【全国学力調査】学習指導要領の新規内容に課題 22年度結果

 小学6年生の「国語」「算数」「理科」、中学3年生の「国語」「数学」「理科」が出題された今年度の全国学力・学習状況調査の結果が7月28日に公表された。今回の調査では、現行の学習指導要領で新たに盛り込まれた内容を反映させた問題が多く出題されたが、その中には正答率の低さといった課題もみられた。出題された各教科の問題の解答状況を分析した文科省の報告書(速報版)から、今後の指導改善に向けたヒントを読み解く。

小学校・国語小学校・算数小学校・理科
中学校・国語中学校・数学中学校・理科

小学校・国語

相手とのつながりをつくる言葉の働きを捉えることに課題

 小学校「国語」の平均正答数は全14問中9.2問、正答率は65.8%で、「書くこと」についての問題が、「話すこと・聞くこと」や「読むこと」と比べ低かった。全体の傾向として、互いの立場を尊重しながら話し合いを進める上で、必要な質問を行って話のポイントを捉えることはできているが、学習指導要領で新たに示された、相手とのつながりをつくる言葉の働きを捉えることには課題があった。

 例えば、公園の美化に関する話し合いの場面を題材にした大問1。問二の、友達の意見に対して「確かに」や「なるほど、いいアイデアですね」のように発言した理由を選ぶ問題では、68.9%が「友達の意見のよさを伝え、認め合いながら話を進めるため」という正答を選ぶことができた。その一方で、「友達の意見に質問し、認め合いながら話を進めるため」(12.3%)や「友達の意見のよさを伝え、みんなの意見を一つにまとめるため」(11.3%)などの誤答も一定数確認でき、言葉には相手とのつながりをつくる働きがあることを捉えられなかった児童や、話し合いは意見を一つにまとめるためのものであるという意識の強い児童がいたと思われる。

文章の構成や展開について、感想や意見を伝え合うことを通して自分の文章のよさを見つけることを初めて取り上げた大問3の問二

 また、経験を基に考えたことを書く大問3の問二では、6年生として頑張りたいことについて書いた「島谷さん」の文章について、感想や意見を具体的に伝え合う活動を踏まえ、島谷さんの立場で島谷さんの文章の良さを60字以上100字以内で書くことを出題。文章の構成や展開について、感想や意見を伝え合うことを通して自分の文章のよさを見つけることを、今回の調査で初めて取り上げた。この問題の正答率は37.9%にとどまり、児童が条件に合う言葉や文を取り上げているものの、文章の良さについて触れていない誤答が3割程度みられた。

 これを踏まえ報告書に収載された授業アイデア例では、この問題を活用し、教師がペアで話し合っている様子を確認しながら、その状況に応じて指導や評価を行い、クラス全体で振り返ることを提案している。

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小学校・算数

3人に2人が、飲み物の量が半分になると、果汁の割合も半分になると誤答

 小学校「算数」の平均正答数は全16問中10.1問、平均正答率は63.3%だった。新学習指導要領で新たに設けられた「データの活用」の領域で、表の各欄と合計欄の意味を理解して、問われている項目に当たる数を求めることはできているものの、目的に合う円グラフを選び、読み取った情報を答えることには課題があった。

 例えば、目的に応じてデータの特徴や傾向を捉え、考察する大問3では、(1)で希望するお楽しみ会での遊びのアンケート結果から、「しりとり」の欄に入る数を求める式と答えを書く問題は75.5%が正答を導き出せていたが、(3)の1年生と6年生が希望する遊びの割合を調べるためのグラフを選び、そのグラフから一番割合の大きい遊びを選ぶ問題(正答率66.9%)では、グラフは適切に選べていたものの、一番割合の大きい遊びを正答の「縄跳び」ではなく「かくれんぼ」と誤答する割合が12.8%あった。

 また、日常生活の場面に即して、数量が変わっても割合は変わらないことへの理解にも課題がみられた。

日常生活の場面に即して、数量が変わっても割合は変わらないことへの理解に課題が明らかとなった大問2

 2つの数量の関係について考察する大問2の(3)で、果汁が含まれている飲み物の量を半分にした場合の、果汁の割合を尋ねたとき、「飲み物の量が2分の1になっても、果汁の割合は変わりません」という正答を選んだのは21.6%にとどまり、誤りである「飲み物の量が2分の1になると、果汁の割合も2分の1になります」を選んだ児童が67.7%もいた。

 この授業アイデア例として、報告書では果汁が含まれている飲み物をまずは2人で等しく分けた場合に、果汁の割合が分けた前後でどうなるかを児童に問い掛け、実際に飲み物の量が変わっても割合が変わらないことを計算で求めたり、飲み物の量をさらに変えても同じことが言えることを確かめたりすることが大切だと解説している。

