【全国学力調査】 田村教授「振り返り、見つめ直しを大事に」

 今回の全国学力・学習状況調査の結果からは、何を読み取ることができるのか。新学習指導要領に詳しく、授業改善をはじめ教員に対するさまざまな研修を行っている國學院大學人間開発学部初等教育学科の田村学教授に聞いた。

3つの意義
國學院大學人間開発学部初等教育学科の田村学教授

 全国の児童生徒の学力や学習状況の現在位置を確かな形で捉えようというのが、「全国学力・学習状況調査」であり、今回の調査に関しては、重要な3つの意義がある。

 1つはやはり、コロナ禍における各学校の学習状況を丁寧に把握することだ。このような非常時に学校の様子がどのようになっているのかが分かるというのは重要だ。2つ目は、新学習指導要領の学習内容の実現状況を把握することだ。小学校は2020年度から導入され、中学校は実施1年が過ぎたことになるので、この状況もまた知ることができる。3つ目は、GIGAスクール構想による1人1台端末が実現された後の状況が見えてくることで、現時点で端末の利用により学習指導がどのように変化しているか、あるいは端末活用の具体的な姿を知ることは大変意義深い。

結果から受けた印象

 コロナ禍で学校としては大変なことが多かったと思うが、今回の調査結果を見ると、各学校ではそれぞれが新学習指導要領の実現に向けて真摯(しんし)で丁寧な取り組みをしてきたことがうかがえる。当然、課題はあるが、それぞれの学校が真剣に教育活動に取り組んできたことを評価し、国民的にもそのことの理解を促すべきではないか。コロナ禍において、学校という重要なインフラが安定していたということの意味は大きい。

 さらに、GIGAスクール構想による1人1台端末の利活用は全体的には促進されている。子供も先生も使用の頻度が上がり、慣れてきたということが示されている。これも初期の段階としては大変好ましいことであり、先生たちのがんばりを感じた。次は一段階上がって、一層有効な利活用が求められる。

国語に関して

 国語に関しては、例えば自分の表現の良いところを見つけること、相手とのつながりを作る言葉の働きを捉えること、根拠を明確にして引用する、あるいは話し方の工夫を自分で考えるといったことに課題がみられた。これらは、つながる言葉の働き、引用の仕方、その引用の必要性などを子供たち自身が重要なものであると理解していない、自覚しきれていないためのように感じた。

 例えば、話し方の工夫のところで、教師から示されればできるけれど、自分ではできないということがあった。これは、自分でそういった知識や技能を積極的に使いこなす場面が少ない、あるいは使いこなし運用する場面を自覚していない、あるいはそれを使いこなせると非常に好ましいことが生じるのを、子供たちがまだ十分認識していない証左ではないかと考えられる。

 従って、子供たちが学んだことの良さや価値を実感する場を作っていくとよいのではないかと思う。これには振り返りが有効だ。学習した内容を丁寧に振り返ることでその価値を自覚する、あるいは手応えを実感する、そうしたことで次の段階に進むことが容易になるのではないだろうか。自らの学びを見つめ直すことで自覚する、あるいは実感することにつながるとよいのではないかと思う。

算数・数学に関して

 算数・数学においても、目的に向かって考察する力、考察したことを基に表現する力がこれまで同様、課題として残っているのではないかと感じている。そのことが象徴的に表れているのが、データの活用だった。データの活用は新学習指導要領の新内容だ。日常生活の問題を解決するために、身に付けた知識をいかに活用・発揮するかが問われており、まだ十分に力が付いていないという印象を受けた。

 算数・数学に関しては、知識が体系化されている教科であり、前に学んだことを積極的に使うという活用・発揮場面を、これまで同様、大事にしていくことが重要だ。さらに、そこで活用されている知識や理解の仕方が適正なのかどうかを改めて確認する場面を作るとよいのではないかと思う。そこでは、先生がはっきりと明確に伝える、子供は自らの学習を見つめ俯瞰して自分のものにしていく姿勢が必要だ。

 つまり、教師の明示的な指導と、子供の学びに対する見つめ直しを意識すると、今やっていることが1人1人の子供に染み込んでいく感じになるのではないかと思う。

理科に関して

 分析し解釈して問題を見いだす、数値を根拠に結論を記述することなどに課題があった。問題解決のプロセスが理科では重要だ。そのプロセスが全体として連動し、つながっていることを子供たちが理解した上で、獲得した知識や理解したことを、自在に使えるようにしてほしいと期待している。

 そう考えると、何のためにその実験をしているかという目的を明確にする、あるいは収集したデータの質や量を検討する、また、分析をしていく際には、その分析の手法が適切かを明らかにしていくことなどが大事になってくる。

 知識をつながりのあるものとして学んでいくことが大事だ。1個1個のばらばらなピースではなくて、結び付いたものとなるように学んでいくこと。それを意識していけば、問題解決のプロセスを自らの力で適切に運用できるようになるのではと考える。

新学習指導要領に基づき変わった授業

 新学習指導要領では「主体的・対話的で深い学び」を実現することで資質能力の育成を目指しているわけだが、そのためにはまず学習過程というプロセスを充実させることが大切だ。さらに相互作用(インタラクション)の学び合い、それをきちんと見つめ直すリフレクション、これらを授業の中に位置付けてほしいわけだが、各地での授業を参観して、ある程度実践されていると感じている。

 ただ、課題として残るのは、それが子供たちの中で本当に腹落ちしているのかどうか、自覚や実感となっているかどうか。指導や手だての工夫が、もう少しいるのではないかと感じている。

 全国の多くの学校では、子供同士の意見交換やディスカッションを意識して授業改善をしており、子供たちが自ら学ぶように工夫もしている。過去における一方的な教え込みの授業は、確実に変わってきている。そこにGIGAスクール構想による1人1台端末を活用することで、授業改善をしていくモードは大きく全国に広がってくのではないかと期待している。

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