いじめ再調査 学校管理職の指導力発揮を

文科省は児童生徒の問題行動等に関する調査結果を、毎年9月に公表している。今年度は、いじめについて再調査を行い、その結果を10月27日に公表した(本紙10月29日付既報)。問題行等調査では、児童生徒の暴力行為、いじめ、出席停止、不登校、自殺等を扱っている。今年度の調査結果からは、小学校低学年の暴力行為の増加が、新たな課題としてあげられる。

 いじめについて再調査を実施した背景には、いじめを苦に自殺した生徒が、生活記録ノートにいじめをうかがわせる記述をしていたにもかかわらず、いじめと認知されていなかった現実がある。再調査の結果、小・中・高・特別支援学校全体で前年度よりも2254件増の18万8057件、全体では再調査前よりも3万件増加。このような差異が生じた背景には、いじめが複雑な要因・背景を抱え、教師にとっては大変悩ましい問題であるからといえる。

 教師個々が何をもっていじめととらえているか。「いじめ防止対策推進法」第2条に「当該行為の対象となった児童等が心身の苦痛を感じているものをいう」とあるように、いじめが被害児童生徒の主観的な判断によるものとしているところに認知の差異が生じたものと考えられる。いじめに対しては、教師一人ひとりが学校生活の日常で児童生徒と向き合う時間を確保するという教育環境の整備と、鋭敏な感覚によって児童生徒の内面を鋭くとらえる教師の資質が問われる。いじめが被害児童生徒の主観的な判断によるので、その対応は特別解を求めるようなもの。全てのいじめに通用できる一般化した対応策は成り立たない。いじめは、学校生活、特に学級生活や部活動の中で起こる場合が多いので、その対応には、学級担任や部活動顧問など教師一人ひとりが、いじめを許さない明確なメッセージを常に発していることが重要である。

 同推進法では、いじめに対しては学校の基本方針を策定し組織的な取り組みを必須としている。いじめ再調査の結果、基本方針はいまだ全ての学校で策定されていないようである。いじめの早期発見のために児童生徒から直接状況を聞くアンケートの実施も関係法令で規定しているが、十分に対応していない学校もある。法令によるいじめ解消のための環境条件が整えられても、適切に運用されなければ問題の根本的な解消は難しい。

 いじめは、学校生活における児童生徒間の人間関係から始まる場合が多く、初期の対応は学級担任等の教師が行う。教師集団が関係法令等に関していじめとその対応について共通理解を図り、学校の基本方針に従うとしても、教師一人ひとりのいじめに対応するミッションもスキルもストラテジーも一様ではない。そこで学校管理職は、教師個々のいじめへの対応状況を把握し、組織の一員として逸脱しない望ましい方向に進められるよう、常に指示や制止、警告、助言を当該の教師の個性・特性に応じて発することが重要と考える。さらに教職経験の少ない教師が増えつつある状況では、学校管理職が確かな指導方針と具体的な手立てを示すことが必要である。またいじめへの対応として児童生徒に自己効力感を与える授業等の日常的な教育活動の改善充実への取り組みを、何よりも重視したい。

 校内でよく見られる教師相互の指導についての遠慮や不干渉などといった職場の慣習支配を払拭し、事なかれ主義を排して児童生徒一人ひとりが安心・安全に学校生活を過ごせるよう、学校管理職の学校組織マネジメントと指導力の発揮を強く求める。