「たくましさとしなやかさを身に付けるために」 PBLの理論を説明

「たくましさとしなやかさを身に付けるために」 PBLの理論を説明
広 告

 日本最大級の教育イベント「未来の先生フォーラム2022」(同実行委員会主催、教育新聞社共催)でこのほど、慶應義塾大学の田中茂範名誉教授が「Project-based Learningの理論と実践」をテーマに講演した。田中名誉教授は予測できない世界を生きていく力を育むために学校教育でPBLが求められているとし、「さまざまな課題を探究するために、ディスカッション、プレゼンテーション、リサーチの技法を学ぶ時間を確保し、そしてPBLの中で実践知としての技法を身に付けるべきだ」と述べた。

PBLの理論について説明する田中名誉教授
PBLの理論について説明する田中名誉教授

 田中名誉教授は、これからのグローバルな世界において、対立やジレンマを乗り越えるには対話が重要になってくるとし、「今から30年後の世界がどうなっているかは不確実で予測できない。そうした世界を生きていくには、どんな状況でもたくましさとしなやかさが必要で、そのために学校教育には課題探究が求められている」と強調。そうした学習において授業の仕組みを変えていくためには、生徒が「Meaningful」で「Authentic」で「Personal」と思える活動を提供する必要があると説明した。

 また、現在の高校の教育が抱える問題は①教科の分断化②教科教育と社会的現実の結びつきの弱さ③学習活動や演習の目的の不透明さ④評価システムの問題⑤受験志向――の5つに大別することができると分析。生徒の「Meaningful」「Authentic」「Personal」を満たしながら、教科横断、主体的・対話的で深い学び、そして社会との関りを教育の中で実現する方法がPBLだとした。

 さらに田中名誉教授はPBLを「ディスカッション、リサーチ、プレゼンテーションの相互作用を通して実践される活動」だと説明。ディスカッションとは、「何であるか」「何ができるか」「何をすべきか」について話し合う行為であり、プレゼンテーションとは、自己表現の究極の形で、表現者として鍛えるための方法でもあると解説。リサーチについては「いわゆる調べ学習とはニュアンスが異なる。調べ学習はやらされている感が強いが、リサーチとはもっとPersonalな動機付けですること。自分の常識を問い直す行為でもあり、自分で発見したことはまさにオリジナルだ」と考えを示した。

 またPBLの実践のためには、授業の中でディスカッション、プレゼンテーション、リサーチのスキルを身に付ける時間を確保し、PBLの中で実践知としての技法を身に付けることが必要だとし、「常識をあえて問い直すリサーチ力、自分の思いを明確に相手に伝えるプレゼンテーション力、他者との違いを乗り越え、魅力的なアイデアを創り出すディスカッション力。この3つはグローバル社会をたくましく、そしてしなやかに生きるための必要不可欠な技能であり、生涯にわたって使える技法だ」と述べた。

 最後にOECDが示したEducation2030のラーニングコンパス(学びの羅針盤)にも触れ、「学びの羅針盤を教育的文脈で実践するには、PBLが最有力候補だ」と締めくくった。

広 告
広 告