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小学校・理科

問題解決の重視を踏まえ、「問題の見いだし」を初めて出題

 4年ぶりに実施した小学校「理科」の平均正答数は全17問中10.8問、平均正答率は63.4%だった。学習指導要領で重視されている問題解決の力を踏まえ、初めて出題した「問題の見いだし」では、気付いたことを基に分析して解釈し、適切な問題を見いだすことに課題がみられた。

初めて「問題の見いだし」を出題した大問1(5)

 例えば、自然の事物・現象を気付きの視点で分析・解釈する大問1の(5)で、育ち方と主な食べ物の二次元の表から気付いたことを基に、昆虫の食べ物に関する問題を見いだして選ぶ問題では、正答の「3 表のこん虫以外で、幼虫のときに植物も動物も食べるこん虫は、いるのだろうか」を選んだのは65.6%だったが、誤りである「なぜ、ゲンゴロウの幼虫や成虫は、動物を食べるのだろうか」を選んだ児童も15.4%いた。この場合、気付いたことを基に昆虫の食べ物に着目することはできているが、植物も動物も食べる昆虫に着目して、表を分析し、解釈して適切な問題を見いだすことができていないと考えられる。

 学校への質問紙調査では、児童生徒が観察や実験をする授業を行った頻度について、「週1回以上」と回答した割合が小学校で44.9%(前回の18年度調査比16.2ポイント減)、中学校で45.8%(同18.8ポイント減)と、これまでの増加傾向から減少に転じた。

 また、児童生徒への質問紙で、「理科の授業では、自分の予想をもとに観察や実験の計画を立てていますか」という問いに「当てはまる」「どちらかといえば、当てはまる」と肯定的に回答している児童生徒ほど、理科の平均正答率は高い傾向がみられた。

 観察や実験の頻度の低下について、文科省では、新型コロナウイルスの感染防止対策で、密集して行う実験を避けたことが影響しているとみている。同省総合教育政策局調査企画課の浅原寛子学力調査室長は「観察や実験の頻度と平均正答率の関係に相関はみられなかった。質問紙で尋ねたのは頻度のみなので、実際にどのような実験や観察を行ったのかという、内容面について見ていく必要があるのではないか」と強調した。

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中学校・国語

資料からの適切な引用の仕方に課題

 中学校「国語」の平均正答数は全14問中9.7問、平均正答率は69.3%だった。小学校の「国語」と同様、「書くこと」の正答率が低かったことに加え、新学習指導要領で新設された「情報の扱い方に関する事項」でも、他と比べて正答率が低い結果となった。

文書作成ソフトのコメント機能を活用する場面が想定された大問2

 例えば、先端技術との関わり方について、文書作成ソフトのコメント機能などを活用しながら意見文をまとめる大問2の問三では、スマート農業に関する資料の一部から必要な情報を引用し、意見文の下書きに書き加える際に、引用した箇所を適切に「」(かぎかっこ)でくくれていなかったり、「」でくくれていても文章をそのまま抜き出すことができていなかったりといった、引用の仕方を正しく理解していない誤答が4割程度あり、正答率は46.5%だった。

 この課題に関する報告書の授業アイデア例では、問題に使われた意見文の下書きに、さらに多くの人からのコメントを追加したものを用意し、引用の際に気を付けることを確認して各自で修正案を書く活動を載せている。

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中学校・数学

統計的内容の充実を受け、「箱ひげ図」を初めて出題

 中学校「数学」の平均正答数は全14問中7.3問で、平均正答率は52.0%だった。「データの活用」の領域で、多数回の試行によって得られる確率の意味の理解は改善の傾向がみられた一方、学習指導要領で統計的内容が充実したことを踏まえて、今回初めて出題した「箱ひげ図」からデータの分布の特徴を読み取ることには課題があった。

14年度の問題と比較して改善がみられたデータを活用した確率の問題

 データの活用を問う大問5では、容器のふたを多数回投げたときの回数の記録から、下向きになる確率を選ぶ問題で、83.6%が正答の「イ およそ0.6」を選択できていた。2014年度に出題した同様の問題の正答率は77.0%だったことから、改善の傾向がみられる。一方で、大問7のコマ回しの問題の(2)で、箱ひげ図の箱が示す区間に含まれているデータの個数と散らばりの程度について、正しく述べたものを尋ねたところ、正答である「ア データの個数は中央値を中心とする全体の約半数であり、データの散らばりの程度は、高位置よりも中位置の方が小さい」を選べたのは44.4%で、誤りである「ウ データの個数は高位置よりも中位置の方が少なく、データの散らばりの程度は、高位置よりも中位置の方が小さい」を選んだ割合も38.9%あった。これを選んだ生徒は、箱の中のデータの個数は全体の約半数ではなく、箱の横の長さが短い方が、箱に含まれるデータの個数が少ないと捉えていたと考えられる。

