子どもたちの夢こそ大事に 幻の蒸気機関車C63に接して

全国各地の小・中学校では、体育の日を中心に、趣向をこらした運動会や秋のイベントが繰り広げられる。

 東京都心の中央区では、10月18日の区主催のユニークな「第36回子どもフェスティバル」開催に向けた準備が進む。区は区内小学生を対象にPRポスターを募集し、開催当日に入賞者を表彰する。同フェスタ実行委員会事務局によると、今年の応募者は昨年の404点を上回った。プログラム(昨年)は、サッカーPK戦、迷路、ミニ蒸気機関車(SL)をはじめ、おもちゃやエコバッグ作り、妖怪ウオッチング、囲碁・将棋、エアアスレチックなど盛りだくさん。

 会場は浜町公園、運動場、総合スポーツセンターの3カ所にまたがり、昨年は1万200人にのぼる来場者が詰めかけた。

 年々増える来場者のお目当ての一つが、幻の蒸気機関車「C63」のミニSLだ。日本の鉄道は、明治5(1872)年に東京・品川~横浜間に開通し、大正時代の機関車の国産化、昭和50年代初め(1970年代半ば)の保存館入りまで、1世紀以上にわたり蒸気機関車が支えてきた。黒煙を上げ、力強く各地を走ったSLに、日本の歩んだ興亡の歴史と人生を重ね合わせ、多くの人々のノスタルジアをさそう。

 SLは機関車の動輪数によりA型からE型まである。有名な「D51」(でごいち)は動輪が4輪。3輪の「C63」は1950年代に製造が計画されたが、電化やディーゼル化などの影響で製造されなかったので、「幻の蒸気機関車」と呼ばれている。

 同区子どもフェスティバルで人気のミニSL「C63」は、自動車整備会社を経営する石山俊彦さん(57)の亡き父親、禎助さんが入手したC63の設計図をもとに知人に制作してもらい、13年ほど前からミニSL「C63」が、子どもたちの夢を乗せて走っている。浜町運動場に、一周180メートルのレール(幅員約40センチ)を敷き、実物を10分の1に縮小した機関車が客車4両を引っ張る。機関車の長さは約2メートル、客車は約1・5メートル。客車には1回の運行で合計20人を目安に乗せる。1客車あたり大人だと5人、子どもなら7、8人程度だ。

 昨年、機関士と修理は、製作所を経営する石山さんより年輩の伊藤弘一さんが主に担当した。実物の蒸気機関車には、燃料の石炭と水を搭載するテンダー(炭水車)が付いている。ミニSLには余裕がないため、機関士席に石炭箱と水槽を設置して手狭であり、石炭を炊き、水を供給し、蒸気圧を一定に保つ作業が難しい。

 昨年は、朝10時から午後2時までの4時間、ほとんど休みなしに走らせ、1300人から1500人を乗せた。途中で故障したので、今年は休憩時間を入れ、3時間走行の予定である。

 幻のミニSL「C63」の機関士を務める伊藤さんは「モノづくりが大好きな」技術者で、「子どもたちの喜ぶ顔を見るのがうれしい」と語る。

 石炭は終戦後「黒いダイヤ」と呼ばれ、日本が戦後復興を果たすエネルギー源でもあった。だが、石山さんは「毎年、何人か客車の一番前の席でなければいやだという乗客がいる。本当に石炭で走るのと質問し、石炭をくべる所から離れない子どもがいる」と言い、「子どもだけでなく、20代から30代の父親も石炭を知らない世代が増えている」と時代の落差に驚いている。

 古いものが新しく興味を引き出す。とかく新しさには飛びつきがちだが、子どもたちの夢は、どこからでも紡ぎ出せる。その妙味を大事にしたいものだ。