運動部活動の地域移行で指導者の質と量をどう支える JSPOに聞く

 公立中学校における休日の運動部活動の地域移行で、課題の一つとなっているのが指導者の「質」の保証と「量」の確保だ。休日のみ指導をしてくれる人をそろえられるのか、指導力はどう担保するのか…。そうした中、大きな期待を寄せられている組織が日本スポーツ協会(JSPO)だ。各競技の指導者資格を認定しており、スポーツ界において主導的な役割を担っている。スポーツ庁の「運動部活動の地域移行に関する検討会議」の委員でもあった金沢敬JSPO事務局次長に聞いた。

金沢敬日本スポーツ協会事務局次長

 JSPOは、国内の各競技団体と都道府県の体育・スポーツ協会を統轄しており、国民体育大会の開催やスポーツ少年団の運営、総合型地域スポーツクラブの育成、指導者の養成など、スポーツに関係する幅広い事業を展開してきた。だが、これまで学校の運動部活動との関わりはそれほど深くなかったという。

 金沢事務局次長は「部活動は学校教育の領域なので、これまで注視はしてきたものの、われわれとしては積極的な関与はしにくい状況だった。とはいえ、この数年、子供たちが中学校に行ってもやりたい部活動がないとか適切な指導を受けることができない、そういった声に加え、教員の過重労働といった問題もあり、関心を持ってきた」と話す。

 2014年にはJSPOとして初めて、学校部活動の指導者の実態調査を実施。運動部活動の改革の声が高まってきた21年にも改めて全国の中学校600校、全日制高校400校を対象に実態調査を行った。「注目を集めたのが、保健体育の教員でなく、受け持っている部活動の競技経験もないという指導者が、中高ともに4分の1以上だったという結果だった」と解説する。

 地域移行に関する議論の末にまとめられたスポーツ庁の提言で強調されたのが、指導者の「質」と「量」の問題だった。提言ではこれからの部活動の指導者について、「資格の取得や研修の実施を促進する」とした上で、JSPOに「競技団体等が主催する大会において、監督・コーチの公認スポーツ指導者資格の取得を義務付けるとともに、その他の大会や日常的な指導等の場においても、できる限り公認スポーツ指導者資格を有する指導者が指導にあたることを求めるなど、指導者が公認資格を取得することの意義を高めることにより、より多くの指導者が自ら資格取得を目指すような制度設計に取り組む」よう要請した。

 JSPOの主な公認スポーツ指導者資格は、指導対象のレベルに応じてコーチ1から4まで4段階あり、資格取得には共通科目と専門科目を学ぶ必要がある。ただ、競技別の資格では教員の場合、異動先の学校で別の種目の顧問になる可能性もあることから、また資格を取ることになると新たな負担となる。そこでこの6月から新たに設けたのが、スポーツ指導の基本となる「スタートコーチ」資格。教員免許状所持者を対象としている。

 「いま部活動改革で資格を持つ人を増やしていくことが急務となっているので、『指導のための基礎的な知識を得たい』『改めて勉強したい』という現職はもちろん、教員OB・OGもイメージして、潜在的な指導者層の掘り起こしを狙っている。資格があれば、生徒や保護者にとっても大きな安心になる」と金沢事務局次長は説明する。教員にとっては、地域移行した場合に学校外での兼職兼業もやりやすくなる側面もある。

 また指導者の「量」の確保についても、地域によっては人材が足りず、特に小規模な市町村からは不安の声が大きい。現在、各校で活動する外部の部活動指導員の活用や都道府県単位の人材バンクの設置などが提案されている。

 JSPOでは従前よりオンラインで指導者を探せるウェブサイト「公認スポーツ指導者マッチング」を運営しており、提言にもこのサイトの活用が盛り込まれた。指導者を求める学校やスポーツクラブとJSPO公認スポーツ指導者を結び付けるもので、どのような指導者がいつ必要かを登録すれば仲介してくれる仕組み。現在は公認スポーツ指導者約5500人が登録しているという。

 「指導者を探そうにもどこでどのように探せばいいのかという声をよく聞く。これからは指導者探しも大きな課題になってくると思うので、ぜひ利用していただきたい」(金沢事務局次長)

 またJSPOでは4月から内部で、運動部活動の地域移行に向けた部署横断的なプロジェクトチームを発足させた。金沢事務局次長は「部活動の地域移行は大きな変革になるが、これを好機と捉えて、指導者をしっかりと育てて確保する。日本のスポーツシーンが変わっていくような気がする。逆にスポーツをしない子供がたくさんでてきたりしないよう、丁寧に考えないといけない。スポーツ環境がより魅力的なものになって、若い人からお年寄りまでが楽しめるようにしていきたいと考えている」と強調する。

1 コメント
最新
最も古い
インラインフィードバック
すべてのコメントを見る

あなたへのお薦め

 
特集