
大臣就任初の10月2日の記者会見で、戦前の教育勅語を擁護した柴山昌彦文科相が逆風にさらされている。社民党の又市征治党首は4日、「時代錯誤も甚だしい、憲法を顧みない発言だ」と批判し文科相の罷免を求めるなど、臨時国会を前に野党は反発を強めている。
逆風のきっかけは、文科相が初閣議後の記者会見で教育勅語に対する考えを問われ、「現代風に解釈をされたり、アレンジをしたりした形で、例えば道徳などに使うことができる分野は十分にあるという意味では、普遍性を持っている部分が見て取れる」と踏み込んだからだった。
さらに「(教育勅語の)どの辺が今も十分に使えると考えているか」と聞かれ、「同胞を大切にするとか、国際的な協調を重んじるとか、そういった基本的な記載内容についてだ。これを現代的にアレンジをして、教えていこうということは検討に値すると考えている」と述べた。
文科相は自民党総裁特別補佐だった8月半ば、自身のツイッターに「私は戦後教育や憲法のあり方がバランスを欠いていたと感じている」と記載していた。記者会見の発言と相まって、主要野党の間に批判と不信感が一気に広まった。「認識違いが甚だしい。そのひと言で、昔だったらすぐクビだ」(立憲民主党の辻元清美国対委員長)「全体としての教育勅語は、さまざまな歴史的な負の遺産として認識されている。文部科学大臣の就任時の発言としては少し軽率だ」(国民民主党の玉木雄一郎代表)「非常に重大な発言だ。『教育勅語の中にも使える部分がある』というのは、政府によっても公式に否定された問題だ」(共産党の志位和夫委員長)と批判のボルテージは上がる。

菅義偉官房長官は3日午後の記者会見で「文科大臣の発言の真意や意図まで承知しておらず、コメントは控えたい」と述べる一方、「教育勅語は、日本国憲法、教育基本法の制定をもって法制上の効力は喪失していると考えている。政府としては、積極的に教育勅語を教育現場に活用しようという考えはない」「一般論として、教育については教育基本法の趣旨を踏まえながら、学習指導要領に従って学校現場の判断で行うべきだし、柴山大臣はそういう発言をしたのではないか」と火消しに回っている。
波紋の広がりを受けて文科相は5日の閣議後の記者会見で「教育勅語を復活させるということを言ったのでは決してない。政府レベルにおいて、教育現場に、教育勅語の活用を推奨したり指示したりすることを念頭に置いて発言したものではない」と釈明した。
「臨時国会では安倍首相の任命責任を厳しく追及していく」(社民党)との声が上がっていることから、文科相にとって臨時国会が正念場になりそうだ。「全員野球内閣」(安倍首相)の主力メンバーであるだけに、逆風はしばらく治まりそうにはない。