全国学力調査を生かす 目的と趣旨の丁寧な説明を

文科省は、4月に実施した今年度全国学力・学習状況調査の結果を公表した(本紙8月27日付既報)。各メディアは「学力テスト」として扱い、学力調査をまさに学力テストとしてとらえ、公立高校入試に利用しようとする大阪府のやり方を国が認めたことについても報じている。これでは読者が、学力調査の学力観と受験の学力観を同列のものとしてとらえてしまう。

 平成19年度から実施しているこの全国調査について、文科省では、単に学力だけでなく、質問紙法による学習状況も併せて調べ、その結果については教育施策に活用することなど、調査の目的・趣旨はかつての学力テストとは異なることなどを実施要領で明らかにしている。さらに学力調査の対象とする教科も、国語と算数・数学など他の教科を学ぶ上での基礎となる教科とし、出題範囲も基礎学力に限定していることも明示している。

 また学力調査としての扱いとして、問題ごとに配点せず、正答・誤答のみを採点し、結果の公表については都道府県別の平均正答率とするなど、競争や序列化といった扱いを避ける配慮をしている。

 それにもかかわらず、今回もメディアの見出しは相変わらず「学力テスト」で、正答率の高い県などの序列の話題が前面に扱われていた。

 仄聞するところ、正答率の低い県では、教委や議員などが結果を踏まえて次年度に向けての対策を小・中学校長に求めているとのことである。ある学校では、学力調査の時期になると過去問を使って対策を講じたり、学力調査対応のテスト教材を業者に求めたりするなどの実態もあるようである。学校現場で学力調査の目的や趣旨から逸脱した取り組みがなされているとしたら、調査結果の信頼度は低い。

 全国学力・学習状況調査は、毎年4月の第3週に、小学校6学年と中学校3学年の全児童生徒を対象に実施され、学校としては一つの行事として定着している。9回目となれば、過去の調査結果は教育施策や授業改善に活用されている。すでに過去の調査結果に基づき児童生徒の学習に関わる課題や家庭生活における問題点が浮き彫りにされているなど、教委や学校現場ではそれなりの対策を立て、改善の成果も上げているようなので、調査の目的は一応達成されていると思われる。しかし、メディアは、調査結果による序列化や競争をあおるような報道をし、保護者や教委、地方議会関係者などが調査結果に一喜一憂している。

 国は、この調査を教育施策に生かすのであれば、調査の目的・趣旨を丁寧に説明すべきであろう。特に学力調査については、調査で測定できる学力は、ある部分にすぎないことを、事例によって誰もが納得できる手立てを打つべきである。あるメディアはB問題を応用問題として扱うなど実施要領を適切に理解せずに報道し、読者はメディアの報道を真に受けている。

 なぜ小学校6学年と中学校3学年の全ての児童生徒を対象として4月に実施するのか、A問題とB問題とは、何が、どのように違うのか、さらに、平均正答率を公表することによって教委や学校現場に何を求めようとしているのか。またなぜ、今回は理科を対象科目としたのかなどについて、保護者や一般の人々にも理解できる丁寧な説明が必要である。調査結果を授業改善や生徒指導に生かすことをねらいとするならば、結果公表はせめて7月中旬にならないか。8月下旬の公表では、2学期の学校運営に活用するにはあまりにも遅すぎる。