「課題自体を発見し解決するのが探究学習」 理念と実践について講演

 日本最大級の教育イベント「未来の先生フォーラム2022」(同実行委員会主催、教育新聞社共催)の3日目に当たる8月3日、追手門学院中・高校(大阪府茨木市)の探究科主任の池谷陽平教諭が同校の探究科のカリキュラムなどを示しながら、「探究学習の理念と実践」について講演した。池谷教諭は「SDGsのような、世の中にすでにある問題を解決するのではなく、課題自体を発見して解決するのが探究だ」と述べた。

 同校では、2020年に教科として「探究科」がスタートし、現在、6人の教員チームが中学1年生から高校3年生までのカリキュラム作りから実践までを担当している。

 池谷教諭は探究学習について、「豊かな人生を切り開くこと、持続可能な社会の創り手となること、これが上位目標」と話し、そのために▽自分の良さや可能性を認識する▽他者を価値のある存在として尊重する▽多様な人々と協働しながら、さまざまな社会的変化を乗り越える――といった経験が必要だと説明。

 「他者と協働しようと思ったら、必ずそこには課題が生じる。例えばSDGsのような、世の中にすでにある問題を解決するのではなく、他者と協働しながら課題自体を発見し、解決するのが探究だと思っている」と、探究学習をする上で大事にしているポイントを解説した。

 また、「中高生くらいになると、何かをやる前に『これは自分にとって必要かどうか』を考えて、やらない判断をしてしまうことがある。そうではなく、まずやってみて、それから考えるような経験をたくさん重ねていってほしい」と、「取りあえずやってみる」というマインドセットから始めることを大切にしていると話した。

探究科の授業の仕組みについて説明する池谷教諭

 同校では中学1年から高校3年までそれぞれテーマを設け、探究科のカリキュラムが組まれている。授業は「インプット」「アウトプット」「共有」「振り返り」「意味付け」を繰り返す仕組みで、池谷教諭は「取りあえずやってみた経験を振り返ることで気付きがある」と、振り返りの重要性を強調。

 具体的には、インプットとして「好き大切108」という自分の好きなこと・ものなどを108書き出すといった取り組みをする。そうして浮かび上がった自分の価値観を、写真やコラージュなどで表現することでアウトプットし、それをみんなで共有していく。「自分が気付かないような視点や発見をしてくれる意見に触れ合うと、自分の価値観や世界観はまだまだ狭いと思った」といった気付きを生徒たちは得ているという。

 参加者からの「カリキュラムなどのアイデアはどうやって出てくるのか」との質問に対し、池谷教諭は「基本は、探究科6人の教員でブレストすること。とにかくたくさん意見を出す。教員はそれぞれ違う経験をしてきているから、ブレストしてみるときっとアイデアはたくさん出てくるはず」とアドバイスを送った。

 また、探究科の授業に関するアンケート結果も紹介。高1の生徒は「探究の授業は楽しい」が97.4%、「探究の学びには意味がある」が95.2%で、「個性を出せるから楽しい」「勉強ではなく、学びを見つけるという印象があって、授業の内容も画期的で面白い」といった意見が目立つ。

 しかし、高2になると「探究の授業は楽しい」が71.2%、「探究の学びには意味がある」が77.9%、高3になるとそれぞれ70.6%、75.8%と、肯定的な意見がやや低下してくる。「将来何に生かせるかが、いまいち分からない」「どちらかと言えば受験勉強をしたい」という意見も散見されるようになり、これは中学校でも同様の傾向がある。

 こうした生徒たちの反応について、池谷教諭は「カリキュラム自体は安定してきたが、高学年で共通しているのは、意味を考え始めるということ。受験を意識することで、モチベーションにも差が出てくる」と分析。

 「探究では、自分事になり得るための授業をすることが本質だと考えている。日本では、ほとんどの子どもたちが幸せで何不自由ない生活を送っている可能性が高い。その中でやりたいことや課題がないというのは、ある意味、当然のこと。だからこそ、取りあえずやってみてテーマを探す。常にアンテナを張ったり、感度を上げたりしておくことで、何かに出合った時に、それを子ども自身がつかむことができる。その環境をつくるのが教員の役割であり、そのためには教員のチーム作りも欠かせない」と強調した。

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