

 同市教委では、教育シンクタンクを中心に、学校現場から収集した定量的・定性的データを分析し、学校現場の「経験と勘と気合」から脱却した政策立案に取り組む。同時に、子どもに関するデータが教育委員会以外の部局にもまたがり、一部のデータはデジタル化もされていなかったことから、これらを教育分野を軸にした「教育総合データベース」として整備。データの標準化やデータフォーマットのオープン化によって、他の自治体でも導入しやすくすることを目指している。

 この「教育総合データベース」はデジタル庁の「こどもに関する各種データの連携による支援実証事業」にも採択され、例えば、不登校やいじめなどの何らかの兆候を事前に把握し、早期支援につなげたり、学力が向上している学校の共通する特徴を分析し、継続的な改善のためのフィードバックを提供したりすることなどが期待されている。

 また、同市教委は学校ごとにデータを利活用して授業改善につなげることにも力を入れており、埼玉県の学力調査や市が独自に児童生徒に対して定期的に行っている「授業が分かる調査」などを活用した分析をはじめ、昨年度には、教室でのグループの会話を解析するため、対面の話し合いを記録できる特殊なレコーダーを試験的に導入し、子どもの発話を促すための教員の効果的な声掛けを明らかにするなど、教員の指導技術の科学的な可視化を試みている。

 こうした同市教委の報告を受けて、教育経済学が専門の中室教授は「扱えるデータが増えてきて情報量が増えてくると、何でもかんでもフィードバックしたくなるのが人間のさがだが、それが必ずしも良い結果を生むとは限らない。どういう情報をどういう形で、どのタイミングでフィードバックするのが子どもたちのモチベーション喚起に最も資するのかについても、次の段階として検討が進んでいくと良いのではないか」と提案。

 学習科学が専門の益川弘如(ひろゆき)聖心女子大学教授は「いろいろな教育データが集まることで、子どもたちの学びがどういう形で起きているかを推測したり解釈したりする精度が上がっていく。そういうことを通して、最終的には一人一人の先生方の教育観や学習観がよりいいもの、いい形になり、日々の授業づくりでも、より子どもたちに寄り添った形に改善されていく。先生たちが苦しみながら授業をやっていくことから、楽しみながら授業をやっていくという意味で、精神的な負荷も改善されていくのではないか」と述べ、教育データの利活用は教員へのメリットが大きいと強調。「データを使って先生方が対話しながら授業づくりや授業改善を進めていくと、どんなふうに先生が変容していくのかというデータも集めてもらえるとうれしい」と要望した。

 また、実業家で経済学者でもある成田助教授は「今後プロジェクトを具体的に進めていく上では、やはり、市の皆さんが持っているデータを外部の企業や研究者と共有していくことが、どうしても必要になってくる」と話し、外部とデータを共有する際のルールづくりが重要だと指摘。「個人情報やプライバシーの問題が炎上しやすい時代においては、後々、このプロジェクトが外部からのそうした指摘で頓挫してしまうリスクを低くするためにも(ルールづくりが)大事だと思う。プロジェクトの中身と並行して、そういうルールやインフラをつくることもできたらいいのではないか」とアドバイスした。

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