(本紙解説陣が見る 教育ニュース振り返り)国立教育政策研究所教育研究情報センター総括研究官 千々布敏弥

提言の背景には時代の変化 学びへの視点で授業研究を

昨年、教育界で話題になった第一はアクティブ・ラーニング(AL)だろう。次いで高大接続、チーム学校といったところか。また教育再生実行会議など官邸で開催される会議資料にはAI(人工知能)の文字がちりばめられ、ICTと並び大きな潮流になりそうである。

アクティブ・ラーニングは一昨年暮れに学習指導要領改訂に関する中教審諮問で登場して以来、教育雑誌の特集、講演会、校内研究のテーマ等、あらゆるところに登場している。教育界の流行語大賞まちがいなしだ。この言葉の便利なのは、多様な概念、考え方、実践が一言でくくられるところである。だから、「これこそが(わが説こそが)アクティブ・ラーニングだ」との言説が各所で登場する。多種多様な説が登場するから「なんだこれは」と批判の声も出てくる。このブームに乗る言説とブームを批判する言説の相乗効果が、現場をよくする方向に行くのであればいいのだが、おそらくは多くの教育関係者は「要するにどうすればいいんだ」と思っていることだろう。

それでも、アクティブ・ラーニングを標榜する授業では、子どもの学びが活性化している。そうでなければアクティブ・ラーニングとはいえないのだから当然だろうが、指導法にこだわるあまり、子どもの学びへの視点が置き去りにされている多くの研究授業を変える視点を、この言葉は提起している。

従来から子ども中心の指導法が提案されても、「入試が……」が、旧来の講義形式にこだわる教師の常套句だった。高大接続改革は、アクティブ・ラーニングを通じて身に付けたこれからの時代に必要とされる学力をきちんと評価するために実施しているものである。

アクティブ・ラーニングにしても高大接続にしても、提言された背景には時代の変化がある。PISAのコンピテンシー概念を説明するときに、シュライヒャーOECD教育局長は「今、需要の多い10の職種は04年まで存在していなかった」と述べた。下村博文前文科相は「子どもたちの65%は大学卒業後、今は存在していない職業に就く」「今後10~20年程度で、約47%の仕事が自動化される可能性が高い」という米国研究者の説を引用して、新学習指導要領や高大接続改革の必要性を説いた。

一昨年暮れに、AIの普及によって今の職業の半数がなくなるかもしれないとの民間シンクタンクの研究成果の報道が流れたが、AIが普及せずとも、職業が変化する速度が加速しつつある状況は避けられないだろう。

ICTを使用した教育は、MOOK、反転授業などがポピュラーになりつつある。アクティブ・ラーニングを支援するICTも開発されつつある。もっともこれらの機器が教室に定着するのはかなり先になるだろう。ICTはハード、ソフトとも使用法が限定されるものが多く、板書とノートを主体とした授業の利便性を上回るにはまだ時間がかかるはずだ。板書は海外で〝bansho〟と紹介されるように、日本独自の教育文化である。ただ、計算問題のチェックを待って教師の前に並ぶ子どもの列を見て、ここでiPadがあったらなどと思う場面は少なくない。日本の教育文化を尊重したICTの導入が工夫されるべきだろう。

チーム学校という言葉は、学校がチームとしてまとまるとの文脈に加えて、学校に教員以外のスタッフを配置し、教員とチームとなって学校教育に従事するとの意味合いが含まれている。この言葉が登場した背景にも子どもの教育ニーズが多様化している時代の変化に合わせて学校の人的リソースも変わらないといけないという認識がある。

今年は、どんな流れになるのだろうか。

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