部活動なき中学校「教育効果どう担う」 教育長ら中教審で問題提起

 直近の学校教育政策を検証する中教審初等中等教育分科会が7月25日、オンラインで開かれた。期待された初任の教員が部活動の負担を理由に退職した経緯を披露した細田眞由美委員(さいたま市教育長)は「教員のボランティアで支えられてきた部活動は限界だ」とする一方、「日本の中学校は、部活動のもたらす教育効果に依存していた。それを本来の教育課程の中で担っていかなくてはならない。中学校教育の大いなる変革が突き付けられている」と問題提起。戸ヶ﨑勤委員(埼玉県戸田市教育長)も「部活動を失う中学や高校の具体的な未来像を描くべきだ」と指摘した。増え続ける不登校への対策については、オンライン活用の徹底のほか、学校や行政が積極的に手を差し伸べるアウトリーチ(プッシュ)型支援への取り組みを求める意見が出された。

議事進行を行う荒瀬克己分科会長(教職員支援機構理事長)

 この日の分科会では、▽教員免許更新制の廃止と新たな教員研修を導入する法改正▽教員養成、免許、採用、研修の改善を検討している中教審教師の在り方特別部会の審議状況▽Society 5.0への対応やウェルビーイングの価値観を踏まえた次期教育振興基本計画の検討状況▽不登校に関する調査研究協力者会議報告書▽部活動の地域移行▽教科書・教材・ソフトウェアの在り方ワーキンググループの審議状況--が議題となった。

 部活動の地域移行では、すでに運動部について6月6日に提言がまとまり、休日の活動から段階的に地域移行していくことを基本に、2023年度から3年間を改革集中期間とすることが打ち出された。文化部については、同様の提言が8月9日にまとまる見通しとなっている。

 この提言について、細田委員は「昨年度末、大変ショックなことが起きた」と切り出し、「さいたま市が採用した、非常に期待の高い初任者の何人かが『部活動という労働に対する対価のない教育活動が平然と行われていることに疑問を感じる』と言って退職していった。長い期間、教員のボランティアで支えられてきた教育活動である部活動が、いよいよ持続可能性という点で限界に達しつつあることを突き付けられた思いだった」と、教育長としての実感を吐露した。

 続いて「部活動の地域移行について、一番の課題は中学校教育そのものにある、と思う。これまでの日本の中学校は、部活動のもたらす教育的効果に非常に依存していた。提言では、部活動の教育的効果に、達成感の獲得とか、責任感や連帯感の涵養とか、学習意欲の向上などが挙げられている。これは、本来は授業をはじめとする教育課程の中で子供たちに付けていくべき力であるはず。この日本型学校教育の典型的な側面を今まで部活動が担っていた」と説明。

 その上で「部活動を中学校教育が手放すとなると、この重要な教育的な効果を、本来の教育課程の中でしっかり担っていかなければならない。つまり、中学校教育の大いなる変革を突き付けられている気がする。では、どうしたらいいか。皆さんと知恵を出して考えていかなくてはならないと痛感している」と述べ、部活動の地域移行を中学校教育そのものの大きな変革と捉えていく必要があると訴えた。

 これに先立ち、戸ヶ﨑委員は「部活動の地域移行の目的として、働き方改革を第一に掲げるのはいかがなものかと、本音で思っている。AIやロボットに奪われない仕事とか、生きがいの筆頭がスポーツとか文化活動。未来社会に向けたビジョンやロードマップの中で、部活動のポジショニングも明確にしてほしい」と指摘。

 さらに「部活動という居場所に救われている子供が少なからずいる。授業と行事だけになったら救えない子供も、もしかしたら増えるのかもしれない。80年代の荒れた学校の再現を危惧している。地域移行後の部活動に参加しない生徒に、どんな場を提供できるのかなど、部活動を失う中学や高校の具体的な未来像や、その中で生徒の成長を支援する学校や地域社会の姿を明らかにしてほしい」と述べ、部活動の地域移行によって変わっていく学校の姿を描くよう求めた。

 全国特別支援学校長会会長の市川裕二委員(東京都立あきる野学園校長)は「特別支援学校においても運動部も文化部も多く行われている。児童生徒が地域のスポーツ活動や文化活動にうまく移行できるかというと、受け皿としてそれほどないと思っている」と、部活動の地域移行に特別支援教育の視点を加える重要性を指摘。「これは学校教育に関わることだけではない。障害のある人たちのスポーツ活動や文化活動をどのように振興していくか。大きな課題に取り組む必要がある」と述べた。

 不登校への取り組みについては貞廣斎子委員(千葉大教育学部教授)が、報告書に記載された文科省の20年度不登校児童生徒実態調査の回収率が小学6年生の児童と保護者で12%前後、中学2年生の生徒と保護者で8%台だったことに「文科省がやっているアンケート調査で、こんなに回収率が低いのは見たことがない。この時点で課題の深さを感じる」と指摘。

 「調査のポイントをみると、『学校を休んでほっとした』とか『自由な時間が増えた』と言っている一方で、『もっと登校すればよかった』と、大変アンビバレントで切ない回答をしている。これに何の支援の対象にもなっていない子供たちが増えているといったことを総合的に考えると、何らかの形でアウトリーチをするとか、またはオンラインやリモートの学習をもっと真剣に本格的に考えるところに来ているのではないか」と述べた。

 細田委員は、さいたま市がオンラインを活用した不登校児童生徒支援センターを今年4月に設置したところ、同市で学校内外のどこからも相談や指導を受けてない児童生徒400人のうち、スタート直後から100人近くの児童生徒が参加したことを説明。「新たな教育機会の確保として、一つの成功体験を得た。他の自治体でも、予算や時間がなくても、デジタルを使うことで、有意義な学びにつながると知らせたい」と報告した。

30 コメント
最新
最も古い
インラインフィードバック
すべてのコメントを見る

あなたへのお薦め

 
特集