給特法見直し署名に4万1140筆 有志の会が中間報告

 公立小中学校の教職員の給与などを定めている「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」(給特法)の抜本的な見直しを求めてオンライン署名を展開している現職教員や研究者らの有志の会が7月26日、文科省内で記者会見を開き、署名開始から約3カ月で4万1140筆が寄せられたことを明らかにした。呼び掛け人の公立高校教員、西村祐二氏は「残業代がほしいわけではない。残業をゼロにするために訴えている」と署名活動の狙いを説明。賛同人の作家、乙武洋匡(ひろただ)氏は「給特法の改廃は、子供たちの教育環境の改善にも関わる。この法律が日本の未来を左右している」と力を込めた。

記者会見する有志の会のメンバー。左から、内田良氏、乙武洋匡氏、小室淑恵氏、西村祐二氏、室橋祐貴氏

 この日の記者会見には、西村氏、乙武氏のほか、呼び掛け人となっている教育社会学者の内田良名古屋大教授、中教審初等中等教育分科会で委員を務めた小室淑恵ワーク・ライフバランス社長、室橋祐貴日本若者協議会代表理事が出席した。

 最初にあいさつした西村氏は「学校の働き方改革は総力戦だと言いながら、給特法の抜本的な議論には手を付けてこなかった。給特法があると、学校では管理職から『早く帰ってください』と言われるだけで、業務量が減らない。なぜなら、給特法の下では、教員に対して、そもそも残業命令が存在しないから。業務量がどれだけあっても、管理職の責任にならない。それが教員不足や、教員採用倍率の低下にもつながっている」と、学校の働き方改革を進めるためには給特法の抜本的な見直しが不可欠だと強調した。

 内田教授は、1966年度の教員勤務状況調査で週2時間弱の残業時間だったことを根拠に、公立学校の教員に対し、月額給与の4%を「教職調整額」として支払う代わりに、超過勤務に対する残業代を支払わないことなどを定めた給特法の概要を説明。「以降、2006年度まで教員の勤務実態調査は行われなかった。この長い時間のうちに、教員は『定額働かせ放題』となった。教育現場は勤務の時間意識を失い、教育行政と教育学者はコスト意識を失った」と指摘した上で、小中学校では教員の約3割が職場の正式な休憩時間帯を知らず、勤務時間数を正確に申告しないなど「給特法が長年続くうちに、学校の時間管理がいい加減になった」と述べた。

 小室氏は、上司が長時間労働のために睡眠不足になると、部下への攻撃性が高くなるとの研究結果を説明しながら、「教員の長時間労働が続くと、児童生徒に対して攻撃的になっていく」と述べ、教員の多忙化は児童生徒の不登校にも関係があるとの見解を示した。その上で、学校でのコンサルティング経験から小学校や中学校で教員の超過勤務時間を減少させた事例を紹介。学校管理職に対する人事評価に、超過勤務時間の減少など「生産性評価」を導入することが重要だと指摘した。「教員の残業時間を減らしても、それで校長や教頭が評価されることもない。残業時間の減少に取り組まなくても、降格されることもない。給特法がもたらしたこの仕組みに問題がある」と強調した。

「給特法の改廃は日本の未来を左右する」と論じた乙武洋匡氏。左は内田良氏、右は小室淑恵氏

 東京都内の小学校で教員を務めた経験を持つ乙武氏は「月額給与の4%で100時間も残業するということは、給与が月30万円の場合、1万2000円で100時間も残業することになる。これはもう、罰ゲームであり、奴隷だと思う」と、体験を踏まえて説明。「教師に余裕がなければ、子供たちの多様性を認めることもできない。給特法の改廃は子供たちの教育環境の改善でもある。給特法という世の中にはあまり知られていない法律が、日本の未来を左右している」との問題意識を明らかにした。

 室橋氏は今年3月に実施した教員志望の学生に対するアンケート調査で、教員志望の学生が減っている理由に「長時間労働など過酷な労働環境」が最も多かったとの結果を説明。「学生たちは残業代が出ない職場にいきたくない。やりがいが搾取されていると分かっている。教員志望の学生が減ってきて『教職の魅力を発信しよう』と考える人がいるが、必要なのは職場のイメージではなく、労働環境の改善だ。教員が忙しそうだと、子供たちに悩み事があっても声を掛けることもできない。子供たちの環境を改善するためにも給特法を改廃するのは必須だと思う」と述べた。

 有志の会では、当分の間、給特法の改廃を求める署名運動を続ける方針。9月以降、与野党の国会議員に給特法の抜本的な見直しについて働き掛けを行うほか、今年度に文科省が実施する教員勤務実態調査の概要が判明する来年春ごろ、署名を同省に提出。それに続く、中教審の審議や給特法見直しが取り上げられるとみられる2024年度の予算編成に向け、関係者への働き掛けを続けていく考えとしている。

 オンライン署名の内容はChange.orgの特設ページから確認できる。

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