【ウクライナと学ぶ】 日本にやってきた子どもたちは今

 気候も文化も違う日本に避難してきたウクライナの人々は今、少しずつ生活の基盤を整えようとしている。中でも、子どもたちにとって、学校教育を受ける上で日本語の習得は欠かせない。青少年自立援助センターが運営する教育支援事業「YSCグローバル・スクール」では、日本に避難してきたウクライナの子どもたちを受け入れ、同校が外国にルーツのある子どもや若者に向けて提供している日本語教育プログラムを無償で受けられるようにしている。実際に同校で今、日本語を学ぶウクライナの子どもたちに話を聞いた。「ウクライナと学ぶ」第3回は、彼らの声に耳を傾けたい。

短期集中で日本語を学び、学校へ
インタビューはウクライナ語の通訳を介して行われた

 午後3時を過ぎると、三々五々、さまざまな年齢の子どもたちが教室を出ていく。都内にある「YSCグローバル・スクール」には、さまざまな国・地域から日本にやってきた子どもたちが日本語を学んでいる。その中に、インタビューに応じてくれたトパル・ミシェルさん(13)とフィリモンチョク・ニキータさん(14歳)の姿があった。同校は現在、地方に住んでいて日本語を学ぶ環境が身近にないため、オンラインで授業に参加しているケースも含め、10人を超えるウクライナから避難してきた子どもを受け入れている。彼らは、ここでまず短期集中で日本語を習得した上で、日本の学校に通うことになる。

 2人とも最初は緊張していた様子が見て取れたが、通訳として同席してくれた日本ウクライナ友好協会のリセンコ・ナタリアさんがウクライナ語で話し掛けると、表情が和らいだ。

日本に行くか行かないか、最初は迷った
祖母と一緒に日本に避難してきたニキータさん

 ミシェルさんもニキータさんも、日本で暮らしている親戚を頼って避難し、現在は東京都からの支援を受けて都営住宅で暮らし始めている。ミシェルさんは春ごろに両親と共に日本にやってきた。いずれは自宅近くの公立中学校に通う予定だ。一方のニキータさんは、来日してまだ1カ月ほど。もともと、この夏には、旅行で日本を訪れる予定だったという。しかし、ロシア軍による侵攻でウクライナ情勢が日に日に深刻になる中、両親はウクライナに残り、ニキータさんは高齢の祖母と日本に避難することになった。「ロシア軍が侵攻する前の生活は素晴らしかった。学校で友達と過ごす日々は楽しい時間だった。母はとても心配していたし、日本に行くか行かないか、最初は迷った」と、母国と両親から離れることは、苦渋の決断だったと打ち明ける。

 「日本の夏はすごく蒸し暑くて、乾燥しているウクライナの夏とは全然違う」と話すミシェルさんは、ロシア軍の侵攻を受けて家族と車でスペインまで避難し、その後、親戚の住む日本にやってきた。「歴史や音楽は好きだけれど、学校の勉強はあまり得意ではない」と言うが、日本のアニメのキャラクターが描かれた缶バッジがいくつも付いたリュックサックから取り出したノートには、何種類もの漢字が丁寧に書き取られていた。

漢字の練習を繰り返したノートを、はにかみながら見せてくれるミシェルさん

 「日本語は難しいけど、いろいろな線でできている漢字を書いているとリラックスできる」とミシェルさん。どうやら、アートが好きな彼女の性格と、象形文字から発展していった漢字とは、相性が良かったようだ。

 ニキータさんも自分のノートを見せてくれた。ウクライナ語と日本語が併記され、懸命に日本語を習得しようとしているのが一目で分かる。ニキータさんの場合、気掛かりなのは進路だ。「高校や大学も決めないといけないけど、日本はウクライナとかなりメンタリティーが違うから、日本で進学することは自分にとってもチャレンジだと思う。大変だったら、(ウクライナの隣国である)ポーランドに行くかもしれない」と、ニキータさんは思い悩む。

同じ人間、特別扱いは嫌

 ニキータさんやミシェルさんにとって、日本での暮らしはカルチャーショックの連続だ。自宅から同校まで、2人とも電車で通っているが、ニキータさんは「日本人は整列して電車を待っている。その光景を見て驚いた。ウクライナではみんな、われ先にと乗ろうとするから」と指摘。ミシェルさんも「日本のドライバーは親切で、私が道路を渡り終えるまでずっと待っていてくれる。駅でどの電車に乗ればいいか分からなくて、ベンチで頭を抱えていたら、『具合が悪いの?』と声を掛けてくれる人がいた。日本人は優しい」と振り返る。

 彼らはいずれ、日本の公立学校に通うようになり、日本の子どもたちと一緒に学ぶことになる。私たちは彼らに、どう寄り添うことができるのだろうか。日本の学校生活に対する、率直な思いを聞いてみると、ミシェルさんは日本語で「難しい…」とつぶやいてから、少し思案して次のように語った。

 「日本語でいろいろな教科を学ぶことになるから、勉強がどうなるかは心配。それから、見た目は違っても同じ人間。日本の同い年の子と友達になりたいから、仲良くしてほしい。でも、ウクライナから避難してきたからといって、特別扱いされるのは嫌。自分も他の子と同じように接してほしい」

(藤井孝良)

0 コメント
インラインフィードバック
すべてのコメントを見る

あなたへのお薦め

 
特集