【全国学力調査】中学英語で来年度活用へ MEXCBTの可能性

 今年度の全国学力・学習状況調査では、小中学校2860校でオンラインによる回答方式を試行的に実施した。来年度は中学校英語の「話すこと」調査を全面的にCBT(コンピューター使用型調査、Computer Based Testing)で実施する予定で、そこでは文科省が開発・展開を進める「MEXCBT(メクビット)」を初めて活用する方針だ。MEXCBTには現状、国や自治体などが作成した問題が約2万5000問搭載されており、GIGAスクール構想で整備された1人1台端末を用いて、学力調査だけでなく、普段の授業などでも活用することができる。MEXCBTの開発・展開の状況や今後の展開について、文科省総合教育政策局教育DX推進室の桐生崇室長に聞いた。

全国の学校の約3分の1が登録

――全国学力・学習状況調査のCBT化に向けた状況を教えてください。

文科省総合教育政策局教育DX推進室の桐生崇室長

 全国学力・学習状況調査は、2024年度以降、順次CBT化していくスケジュールとなっています。今年度は試行的に、質問紙調査でオンライン回答を実施しましたが、来年度は中学校英語の「話すこと」調査をオンライン化する予定で、そこでは文科省のCBTシステム「MEXCBT(メクビット)」を初めて活用することを想定しています。

 実際に調査を行うに当たっては、一気にアクセスが集中しないよう、まず日にちを分散させ、時間帯をずらすなどの方策を検討中です。また、「画面が開かない」などのトラブルが起きた場合、端末に問題があるのか、OS(オペレーティング・システム)やブラウザ、ネットワークの問題なのか、はたまたMEXCBT自体にトラブルが生じているのか、いくつか場合分けをして対応しなければなりません。学校現場に周知する前に現在、綿密に点検を進めているところです。

 調査をCBT化することで、学校現場の管理コストはものすごく低くなります。開始時間まで調査問題を厳重に保管したり、調査冊子を配ったり集めたりといった手間がなくなり、学校現場の負担の軽減にもなると考えています。

――そもそも、MEXCBTでは何ができるのでしょうか。

 MEXCBTは文科省のCBTシステムとして、20年度からプロトタイプ(試行版)の開発を始め、21年度には希望する全国の小中高などで活用を開始しました。現在も利便性向上のための改善が続けられているところで、全国の学校の約3分の1に当たる約1万1000校、約360万人が登録しています。

 CBTは紙のテストと比べて、回答の記録がきちんと残る、画像や音声など多様な出題ができる、インタラクティブな操作ができるなどの利点があり、海外の学力調査でも多く使われるようになっています。

 MEXCBTには、国や自治体など公的機関が作成した問題約2万5000問を搭載しており、例えば全国学力・学習状況調査の問題だけでなく、国際学力調査であるPISA(OECD生徒の学習到達度調査)の公開問題や情報モラル学習問題、千葉県・山口県・さいたま市など自治体独自の学力調査の問題などに取り組むことができます。今のところ、高校段階の問題がやや手薄なのですが、将来は高等教育も含め、充実させていく予定です。

 MEXCBTは国が提供しており、全国共通で、無償で使えます。MEXCBTにアクセスするための窓口となるソフトウェア「学習eポータル」は民間事業者が「L-Gate」「Open Platform for Education」「まなびポケット」「Studyplus for School」「Qubena小中5教科」の5種類を、無償、有償オプションなど、さまざまな形で提供しています。また、文科省事業において用意する実証用学習eポータルを使うことも可能で、一般的にはオンラインで申し込みをしてから、およそ2~3週間で利用を開始できます。

各自治体で作っていた問題を、全国で共有できる

――MEXCBTの活用イメージを教えてください。

 GIGAスクール構想で整備された1人1台端末環境を生かし、さまざまな活用ができます。年間を通じていつでも自由に使えるので、授業のほか、朝学習や家庭学習、夏休みの宿題で使っている学校もあるようです。

 学校現場からは「児童生徒は問題を解けば正答率が出て達成度が分かるため、楽しみながら取り組んでいた」「教員は配信するだけでテストを利用できて自動採点される。印刷や採点の手間が省け、業務効率が改善した」などの声を聞いています。

 MEXCBTによって、これまでは各自治体がそれぞれ独自に作っていた問題が、全国共通で活用できるようになるため、互いに使い合うことでテストの結果を分析したり、指導ノウハウの向上に生かしたりすることが可能になると考えています。学力調査だけでなく、学校でしばしば行われる「学校が好きですか」といった日常生活に関するアンケートなどを共有するのも便利です。

 また、MEXCBTには作問機能もあります。各学級の定期テストのレベルであれば、フォーム作成ツールなどを使う方が手っ取り早いかもしれませんが、学校を超えて問題を共有する際にはMEXCBTが便利です。例えば、自治体内で独自の問題を作ってMEXCBTに載せ、学校ごとの結果を分析するなどの使い方ができます。

――今後の課題は。

 現状、登録している学校は増えつつあるものの、まだ全国の学校の7割近くは登録していない状況です。学校設置者に向けた通知は出しているのですが、現時点でMEXCBTを活用しているのは、やはり1人1台端末の活用を十分な余力を持って進めている自治体が中心なのだと思います。中には高知県のように、独自の学習支援プラットフォームの中で、MEXCBTや県作成のデジタルツールなどを連携させ、デジタル学習環境を作り上げている先進的な事例もあります。

 来年度の全国学力・学習状況調査でのMEXCBTの活用に向けて、まだ登録していない自治体への周知を進めていく必要がありますし、先に述べたように、円滑な調査の実施を進めるために点検しなければならない技術的なポイントもいくつかあります。

 ただMEXCBTは、今後も国が予算措置を行い、自治体が引き続き無償で使えるようにしていく方針です。それぞれの自治体が別々にシステムの調達を行うより、国が一括して整備した方が、スケールメリットが働くためです。また、学習eポータルの将来的な活用の仕組みやコストなどについては、議論を進めている段階です。

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