小学校はICT、中学校は協働を重視 指導要領の実施状況を報告

 中教審は7月29日、教育課程部会を開き、学習指導要領の実施状況について、全国連合小学校長会(全連小)と全日本中学校長会(全日中)がそれぞれ学校長を対象に行ったアンケート調査の結果報告を受けた。全連小の大字弘一郎会長(東京都世田谷区立下北沢小学校長)は、小学校の校長が「ICTの利活用や情報教育」を最重視して学習指導要領の着実な実施を図っており、それを実現するために教員の指導力向上を目指した研修に取り組んでいる、との調査結果を説明。全日中の平井邦明会長(東京都台東区立忍岡中学校長)は、中学校の校長が「主体的・対話的で深い学び」の指導方法として「子供同士の協働」を最も重視している一方、「指導方法の理解や研修機会」や「教材研究を行う時間」の確保に頭を悩ませているとの調査結果を報告した。

オンラインとのハイブリッドで行われた中教審教育課程部会

 全連小の調査は、小学校における新学習指導要領の全面実施から2年目となる昨年7月から9月にかけて、747校の校長を対象に実施した。学習指導要領の着実な実施に向けて重点的に取り組んでいる内容を3つ以内の複数選択で聞いたところ、「ICTの利活用や情報教育」を挙げた校長が90.9%に上り、次に「特別な配慮を必要とする児童への指導」が59.3%で続いた。近年、重点が置かれていた道徳教育は23.2%、外国語教育は18.3%、プログラミング教育は9.2%に減った。

 大字会長は「2021年度は国の動静を受け、早急に取り組みが行われたICT、情報教育や、これまでも課題となっている特別支援教育に関して重点的に取り組んでいる学校が多く、逆に外国語活動、道徳教育、プログラミング教育は、これまでの取り組みにより、日常的に進められるようになってきている」と説明した。

 こうした重点的に取り組んでいる教育内容の充実に向けて行っていることを聞いたところ、「教員の指導力向上を目指した研修」が「ICTの利活用や情報教育」で95.6%、「特別な配慮を必要とする児童への指導」で82.8%など高い割合を占め、「校長は、教員の指導力向上が全ての教育内容の充実の土台となると考えている」(大字会長)ことが浮かび上がってくる。

 ウィズ・コロナ時代に向けた学校現場の課題意識を探るため、コロナ禍の下で学習指導要領を着実に実施するための課題を3つ以内の複数選択で聞いたところ、トップは「多様な地域人材の活用や連携」(55.3%)だった。「調査の実施時期が7月から8月という感染拡大が急速に進む時期であったことから、学校支援ボランティアなどの学校外の人材との交流を極力控えようとする意識が強く働いているものと考えられる」(同)という。次が「探究的な学びの充実を図った授業改善」(49.4%)で、児童同士の対話による感染拡大の不安がある中、探究的な学びの充実に苦慮する様子がうかがえる。

 3番目に多かったのが「ICT環境の整備とICTの効果的活用」(43.9%)で、背景には「各自治体の導入や進捗(しんちょく)状況に差が生まれ、通信環境の不安定さから活用に支障が出たケースや、指導者の活用能力の差が大きく効果的な活用が不十分なケースなどが考えられる」(同)。このほか、「教科横断的な視点からの教育課程の編成・充実」(30.4%)、「スタートカリキュラムを活用した幼児教育と小学校教育との接続の教科」(22.0%)、「教科担任制の導入」(15.5%)、「特別支援教育に関する教員の専門性」(14.5%)、「学習指導要領の趣旨理解を図る校内研修」(9.9%)と続いた。

 全日中の調査は、中学校での新学習指導要領の全面実施から半年たった昨年10月に、544校の校長を対象に行われた。「主体的・対話的で深い学び」により、生徒のどのような面の向上が図られるかを複数回答で聞いたところ、「思考力・判断力・表現力等」が86.0%、「協力・協働する力」が79.2%、「学習意欲」が77.9%、「コミュニケーション力」が72.1%で上位を占めた。

 平井会長は「『思考力・判断力・表現力等』は毎年1位になり、上位はいつも変わらない。その中で、『情報活用能力』(45.0%)については、年々数値が高くなっている。生徒同士がグループワークなどを行う際に、ICT機器を活用する場面が増えてきていることによるものと考えている」と説明した。

 次に「主体的・対話的で深い学び」の指導方法で重視して取り組んでいる学習を聞いたところ、ディスカッションやグループワークなど「子供同士の協働」が83.6%、次に「見通しをもって粘り強く取り組み、自己の学習活動を振り返って次につなげる学習」が65.1%で、他の学習よりはいずれも40%以下だった。「主体的・対話的で深い学び」の指導方法として中学校では「子供たちのグループ活動による『協働』に力を入れて取り組んでいる」(平井会長)という結果になっている。

 こうした「主体的・対話的で深い学び」を実施する上での課題を聞くと、「指導方法の理解や研修の機会」が68.9%、「授業のための教材研究を行う時間」が65.8%、「授業における適切な学習評価の実施」が55.5%と続いた。「どうしても研修の機会とか、教材研究を行う時間がもう少しあれば、という回答が続く。働き方改革や超勤削減との兼ね合いが難しい、という声を聞いている」(平井会長)という。

 「カリキュラム・マネジメントの充実」について、実施できている内容を聞いたところ、「教育課程の実施状況を評価してその改善を図っていくこと」が84.0%と、8割以上の校長が実施できていると答えた一方、「教科等横断的な視点で組み立てていくこと」は36.4%、「必要な人的または物的な体制、および時間を確保すること」は33.8%にとどまった。

 平井会長は「あとの2つの選択肢については、3分の2の校長が『順調にできているとは言えない』と感じている。これは過去4年間をみてもなかなか上がってこない」と課題を指摘。教科等横断的な視点でカリキュラム・マネジメントを組み立てていくことが難しい理由について、「中学校の教科担任制の壁を取り外していくことが大きなポイントの一つだったが、その部分が校内研修などを通じても、なかなか打ち破れていない。これは意図的に仕掛けをして、順調に実施できていると答えることができるようにしていかなければならない」と述べた。

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