キャリア教育の展望を 不易なのか流行なのか

キャリア教育が公式に提唱されたのは、平成11年の中教審答「初等中等教育と高等教育との接続の改善について」である。この答申は、「フリーター」の言葉で知られているように、新規学卒者、若年者の雇用や就労問題が顕在化したことを受けたものであった。

 その後、キャリア教育の学校教育への具体化、カリキュラム化に向けた検討が進められ、その成果は、国立教育政策研究所生徒指導研究センターが平成14年にとりまとめた「4領域8能力」として示されることになる。職業観や勤労観の形成に資する能力を「人間関係形成能力」「情報活用能力」「将来設計能力」「意思決定能力」として整理し、小・中・高校で求める能力・態度を示したものであった。カリキュラム作成のためのフレームワークを示したものとして、意義のある提言であった。

 一方、キャリア教育推進の施策は、職場体験推進のための「キャリア・スタート・ウィーク」事業が、平成17年度から展開された。教育基本法と学校教育法の改正後には、「勤労を重んずる態度を養うこと」や「個性に応じて将来の進路を選択する能力を養うこと」が規定された。20年・21年改訂の学習指導要領では、高校学習指導要領の総則に「キャリア教育」の文言が示されている。ただ、小・中学校の学習指導要領には、キャリア教育との関連を明示した記載は明確でないと考える。

 その後、「4領域8能力」が学校で画一的に運用されている実態があり、高校までにとどまっていることなどの課題が指摘され、中教審は23年に「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方」を答申し、新たに4つの「基礎的・汎用的能力」を提示した。それは、「人間関係形成・社会形成能力」「自己理解・自己管理能力」「課題対応能力」「キャリアプランニング能力」であり、それぞれの趣旨と同時に、「具体的な要素」を示している。

 以上のキャリア教育の流れを学校教育の観点から捉えると、次の課題を指摘できる。第一に、学習指導要領の改訂後に、23年答申で能力像が示されたことである。そのため、ここで掲げられた「基礎的・汎用的能力」については、学習指導要領の解説では当然のことながら触れられていない。せっかくの提言を学校の教育課程にどのように具体化していくかは、国立教育政策研究所その他で作成したさまざまな資料などに頼るしかない状況であった。

 第二に、「4領域8能力」が「基礎的・汎用的能力」に改善されたが、その違いや趣旨が、カリキュラム化する際に、真に理解されているかどうかという点である。各学校は答申が出されれば、それに従うことが当然といった形で教育計画を立てる。答申が出される以前は、「4領域8能力」に基づいてキャリア教育を計画していた学校が多かったと推測される。

 今後、これまで推進してきたキャリア教育を、どのように評価し、位置付けるのかを明確にすることが必要である。キャリア教育を今後も〝不易〟の取り組みとするのか、結果として〝流行〟の取り組みとしてしまうのか、方向性を定めることが必要である。また総則の「指導計画の作成等に当たって配慮すべき事項」に位置付けるのか、その他の方法が考えられるのかといった具体的なことも大切である。

 今回は前回のように改訂時期と答申時期が前後しないよう、整合した取り組みを求めたい。