一億総活躍社会 教育の充実を大きな要素に

安倍晋三総理は10月7日に発足した第3次改造内閣に当たり、少子高齢化など日本の構造的な問題に真正面から挑み、新たな国づくりとして「一億総活躍社会」を目指すと表明した。その実現のために「希望を生み出す強い経済」「夢を紡ぐ子育て支援」「安心につながる社会保障」を〝新三本の矢〟と位置付け、担当大臣を中心にそれぞれの目標に向けて多岐にわたる政策を総動員して取り組むことを約束した。

 この政策に関して、野党などから「一億総活躍と言うが、何を意味しているのか分からない」「戦前の標語を想起させて復古的だ」「活躍したくない人もいるのに活躍を強制するのはどうか」など、拒否反応も多く出されている。
 これに対し総理は、10月29日に開かれた一億総活躍国民会議の初会合で、「若者もお年寄りも、女性も男性も、障害のある方も、また難病を持っている方も、あらゆる方々、例えば一度大きな失敗をした人もそうですが、みんなが活躍できる社会を創るために、それを阻むあらゆる制約を取り除いていきたい」と述べている。

 この〝新三本の矢〟のうち、「子育て支援」、すなわち「教育の充実」を重視している点に着目したい。総理は11月4日に開かれた政府の教育再生実行会議で、「不登校や発達障害、家庭の経済力、学力の問題など、子どもたち一人ひとりの状況にきめ細かく対応した教育について、さらに議論を深めていくことが必要だ」とした上で、「一億総活躍社会の実現は、子どもたちがそれぞれの個性やよさを生かしていくことができる社会を作っていくことであり、教育の役割は大変重要だ」と述べた。この中で、特に、子どもたちの多様な個性を生かす教育の在り方に言及した点が、注目される。

 この「一億総活躍社会」の実現に向けて、文科省も早速反応を示し、厚労省とともに、省内に「一億総活躍社会実現本部」を設置するなど、本格的な取り組みを開始した。馳浩文科相は10月16日の経済財政諮問会議で「一億総活躍社会の実現に向けて」と題する資料を提示、(1)出生率の向上(2)貧困の連鎖を断つ(3)特別な支援の充実――の3つの目標を掲げ、「教育投資の効果」を強調するとともに、フリースクール義務教育化や夜間中学校の増設など、具体的な政策に言及している。
 中教審でもこの問題に着目、「チームとしての学校・教職員の在り方に関する作業部会」が11月4日にまとめた答申素案で、「学校が抱える課題」の解決に言及、「一億総活躍社会の実現が政府の課題となっている。この課題を達成し、将来にわたって、すべての国民が活躍していくためには、一定水準以上の教育の機会が確保され、それぞれが持っている力を発揮できるような素地を作っていくことが不可欠である。そのためには、今まで以上に、一人一人の子どもに時間と手間をかけて、個に応じた重点的な学習指導や分かる授業の充実により、学力を保障していくことが求められる」としている。

 安倍総理の今回の政策表明は、確かに意味不明な部分もあるが、基本的には支持したい。特に、「教育の充実」を国民全体が活躍するための重要な要素として位置付けたのは、大いに評価したい。ただ、今後の具体的な教育政策は、総理に任せる事柄ではなく、国民全体、とりわけ教育関係者が考えるべき課題なのである。そのためにも政府には、教育への財政支援など、ハード面の充実に力を注ぐ責務がある。