 この対応策として、報告書の授業アイデア例では、低位置、中位置、高位置からコマを20回ずつ回したデータを集め、そのデータの散らばり具合を見るために、表計算ソフトで実際に箱ひげ図を作成し、ドットプロットやヒストグラムとも比較しながら、データの特徴を説明する活動を掲載している。

 また、「関数」の領域で日常的な事象を数学的に解釈し、問題解決の方法を数学的に説明することに引き続き課題が残った。二酸化炭素量の削減の取り組みを取り上げた大問8の、二酸化炭素削減量の目標である300キログラムを達成するまでの日数を求める方法を、表、式、グラフなどを用いて説明する(2)では、「原点0を通る直線のグラフをかき、y=300のときのx座標を読む」などの正答にたどり着けていたのは39.0%に過ぎなかった。

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中学校・理科

他者の考えの妥当性の検討や実験計画が適切か検討・改善することに課題

 中学校「理科」の平均正答数は全21問中10.4問で、平均正答率は49.7%と5割を切った。15年度に出題し、正答率が39.6%と低かった実験の計画における条件の制御で、今回類題(大問1(2))を出したところ、正答率は78.8%と大幅に改善した。一方で、学習指導要領で科学的に探究する学習が重視されていることを踏まえ、探究の過程における検討や改善を問う設問を出したところ、他者の考えの妥当性を検討したり、実験の計画が適切か検討して改善したりすることに課題がみられた。

探究の過程における検討や改善を問う大問5(3)

 例えば、エネルギーの領域に関して押して使うばねを科学的に探究する大問5で、磁気ばねの実験で得られた考察の妥当性を高めるために、測定値の増やし方について、測定する感覚や範囲の視点から実験の計画を検討して改善できるかどうかをみる(3)の問題で、磁気ばねが縮む長さは、加える力の大きさに比例するかを実験し、2通りの考察が出たので、さらに測定値をどのように増やせばいいかを記述させたところ、「加える力の大きさを0Nから0.2Nずつ2.0Nまで変化させる」や「加える力の大きさを3.0Nにして測定する」といった正答例に至ったのは43.8%にとどまり、「おもりをより重いものにして測定する」「測定する間隔をもっと細かくして実験を行う」「何度も同じ実験を行い測定値を増やす」といった誤答が14.4%を占めた。これらの生徒は、測定値を増やして実験することは理解しているものの、具体的に数値を示した実験を計画できていないと考えられる。

 生徒への質問紙調査で、理科に関する興味・関心について尋ねた質問で、「当てはまる」「どちらかといえば、当てはまる」を合計した割合をみると▽理科の勉強は好きですか 66.4%▽理科の勉強は大切だと思いますか 77.1%▽理科の授業で学習したことを、普段の生活の中で活用できないか考えますか 52.9%▽理科の授業で学習したことは、将来、社会に出たときに役に立つと思いますか 61.8%――となり、肯定的に回答した中学生の割合は、いずれの項目も過去の調査と比べて最も高くなった。

 また、「理科の授業で、観察や実験の進め方や考え方が間違っていないかを振り返って考えていますか」という質問に、「当てはまる」「どちらかといえば、当てはまる」と答えた割合は68.0%で、前回の18年度の調査と比較すると、9.1ポイント上昇。同様に、「理科の授業では、自分の予想をもとに観察や実験の計画を立てていますか」との質問に、「当てはまる」「どちらかといえば、当てはまる」と肯定的に答えた生徒は64.3%で、18年度よりも5.9ポイント上回った。この質問に肯定的に回答した生徒ほど「理科の勉強は好きだ」と回答する傾向があった。この傾向は、小学生でも同様だった。

 中学校「理科」の平均正答率は、18年度の前回調査の平均正答率(66.5%)よりも大幅に下がった。これについて、国立教育政策研究所の鈴木敏之次長は「単純な比較は意味がない」とした上で「当然ながら多くの課題を示唆する結果だろうと受け止めている」と指摘。その理由の一つとして「今回の指導要領では科学的に探究する学習が極めて重視されているので、実際にこの問題の中では、批判的思考に基づいて話し合い活動をしたり、結果が予想と異なった場合を想定して観察、実験をどうするかを考えたりしている。通り一遍の観察実験とは異なり、教科書にもあまり載っていないような場面設定をしている。その辺りが十分、生徒の方からすると対応しきれなかった部分があるのかなと思う。(全国学力調査の問題には)望ましい授業のメッセージを示すという性格があるが、その意味では高めの球を投げている」と、見解を述べた。

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